山 行 記 録

【平成17年5月21日(土)/祓川〜鳥海山〜大清水山荘〜鳥海山〜祓川



大清水避難小屋から鳥海山を仰ぐ


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、春山装備、日帰り
【山域】鳥海山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)
【天候】晴れ(快晴)
【温泉】秋田県由利郡鳥海町「ホテルフォレスタ鳥海」500円
【行程と参考コースタイム】
   長井2:00=(R287・R347・R13・R108)=秋田県矢島町祓川4:50
   祓川駐車場5:00〜七ツ釜避難小屋6:00〜鳥海山(七高山)7:30-7:50〜唐獅子避難小屋8:05〜
   大清水山荘8:50-9:10〜唐獅子避難小屋12:20-12:35〜2000m地点〜祓川駐車場14:20
  
【概要】
数多い鳥海山の山スキーコースのなかでも、広大な東斜面である百宅コースは遅くまで残雪が残るため、6月に入っても山スキーを楽しむことができる貴重なコースでもある。その反面、大清水山荘への林道除雪が遅くて、例年だと5月下旬が通例となっており、毎年、その貴重な時期を狙ってテレマークスキーを楽しんでいた。しかし、今年の百宅口は例年にない大雪ということもあって、当分の間、除雪の見込みが無いという情報を聞き、しょうがないので今日は祓川を起点に七高山を登り、七高山の山頂からは百宅コースを逆にたどることにした。6月に予定されている、百宅口の山開きまで待っていたら雪がほとんど無くなってしまいそうで、それまで待っている訳にはゆかなかった。二つのコースを一日に実行するとなると、時間がどれぐらいかかるかわからなかったが、早立ちさえすればなんとかなりそうと思い、自宅を午前2時に出発し、秋田県矢島町に向かった。

朝から青空が広がり雨の心配はなさそうだったが、風が強い日であった。祓川駐車場には車が12、3台と意外と少ない。一角にはテントも設営中であった。祓川は今月の3日以来だったが、雪解けは予想していたほど進んではなく、駐車場からはすぐに雪上の歩きとなった。まだ時間は5時。山の朝は爽やかで、鳥海山や祓川ヒュッテに朝日があたり、モルゲンロートのような輝きを見せている。しかし、気温はまだ低く雪面はアイスバーンのように堅く凍っている状態だった。

ところどころに最近の降雪と思われる真っ白い新雪が残っており、七ツ釜避難小屋を通過するとほとんど新雪の斜面となる。昨日のものと思われるシュプールが深々と雪面に刻まれているが、凍っているためにその上を横切っても少しも崩れることがない。舎利坂は大粒の氷の斜面となっていて、それが登るたびにザラザラと滑った。最後の100mは坪足に切り替え、スキーを担いだ。踏跡をたどってゆくと七高山の山頂はまもなくだった。山頂到着は7時30分。新雪は30〜40cmもあるだろうか。三角点のある標柱間際まで雪があり、積雪はGW時よりも多く感じるほどだ。振り返ると舎利坂の急斜面に取り付いている人がひとりいたものの、新山や外輪山を見渡してもまだ人の姿は見あたらない。雲ひとつない快晴の山頂からは月山や村山葉山がうっすらと空に浮かび、外輪山の向こう側には酒田の市街地や日本海までが一望であった。しかし、風が冷たいので写真だけを撮ってすぐに岩陰で休むことにした。これから標高差1400mの百宅コースを滑走できると思うと期待に胸が膨らむようであった。

いつもならばこの七高山で大休止となるところだが、今日はまだまだ先が長い。20分ほどで休憩を切り上げて滑降を開始する。気温はほとんど上がらないので堅く締まった雪面はスキーが飛ぶように走った。尾根を乗り越え、右手にコースを取ると百宅コースが一面に広がっていた。見渡せばブッシュや立木がほとんどなく、まるで厳冬期のような雪の多さである。祓川とは全然違う光景に、いまさらながら驚くばかりで、それはまるで広大なゲレンデであった。300mほど下ると少しだけ雪面が柔らかくなってターンも楽になる。まもなく眼下に唐獅子小屋の赤い屋根が小さく見えた。唐獅子を型どったような岩がまるで熊のようにも見える。視界がはっきりしているので迷う心配はないようであった。唐獅子小屋には誰もいなかった。小屋の周囲は雪が消えていたが、コースはつながっており、下るには全然支障がなかった。

小屋を通過するとまもなく眼下には大清水山荘と思われるような建物が遥か下に見えるようになった。さすがに鳥海山の東斜面は雪が豊富で、沢筋も尾根も滑り放題という感じ。大清水めがけて真っ直ぐに下って行く。いつもだと右手の沢沿いにルートをとっていたが今回は尾根を挟んで一本北よりのコースをとってみる。途中から尾根に上がると、夏道が一部現れていた。この辺りまで下ると大清水山荘がはっきりと見えてくるところ。ブナ林が少し混んでくると自由なターンとは行かなくなり、登り返しの地点を伺っていたが、標高はすでに1000mを切っていて、もう200mも下れば山荘だと思うと、結局山荘まで下ることにする。ブナ林の下は花芽が一面に広がり、スキーは少しずつ滑らなくなっていた。

