山 行 記 録

【平成17年9月3日(土)/吾妻連峰 不動沢〜慶応山荘】



慶応吾妻山荘前の湿地帯


【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】家形山 1,877m(※慶応山荘まで)
【天候】曇り時々晴れ
【温泉】米沢市 平安の湯 300円
【行程と参考コースタイム】
不動沢駐車場11:15〜賽ノ河原11:55〜慶応山荘分岐(昼食)12:55-13:15〜慶応山荘13:20〜賽ノ碩〜不動沢駐車場14:45
  
【概要】
今にも雨が降り出しそうな薄雲が空全体に広がっていた。ときどきゴロゴロと不気味な雷鳴が遠くの方から聞こえている。今日はスカイラインから浄土平に車で上がり、一切経山の往復という単純なハイキングの予定だったが、スカイラインが土砂崩れのために途中の不動沢橋で通行止めとなっていた。しょうがないので不動沢の登山口から
家形山へのコースに変更することにして登山道に入った。不動沢の駐車場には意外と6、7台もの車が駐車してあり、奥にある「つばくろ谷」の駐車場には自衛隊の特殊車両が場違いな感じで2台留まっているのが見えた。

この周辺は吾妻スキー場のリフトを利用して、毎年山スキーで利用しているコースだが夏道は初めてである。地図を確認すると、不動沢登山口からは30分ほど歩けば、冬道と合流するようであった。通行不能のためか、幸いに無料でスカイラインを通れたし、予想外のコースを歩けるということで、私にとってはむしろ喜んでも良さそうなコース変更になった形であった。しかし、雷雲が近づいてもおり、午後からは雨の予報がでている。さらに出発時間はすでに11時を過ぎていたから、今日は行けるところまでしか行けないかも知れないな、と半分考えながら歩き出した。

途中で早くも下ってくる登山者と話をしていると、その人は最近起きた遭難者の捜索のため、朝6時に
不動沢橋を出発し、兵子まで往復してきたとのことだった。もう少し話を聞いてみると、遭難者は立岩から吾妻連峰に4日前入山した78歳の男性だという。立岩コースは私がちょうど一週間前に弥兵衛平小屋まで登っているが、さらにその人は東大巓、兵子、家形山と稜線を縦走し、その日の内に高湯温泉まで下山するという、強行軍の予定だったらしかった。しかし、予定した下山日時になっても戻らなかったとかで、家族から捜索願が出され、一昨日からヘリを飛ばしたり、四方八方から捜索隊が入山して探しているのだがまだ見つかっていないようであった。駐車場に駐車中だった自衛隊の車は、この遭難活動のためだったようである。さらに登って行くと、途中で捜索隊と思われる警察官や登山者の一団とすれ違った。まだ遭難者が見つかった訳ではなく、雷注意報が出ているので早めに稜線から下ってきたものらしかった。

たしかに雷は心配だったが、見上げると取りあえず雷雲は東に移動していったようで、少し青空もときどきのぞいたりした。しばらく雨が降る様子もないので、私達はひとまず安心し、少なくとも大根森まででもゆければいいなあ、などと歩きながら考えていた。しかし、天候が持ち直したわけではなく、しばらくするとまた薄雲が広がり、雷鳴が遠くから聞こえてきた。そんなことから、やはり樹林のない稜線は危ないと考え直し、慶応山荘の分岐まで来たところで私達も引き返すことにした。ここは樹林帯なので雷は容易には落ちないだろうということで、登山道にザックを下ろし、昼食を取ってから下山することにした。休んでいると一切経山の方からはまた何人かの警官や捜索隊が目の前を下っていった。

雷雲はたしかに心配だったが、ときどき薄雲が消えて青空が広がり、夏の陽射しが戻ったりした。安心はできなかったものの、今日は間違いなく雨を予想していただけに、いささか儲けたような気分になって、昼食後は夏の慶応山荘に寄り道をしてから下山することにした。草原に下りて行くと、途中で慶応山荘の管理人と出会った。挨拶をかわすと、管理人も捜索活動に協力を要請されているらしく、まだ遭難者が見つからない状況に心配している様子であった。その後、管理人から植物や樹木の名前を教わったりして小屋に着く。湿地性の草原にはアキノキリンソウやオヤマリンドウ、ヤマハハコなどが咲いていた。小屋を遮っている樹林はたしかオオシラビソだと思ったら、それは私の記憶違いで、それらはほとんどヒノキ科のクロベの大木であった。赤く見慣れない木肌にカミさんが不思議そうな顔をして眺めていた。小屋前では湧き水が豊富に噴き出していて、飲んでみると冷たくて美味しい清水だった。今日は目的地までは行けなかったものの、思わぬ青空のもとで、湿地帯に伸びる木道とその景観を眺めることができて、二人ともたいへん満足していた。思えば、スカイラインが通行止めとなっていたおかげで、かえって充実した夏山を歩くことができたようであった。


慶応吾妻山荘


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