山 行 記 録

【平成17年4月9日(土)〜10日(日)/出羽三山 月山から肘折温泉】



念仏ヶ原からの月山(10日)
(小屋は雪の下)


【メンバー】(9日)8名(西川山岳会5名、三十路グループ3名)※悪天、悪条件のため牛首撤退
      (10日)3名(柴田、山中、蒲生)※月山〜肘折日帰り
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、テント、雪洞泊
【山域】出羽三山
【山名と標高】月山 1980m
【天候】(9日)強風、濃霧(10日)晴れ
【温泉】肘折温泉 「肘折いでゆ館」300円
【行程と参考コースタイム】
(9日)姥沢7:00〜リフト上駅9:00〜牛首直下9:45-11:30〜〜リフト上駅12:00-14:00〜姥ケ岳南西斜面〜石跳沢(930m)14:30
    〜湯殿山山麓テン場15:10(幕営、雪洞泊)
(10日)テン場〜ネイチャーセンター〜志津=(車)=ネイチャーセンター=(車)=姥沢
    姥沢9:00〜リフト上駅9:30〜月山頂上11:10-20〜千本桜(1490m)11:30〜立谷沢橋(930m)11:50-12:20
    〜念仏ヶ原避難小屋13:10〜小岳14:00-30〜978m15:00〜ネコマタ沢〜778m15:20〜大森山16:00-20〜林道16:35
    〜肘折中学校前17:30=(車)=肘折温泉
    肘折温泉18:30=(車)=西川町20:00=(車)=自宅着21:30
  
【概要】
4月9日
この週末は1年ぶりの月山〜肘折ツアーである。リフトは明日からが営業開始で、今日は姥沢の駐車場から歩き出しとなる。天候は午後から回復する予報がでているものの、朝から真冬に戻ったような気温の低さであった。さらには姥沢の周辺が一面、濃霧に包まれてしまい、視界がほとんどなくなってしまうと、みんなの表情も心なしか冴えなかった。今回は山岳会による山行なので、共同装備の食糧やアルコール、大形テントなどをそれぞれに分担するはずだったが、準備が間に合わなかったらしく、何もないということを聞いて参加者一同はなお一層落ち込むことになった。なんとなく出だしからいろいろと躓いた形となっだが、各自の行動食や小テントなどもあり、予定どおりツアーに向けて出発となった。

シールを貼って歩き出してみると経験したこともないほどのアイスバーンに驚いた。ストックも刺さらない状態を見て、柴田氏は最初から早くもスキーアイゼンを装着した。気温が高くなればという期待をするものの、みんなの顔には少し不安の色が漂い始めていた。リフト上駅に向かう途上では、それほどでもない斜度にもかかわらず、まもなくスリップするものが相次いだ。50mもない視界不良の中、リフト上駅に到着すると、小屋の陰で風を避けながら、晴れるまで少し時間調整をした。金姥に向かうトラバース区間ではさらに雪が堅くなり、エッジがほとんど効かないため、私はまもなくバランスを崩して滑落してしまった。一瞬にしてみんなの姿が見えなくなり、スキーで停めようとするものの、シールが邪魔をして全然止まらない。斜度が弛んだところでようやく停止したが、100mほど滑落したようであった。流されていながらも少し余裕があり、とくに怪我はしなかったが、そこから登り返すこともできず、そのまま金姥に向かって歩いた。歩き始めたところで状況確認にきてくれた柴田氏と合流。他のメンバーとは100mも離れていなかったが、視界が全くない中ではお互いの位置がわからず、再び出会うまでは無線や呼子のやりとりを何回か繰り返した。

