山 行 記 録

【平成17年2月27日(日)/吾妻連峰 峠駅〜栂森〜大沢駅



日没直前の牧場上部付近
ようやく晴れ間がのぞいた頃
(17時00分)


【メンバー】3名(柴田、山中、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】栂森1,628m
【天候】風雪
【温泉】米沢市「鷹山の湯」500円
【行程と参考コースタイム】
米沢市「鷹山の湯」6:30=(車)=大沢駅7:29発=(JR)=峠駅7:34
峠駅8:00(630)〜886m9:05〜1133m9:50〜1203m10:30〜小栂(1420)11:45〜栂森13:00-14:00〜放牧場下17:05-20〜大沢駅18:00〜除雪終了地点18:10(460)

【概要】
今日は1年ぶりの栂森ツアー。早朝、米沢市「鷹山の湯」に集合したが、雪が降り止まず、山は大荒れが予想された。実行するかどうか迷う所だったが、最悪行けるところまでということで大沢駅に向かった。大沢の集落は最近にはないほどの大雪のため、村全体が雪に埋没していた。駅への細道も除雪がされていないので集落の終点に車を止めた。峠駅に降りても風雪模様は変わらなかった。

スノーシェッドの中で準備をしていると、上りの普通電車から大勢の山スキーヤーが下りてくる。幸いにも今日は吾妻山の会主催の「栂森ツアー」と重なったようであった。総勢20人もいるらしく、これでラッセルも大分楽になるだろうと喜んだ。しかし最初から団体のラッセルを当てにするわけにもゆかず、まず我々が先導することにした。私は昨日の船明神の疲れが残っているのか体調はいまひとつ。その分、柴田氏がラッセルの大半をしてくれたのがありがたかった。積雪は多く、スキーを脱ぐと股下まで潜るほどだったが、彼はその深雪でもペースが一向に衰えることがなかった。セカンドでも追いつけないほどだからその体力たるや恐るべしである。まもなく稜線にでると風雪が強まった。

1133mピークからの下りでは雪が一部切れていたが、例年ほどではなく、わずかに地肌がのぞいているだけであった。東側に張り出した雪庇が大きく、踏み抜かないように慎重にコース取りをする。この付近から左手前方に滑川温泉が見えるはずだったが今日は全くわからない。1203m地点までくれば登りの行程を7割ほど登ったことになり、小栂まではもうひと登りだ。一休みにしているとすぐに集団が追いついてきて先に登っていった。結局私達はこの小栂の急坂直下までラッセルを先導した形となり、そこからは集団の後尾についたが、20人の集団が歩いた後のトレースはまるで舗装道路であった。小栂への登りでは風雪がさらに厳しくなり、視界がだんだんとなくなっていた。私はこの登りでかなりこたえてしまい、途中で足が攣った

小栂と栂森のコルで一服をして足の筋肉を休ませる。気温はかなり低く、手袋のアウターはガチガチに凍り始めている。指先の感覚がなくなりそうで、絶えず手を揉んでいなければならなかった。コルからは右の尾根へのトラバースとなる。雪崩の危険箇所でもあり、大量の積雪を考えると、今日の行程の核心部であった。ここは集団と共に慎重に通過したが、この広い斜面で崩れればひとたまりもないだろうと思われた。トラバースを無事通過すれば、栂森まではひと登りだ。峠駅を出発してちょうど5時間。昨年より1時間30分も余計に時間がかかったが、ようやく山頂直下のコルに到着した。私達は団体から少し離れた場所にツェルトを張った。まずは山頂登頂を祝ってさっそくビールで乾杯する。私はコンロで湯を沸かして「赤いキツネ」で昼食だ。休憩中もツェルトが絶えず風雪に煽られ続けた。

大休止を終えてツェルトを撤収すると外はまるで地吹雪の様相を呈していた。天候は良くなるどころかますます悪くなる一方であった。すでに団体は下り始めたらしく、いつのまにか周りには誰もいなくなっていた。しばらく栂森の山頂に向かっている彼らのトレースを追った。しかし吹雪のため深いラッセル跡もすでに消えかかっており、視界不良のせいもあって、結局その踏跡も途中で見失ってしまった。しょうがないので適当な場所から下ることにした。ところが、いざ下り始めてみると、適度な斜度があるにもかかわらず、スキーは少しも滑らない。また、小尾根や沢に張り出している雪庇がみな巨大で、移動しようとすると大量の雪に身動きが取れなくなりそうであった。沢筋の雪の量は尾根の比ではなかった。これはやばいと思って深雪から這いあがろうとするとまたしても足が攣った。

視界がないのでいつもの地形がよくわからず、動けば動くほど迷走してしまいそうな不安感が襲う。こんなときのGPSは心強いパートナーであった。等高線こそないものの、地形図とGPSを照合すると、現在地は予定していた尾根から500m近く離れているのがわかった。高度もまだ1550mぐらいと、山頂からかなり下ったつもりだったが、まだいくらも離れていなかったのだ。そこからは予定していた尾根道をめざして3人で猛ラッセル。時間はすでに15時を過ぎていたが、樹林帯をしばらくトラバース気味に斜上してゆくと、ようやく集団のトレースに合流した。結局ここでの雪との格闘に1時間以上を浪費した。尾根上に伸びているトレースを滑ってゆくとまもなくその集団に追いついた。

そこからは予定時間を大きくオーバーしていたものの、集団のラッセルのおかげでスムーズに予定したルートを下って行く。山の会の人達も予定していた列車時刻はとっくに過ぎていたのだろう。メンバーにはこのコースが初めての人達も多いらしく、「ここからどれくらいで大沢駅に着くだろうか」と何人からも質問を受けることになった。

茂皮平まで下るとようやく雪が小康状態になった。しかし、一方では日没も迫っていて、放牧場では置賜の山々が残照に輝いた。放牧場から大沢駅まではまだ3キロ以上距離が残っており、例年ならば30分もかからずに快適に滑走して行けるのだが、今日のラッセルを考えると、まだ1時間以上はかかりそうである。このままではヘッドランプが必要になりそうであった。他人のラッセルを当てにしているといつ大沢駅に着くかわからないとばかり、放牧場からは再び柴田氏をトップにラッセルの先頭に回った。しかし日が沈んでしまうと暗くなるのは早く、カタツムリ山荘付近からはかすかな雪明かりを頼りに歩き続けた。大沢スキー場への分岐を左折するとまもなく大沢駅だ。真っ暗な雪道をひたすら歩いていると、人気のない大沢駅構内には、スノーシェッドの明かりだけが煌々と輝いていているのが見えた。


小栂への登り(11時25分)



小栂からコルを見下ろす
中央付近の少し黒っぽい部分は小休止中の団体である(11時50分)



茂皮平付近(16時30分)


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