大清水山荘には山頂からちょうど1時間で降り立った。予定では2時間近くを見ていたがスキーが良く走り、結局一気に下ってしまった。見渡しても人の姿はなく、園地全体が森閑としている。山荘周辺にはまだまだ大量の残雪があり、登山者はまだ誰も踏み入れた様子はなかった。避難小屋の入口にザックを下ろしてしばらく休むことにする。ブナの新緑と残雪、そして見上げる鳥海山が素晴らしい。園地の一部では雪が解けはじめていて、そこにはミズバショウが咲き始めている。ウグイスや烏の鳴き声と、山荘前の水場から流れる音が聞こえるだけの静かな大清水園地であった。

大清水山荘から七高山までは1400mの登り返しとなる。まだ9時を過ぎたばかりで予定よりは1時間以上も早かったが、少し疲れも感じていただけに早めに登り始めることにした。下りはほとんど沢寄りにコースをとったが登りはやはりいつもの尾根を登って行く。豊富な残雪のおかげでどこでも登って行けるのがうれしい。ブナの新緑を楽しみながら200m、300mと高度が上がって行く。しかし、途中から右膝の様子が少しおかしいのに気付く。スキーを持ち上げる度に膝が少し痛んだ。これは予想外のアクシデントであった。山頂まではまだ1000m以上も登らなければならず、この時点での膝の痛みには、さすがに気が遠くなるようであった。それからは、途中で休憩を多めに取りながら、だましだましシール登高を続けた。しかしどうにも耐えられなくなり、シール登高から坪足に切り替えることにして、スキーはロープで引っ張ることにした。すると、いくらか膝への負担が減るのか、痛みは徐々に和らいでいった。こうしてみると、いわゆる膝が笑うという状態になっていたのかも知れなかった。

大清水山荘からは約3時間で唐獅子避難小屋に到着した。膝の痛みは続いており、どうにかたどり着けたという感じだ。ここまでくればあとは山頂までひと登りなので、ようやく一安心といったところ。大清水ははるかに遠く離れていた。小屋前には二組の山スキーがあり、中に入ると秋田からだという二人組が休憩中であった。祓川から登ってここで一休みしてから戻るということで、缶ビールからウイスキーの熱燗と、しばしの宴会を楽しんでいるところであった。私が大清水から登り返してきたことを話すと二人は驚いていた。喉がカラカラに乾いており、残っていたジュースやポカリを飲み干すと、少しずつ疲れがとれて行くような気がした。

小屋をでると山頂までは広大な一枚バーンが広がっている。朝方滑降してきた自分のトレースもまだところどころに残っていた。小屋の標高は約1650m。山頂までは600m登るだけであったが膝の痛みを考えて、途中から祓川コースへトラバースする事にした。ゆっくり歩く分にはそれほど支障もないので、この付近も雄大な景観を楽しみながらの山登りといった雰囲気であった。小屋で一緒だった二人組も後ろをついてきていたが、二人は途中で早めにショートカットしていった。私は2000mまで上がったところでシールを剥がすことにした。山頂まではもうひと登りだったが、早朝ピークを踏んでいるのでこだわりはない。七高山の山頂では何人か休んでいるようであった。祓川へは間を遮る形で尾根があって、コースそのものは見えなかったが、猿倉の一部は右下の方に見えている。すでに雪は解け出して、新雪部分は靴が潜ってしまうほど柔らかくなっていたが、スキーは意外と良く走った。大トラバースが終わるとようやく祓川コースに合流する。GWあたりならばショートカットで戻ることも可能だったが、さすがにブッシュが多くなっているので、確実につながっている斜面をつないだ。この辺りまで来ると山頂から下ってくる人も目立ってくる。スノーボーダーやミニスキーの人も多く、いつもの春山の雰囲気が漂っていた。

滑降は右膝を庇いながらなのでスキーを楽しむ心境とはほど遠かった。テレマークターンではやはり力を入れると痛むので、アルペンターンでごまかしながら下った。祓川ヒュッテ前では若い人達がパイプを使ったりしながら、スノーボードを楽しんでいた。鳥海山での午後の一時をみんながのんびりと楽しんでいるようであった。祓川の駐車場には2時過ぎに戻り、約9時間の山行が終了した。私は予想もしなかった膝のアクシデントを抱えながらも、なんとか予定通り百宅コースを往復できたという充実感に満たされていた。


今回のコース


早朝の鳥海山(午前5時)


外輪山と月山(七高山から)


外輪山の向こう側は日本海と酒田市街地


唐獅子避難小屋


残雪の大清水キャンプ場


大清水園地から鳥海山を望む


百宅口からブナの新緑と残雪を歩く(標高900m付近)


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