リフト上駅からは1時間弱で牛首直下に到達する。周りは何もみえずGPSだけが頼りという状況であった。普段はほとんど風が通らない場所なのだが、今日は濃霧と強風が吹き荒れていて、しばらくツェルトを張って天候の回復を待つことになった。しかし、2時間近く経過しても状況は変わらず、このままでは鍛冶小屋直下の急坂は無理だろうということで昼前に撤退を決定する。陽射しが出ればアイスバーンも解消するはずなのだが、気温は真冬並みの氷点下のままであった。予報とは裏腹に天候の回復は大分遅れているようであった。撤退といってもストックも刺さらない状態ではリフト上駅への登り返しも難しいだろうということで、停滞場所からはシールをはずし、元のコース沿いにリフト上駅に戻ることにした。姥ケ岳の中腹を卷いているときに、一瞬だが視界が少し戻り、現在の位置をようやく確認することができた。リフト上駅の休憩所ではスノーボーダーが数名休んでいたが、私達と入れ違いに姥沢に下っていった。これからの行程は未定だったが、小屋の中に入ると妙に安心してしまい、念仏小屋で出てくるはずだったアルコールやつまみなどが、次々とテーブルに並ぶと早くも本格的な宴会へと移行していった。そんな中、下界と無線で連絡を取っていた柴田氏からは「山岳会の別グループが湯殿山山麓で雪中宴会のため登ってきているらしい」との話があり、合流するかどうか相談を持ちかけられる。一泊の予定できている我々としては、このまま下山する気持ちにもなれずにいたため、全員一致で合流賛成となった。強引な押し掛けみたいなものだが、私達にとっては願ってもない朗報であった。

2時間の大休止を終え、湯殿山の山麓へと向かうと、ようやく雲の中から抜けだした。まず姥沢周辺が見渡せるようになり、姥ケ岳の南西斜面に出る頃には、鮮やかな青空が広がった。雪面が柔らかくなったこともあり、そこからはブナの疎林が広がる斜面を快適に滑降しながら石跳川の源頭部をめざした。湯殿山の山麓といってもあまりに広大で、石跳川を横断し対岸に移っても、宴会班と合流するまでしばらく時間がかかった。宴会班のテン場ではすでに大きな雪洞を掘り終え、テントの傍らには雪で作ったりっぱなテーブルも出来上がっていた。

私達もテン場の一角にテントを設営し、合わせて2人分の雪洞を掘る。この雪洞づくりに4人掛かりで1時間を要したが、気持ちの良い汗をかくことで、今日の中途半端な気分が少し解消されたようであった。そのうち山岳会の山田氏が大鍋や食材を大きなザックに詰め込み、スキーを履いて上がってきてくれた。ボッカ作業はなんと今日だけで3回目だというから山田氏には頭が下がる。暗くなってからは、同じ会のメンバーである木村夫妻が、食材のたっぷりはいったザックを担ぎ、ヘッデンを点けながら上がってきた。新しいメンバーが加われば再び乾杯となり、満天の星空のもとで宴会は2次会、3次会と夜遅くまで続いた。みんな雪山が好きな人達ばかりであった。

4月10日
翌日は早朝から晴れ渡った。日帰りで肘折に参加するのは柴田氏と私だけで、姥ケ岳から湯殿山をめぐるツアー組とは別れることになった。熱々のうどんやいなり寿司、納豆餅などの豪華な朝食を終えるとすぐにテントを撤収し、ひとまずネイチャーセンター経由で志津温泉まで下る。駐車地点まで戻って、日帰り装備にパッキングをやり直し、車の段取りなどが済むと、とりあえず私達は姥沢駐車場に向かった。

今日は月山スキー場のオープン初日。例年では昼頃からしかリフトが動かなかったが、今年はすでに8時頃からリフトの運行を始めているようであった。我々もその運行開始時間に合わせて出発したかったのだが、テント撤収や移動時間などに手間取ったため、リフトに乗り込んだときはすでに9時をまわっていた。リフトに乗っていると何人かのスノーボーダーやスキーヤーが早くも姥ケ岳の大スロープを滑降しているのが見えた。偶然ではあったが、姥沢駐車場に山中氏の車があり、柴田氏が無線で連絡をとったところ、山中氏とはリフト上駅で合流する。山中氏は月山周辺を滑りにきたようだったが、山頂に向かっている途中で気が変わり、結局、我々と一緒に肘折に抜けることとなった。

