(田茂萢岳〜銅像コース)
八甲田温泉コースを終えて、八甲田ロープウェイに戻ると、時間はまだ1時前であった。これではいかにも時間がもったいないので、もう一本、ツアーコースを滑ろうということになり、銅像コースを下ることになった。このコースは八甲田温泉ルートよりもさらに登りが少なく、山スキーというよりも、限りなくゲレンデスキーに近いというのが山屋からすればちょっと物足りないところ。田茂萢岳からはすぐに前岳をめざして田茂萢沢に滑降する。ここの広々とした斜面も快適で、つくづく八甲田山は山スキーのためにあるような山だなあと思わずにはいられない。下りきった鞍部からはいくらか登りとなるものの、たいした登りではない。前岳に登って山頂から滑降するのが正規のルートだろうが、今回は割愛することにして前岳の裾野を卷くように下って行く。私達と同様に同じコース取りをする人も多いのか、午前中の八甲田温泉ルートでも一緒だった人が近くに何人か見られた。沢を横切ったりしながら裾野を滑走して行くと、斜度も緩やかになり、付近は美しいダケカンバ帯となった。この付近は眺めているだけで心が洗われるような雰囲気に満ち溢れているところだ。カミさんも周囲の景観を楽しみながら下っているようであった。ロープウェイ終点からはちょうど1時間で銅像前の道路に飛びだした。そして、飛びだしたところにちょうどよく循環バスがやってきて、銅像前のバス停からは時間のロスもなく再び八甲田ロープウェイに戻ることができた。八甲田温泉で汗を流したあと、銅像前の食堂で夕食をとっていると、宮城のチダさんという人に声を掛けられた。初めはなかなか思い出せなかったが、12月の湯殿山の時、志津温泉の駐車場で声をかけられた人であった。
4月30日
(田茂萢岳〜箒場岱コース)
箒場岱コースは今回のツアーでメインともいえるコース。赤倉岳へは約2時間弱の登りで、山頂からは6km以上の長い滑走が楽しめるのだ。今日は空全体に薄雲が広がり、昨日よりも陽射しが少なかった。冷たい風が吹いており、体感温度はかなり低く感じる朝方だった。土曜日ということもあって、八甲田ロープウェイは大混雑であった。駐車場には早くも長い行列が続いていて、乗り込むまではしばらく時間がかかった。しかし超満員のロープウェイから吐き出された登山者はいったいどこへいってしまうのか、山頂駅からはみんなそれぞれに散ってしまい、赤倉岳に向かう人はあまり見あたらなくなってしまった。田茂萢岳とのコルからはシールを貼って赤倉岳に向かった。赤倉岳山頂は吹き飛ばされそうなほどの強風が吹いていて、予定していた山頂での大休止は取りやめて、少し下った地点で昼食をとらなければならなかった。山頂からは雄大な景色をながめながら、ゆったりとした大きなターン孤を描きながら下って行く。カミさんはすっかりこの八甲田山に慣れてしまったのか、樹林帯の滑走も意外とスムーズで、行く先々で待とうとすると、すぐに追いつかれてしまった。箒場岱のバス停ではバス待ちの大勢のスキーヤーで溢れていた。ここはバスの始発になっているところなのだが、箒場岱から満員となってしまい、その先の八甲田温泉や銅像前バス停からの人達はかなり苦労してバスに乗り込まなければならなかった。
車の回収後、八甲田温泉に立ち寄ると、入口で西川山岳会の佐藤仁三さんに声をかけられた。昨日のチダさんといい、今日の仁三さんといい、本州北端の地に来てまで知り合いと出会うとは、偶然とはいえ驚いた。それだけ山スキーの世界は狭いということだろうか。入浴後は酸ヶ湯温泉に戻り、生ビールとそばを注文し、簡単に夕食を済ませてから駐車場に戻った。テーブルや椅子などのキャンプ用具も持っては来ていたものの、陽が陰ってしまうと気温は一気に下がってしまい、早々にテントに入らなければならなかった。
5月1日
最終日は移動日。途中、高速道を少し利用したものの、ほとんど下道を走り、行く先々で道の駅巡りをしながら山形に向かった。