山 行 記 録

【平成17年9月11日/吾妻連峰 ぬる湯温泉から一切経山】



一切経山から五色沼を望む


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】 一切経山1,949m、吾妻小富士1,707m
【天候】晴れ
【温泉】ぬる湯温泉 500円
【行程と参考コースタイム】
ぬる湯温泉10:00〜スカイライン11:40〜浄土平11:55〜一切経山12:50-13:30〜浄土平14:00〜吾妻小富士14:30〜ぬる湯温泉15:30
  
【概要】
ぬる湯温泉は古来からある浄土平への登山口として知られている秘湯である。ぬる湯温泉は集落から9kmほど山中に入ったところにあり、終点には旅館「二階堂」が一軒あるだけで、そのしっとりとした佇まいは眺めているだけで何となく心が癒されるようだ。今日の福島県は下界の気温が34度まで上がるという、残暑厳しい一日になりそうであった。車はぬる湯温泉前に駐車させてもらい、準備をそそくさと済ませて早速歩き始める。浄土平への登山口はぬる湯温泉の100mほど手前にあり、少し戻ってから右手の山道に入って行く。立派な標識は特になく、ナラの木に「吾妻小舎へ5km」と書かれた古ぼけた小さな板が一枚あるだけであった。樹林帯に入ると苔生した大きな石がところどころにごろごろとし、道は徐々に急坂となってゆく。初めての道でもあり心配していたが、急登が一段落すると平坦な部分が現れたり、また至るところで草の刈り払いがされ、道幅が広くなっているのでいたって歩きやすい道であった。涸沢を2ヶ所ほど渡ると樹林帯から潅木帯と変わってゆき、見晴らしが利くようになった。吾妻小富士が正面に見え始めてきたが、まだ薄雲がかかって山頂は見えなかった。しかし、徐々に霧が晴れて行き、青空が少しずつ広がり始めていた。吾妻小富士の北側の裾野を回り込むようになると、周囲は高原状の雰囲気が満ちてくるようになった。有料道路の磐梯吾妻スカイラインや一切経山はもう目前であった。登山道の周辺にはオヤマリンドウやオオマメノキ、ヤマハハコ、キンコウカなどが目立つ。この辺りはすでに秋山の風情が漂っていた。

スカイラインの一角に飛び出す頃には雲はほとんどなくなり、真っ青な空が広がった。風は涼しかったが、ジリジリと降り注ぐ陽射しが強く、日焼けが心配になる。スカイラインから浄土平まではまだ先だったが、道路を横切りながらショートカットして直登してゆく。先週末は通行止めされていたスカイラインもすでに解除されたのか、車の往来が絶えなく、次々と浄土平へ登ってくるようであった。浄土平は多くの観光客や登山者で溢れていた。浄土平まで無事に登れてホッとしていたが、予定していた時間よりも時間がかかっており、体はかなり疲れていた。しかし、今日のような好天はそうはないだろうと思うと、やはり一切経山までは登りたくなり、久しぶりに五色沼を眺めてくることにした。ビジターセンター前には「遭難対策本部」の看板が掲げられており、パトカーも一台近くに留まっている。先週からの遭難者はまだ見つかっていないようであった。一切経山までは急坂だがひと登りである。もう正午は目前だったが、昼食は一切経山の山頂でとることにして、浄土平では休憩を取らずに登山道を進んだ。

一切経山の山頂到着は12時50分。三角点から少し進むと、五色沼が眼下に飛び込んでくる。好天もあって、青々とした神秘的な色合いを見せる見事な湖面の全容が見渡せた。何人かの登山者も五色沼を見下ろしながら昼食をとっているところであった。先週もこの「吾妻の瞳」を眺めたくてカミさんと不動沢から登り始めたのだが、雷雲に会い途中で引き返している。この風景は今度はカミさんにも是非、見せてやりたいと思った。

山頂を後にして浄土平に引き返していると、まだ続々と登ってくる人達とすれ違った。ザックを背負った人はむしろ少ない方で、半分以上は観光客のようであった。浄土平のレストハウスで水を補給し、今度は吾妻小富士への登りにとりかかる。普段、車で来たときには全く登る気もちになることがない山なのだが、今日は吾妻小富士の山頂からぬる湯温泉へ下るつもりである。ここは、かなり昔に観光客として登った記憶があったが、今日は下の登山口から登ってきただけに、いつもよりも魅力のある山にみえるから不思議なものである。階段を登り詰めるとほどなく噴火口の淵につく。今日はお鉢回りをしながら反対側の最高点をめざすのだが、左回りに進むと左手側は絶壁で、右側は砂礫の急斜面となっていた。恐る恐る火口を覗くと無機質な山肌がむき出しとなっていで、その荒涼とした光景にあらためて驚く。以前にこの光景は見ているはずなのにその時の記憶はほとんどなく、眺める風景が新鮮だった。右下には兎平や吾妻小舎の赤い屋根が見えている。時間があれば小舎の遠藤さんとも会いたかったが、今日はかなり疲れていて、立ち寄って行くのは出来そうもなかった。一番高いピークにようやく到着すると、そこには山頂を示す標識も三角点もなく、大きな岩が陣取っているだけで、少々物足りない気分がした。

吾妻小富士からは浄土平まで戻り、スカイラインを歩いて往路を引き返しても良かったのだが、眼下を見下ろすと、朝方登ってきたぬる湯温泉コースが遠くに確認でき、ここからは予定どおり直接コースへと下りて行くことができそうである。急斜面を下り始めると、足元は細かい溶岩や小石だらけのため、登山靴が砂礫に埋まってしまいそうで歩きにくかった。もっと右手に下れば帰りの所用時間を少しでも短縮できそうだったが、途中から潅木を漕がなければならないようで、樹木を踏み荒らすのはやはり躊躇われ、左へ左へと下ってゆくとどうにか露岩上を歩いて下って行くことができた。山頂からは約15分ほどで往路のコースに戻った。下るほどに風が無くなり、熱中症が心配になるほど暑かったが、樹林帯に入ってしまうと、木陰の涼しさが戻り、それほど体力を奪われることもなく下れたことは幸いだった。

このコースは予想したとおり地味なコースで、往路も復路も一人の登山者に出会うことはなかった。下山後はもちろんぬる湯温泉に入って、今日の汗を流して行くことにした。温泉は名前のとおり、水のようにぬるかったが、陽射しに灼かれ続け、火照った体には、そのぬるさがとても程良い感じで、山の疲れが次第に引いてゆくのを感じた。


 ぬる湯温泉


吾妻小富士(一切経山から)


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