山 行 記 録

【平成17年6月13日/飯豊連峰 石転ビ沢〜梅花皮小屋



梅花皮小屋と北股岳


【メンバー】単独
【山行形態】春山装備(アイゼン、ピッケル)、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】北股岳2,025m(梅花皮小屋まで)
【天候】曇り時々晴れ
【行程と参考コースタイム】
飯豊山荘7:50〜梶川ノ出合9:50〜石転ビノ出合10:20〜北股沢出合〜11:40〜梅花皮小屋12:45-13:10〜飯豊山荘16:30
  
【概要】
久しぶりに石転ビ沢に出かけてみることにした。今年の大雪の影響もあって飯豊山荘への通行解除が一昨日あったばかりである。駐車場には県外ナンバーばかりで4、5台ほどしか見あたらない。今日は体力も気力もあまりなかったので、石転ビの出合までゆければ、という軽い気持ちで歩き始める。しかし、砂防ダムまではブナの新緑に包まれて、まるで森林浴のシャワーをを浴びているような心地よさを感じた。温身平の分岐から見上げると稜線は厚い雲に覆われていて、青空も陽射しもなかった。予報に反して好天はあまり望めそうもなかった。登山道には少し残雪はあったものの、ほとんど夏道の歩きが続いた。
キクザキイチリンソウやニリンソウ、カタクリ、タムシバ、ムシカリなどが咲き、彦右衛門の平付近ではサンカヨウやタニウツギが盛りだった。小さな上り下りを繰り返し、地竹原付近からようやく雪渓に上がった。まもなく私と同じように日帰りだという登山者が早くも二人ほど下ってゆく。梶川の出合付近ではミニスキーを履いたスキーヤーが一人颯爽と滑走していった。梶川の雪渓は大きく割れていて、その間からは奔流が飛沫を舞い上げていた。

今回はいつもよりもだいぶ時間がかかって石転ビの出合に到着した。出合の大岩は頭だけが少し出ていた。稜線までの標高差はここから約1000m。モチベーションがあまり上がらず、今日は気が遠くなるほどの高度差を感じる。ここから引き返そうかとしばらく様子を伺っていたが、まだ幾分体力が残っているようなので、ここでアイゼンを装着して行けるところまで登ってみることにした。これで青空でも広がれば気持ちも晴れるのだろうが、ガスは北股沢の出合付近まで降りてきていて夕暮れのような薄暗さを感じるほどであった。しかし、いくらゆったりとしたペースでも足を動かしていれば少しずつでも高度が上がって行くのは確かだった。本石転ビ沢を過ぎると少々無理してでも小屋までは、という気持ちも沸いてくるようであった。北股沢の出合からは雪渓もかなり急勾配となる。例年ならばこの時期はステップなどがあって、いくらか登りやすいのだが、今年は踏跡が全く見られず、雪は堅く締まっていてアイゼン歩行が難しい。私は12本爪だからまだいいようなものの、軽アイゼンではかなり不安を感じる状況だろうと思われた。ピッケルをいつでも抜ける状況にしていたが、最後の直下ではストックだけでは不安になり、結局ピッケルを背中から取り出した。ガスの中から梅花皮小屋がうっすらと見えたときには正直ホッとした。飯豊山荘から登り初めて5時間が経っていた。

梅花皮小屋の周辺ではハクサンイチゲ、ミヤマキンバイなどがすでに盛りを迎えていた。不思議なもので、登りきったところでガスが一瞬にして晴れ渡り、北股岳や梅花皮岳、そして大日岳までが見渡せるほどになった。ほとんど展望はあきらめていただけに、きつい登りに耐えてきて本当によかったとしみじみと思える瞬間であった。苦労して登ってきた者へのご褒美だろうと山の神に感謝した。小屋では泊まりの予定だという人が一人いた。新潟の人だったが、これから烏帽子岳まで写真を撮りに出かけるようであった。私は登山靴を脱いで少しだけ体を休めることにした。体調さえよければ梶川尾根を下る楽しみもあったのだが、すでに午後1時になろうとしている。とても下れる元気が無くて、今日はこのまま石転ビ沢を下ることにした。しかし、下りとはいえ、今回の石転ビ沢はとても危険な状態といえるものだった。気温がほとんど上がらないのも原因かも知れなかったが、ステップが全くない上に、スプーンカットもないので、足の置き場が難しいのだ。私は滑落したときに備えて、ピッケルでいつでも制動できる状態で一歩一歩慎重に下った。下っていると小屋泊りだという単独の人が最後の急斜面を登って行くところであった。気軽な石転ビ沢の往復のつもりだったが、
飯豊山荘への最短コースとはいえ、精神的にはかなり疲れた一日であった。


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