春の日差しが朝から降り注ぎ、今日のザラメ雪では登るのにはなんの問題もなかった。昨日のアイスバーンがまるでウソのようだった。金姥、紫灯森、牛首へと登って行くと、鍛冶小屋直下の急斜面にはすでに多くの人が張り付いていた。振り返るとまだまだ白い品倉尾根が湯殿山スキー場へ続いている。月山の山頂付近には少し薄雲が広がり、雲行きがなんとなく怪しかったが、それほど苦労することもなく山頂へ到着した。強風が吹く山頂では大勢の登山者が神社の陰に集まってごったがえしている。体が震えるほどの寒気の中、とても一休みする気分にもなれず、そそくさとシールをはがして、山頂から一気に滑降を開始する。下り始めるとほどなく風が穏やかになり、目の前には広大な大雪城が広がった。私達3人の他には人の姿はなく、見渡してもトレースは見あたらなかった。眼下の念仏ヶ原を眺めながら大雪城を下って行くのは雄大のひとことで、3人で思い思いに千本桜まで下ってゆく。千本桜からは急斜面だが、すでに雪は腐れ始めており、難儀することもなく下って行ける。まもなく尾根づたいに滑って行き、月山の山頂からは30分で立谷沢川へと降り立った。気温がかなり上昇しており、乾いた喉に冷えたビールの一口がたまらなくおいしい。行程はまだまだ長いのだが、立谷沢川まで下れば、いくら天候が悪化しても不安なことはない。暑い陽射しをたっぷりと浴びながらの、のんびりとした昼食時間であった。

立谷沢川からシールを貼りひと登りすると広大な念仏ヶ原に出る。振り返ると今滑降してきたばかりの月山の東斜面が、午後の日差しを受けて鈍く光っていた。念仏小屋まで付近まできてみると、大雪原が広がっているだけで小屋の姿はどこにもなかった。小屋はまだ雪の下に埋まったままであった。次の休憩ポイントの小岳までは休みなしに歩いた。ピークからはまもなく大きな村山葉山が正面となる。小岳到着は午後2時ちょうど。ここでものんびりと30分の休憩をとった。ここでシールはお払い箱となり、小岳からはいよいよ滑降第2ステージの始まりだ。爽やかな春風を楽しみながら、赤砂沢沿いの尾根を下る。春のザラメ雪は楽しいばかりであった。

978m峰への登り返しからはネコマタ沢の急斜面が待っている。ここからは一足早く沢底まで先に下ってゆき、二人の滑降写真を撮影したりして楽しんだ。天候に恵まれると何をしても楽しいばかりで3人からは笑顔が耐えなかった。778m峰を過ぎ、大森山直下からは最後の登り返しとなる。3人ともスキーを担いだが、私は雪の融けだした場所を選びながら登り、二人は残雪にキックステップを刻みながら登った。大森山の山頂では冷えた缶ビールを携えて安達氏が迎えてくれた。時間はちょうど午後4時。予定していた時間にぴったり到着できたことで、なんとなくホッとした気分であった。いくら快適に下ってきたとはいえ、体はかなり疲れていたのだろう。1本の缶ビールに私はメロメロに酔ってしまい、容易に立ち上がることができないほどであった。大森山からは湿雪に難儀しながら急斜面を降りてゆき、林道からは推進滑降で肘折温泉をめざした。いつもならば地熱発電所への入口付近まで除雪がなされているはずだったが、いつのまにか建物がなくなっており、除雪もされていなかった。さらに雪原を進み、すでに薄暗くなった林間を一気に滑って行くと、肘折小学校前に飛び出して、今年の肘折ツアーが終了した。


姥ケ岳の大トラバース(9日)


念仏ヶ原を歩く(10日)


小岳山頂で大休止(10日)


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