やや混み合った灌木を縫ってゆくと山頂への急斜面の取り付きに出る。さすがに吹きさらしの斜面は風が冷たかったが、左手には雪を抱いた和尚山が聳えており、私は1ヶ月前の山行を思い出していた。まもなく多くの登山者や山スキーの人達が、次々と山頂から下ってきてはゴンドラ乗り場をめざして下っていった。やがて山頂部が見えてきたが、あいにくガスが広がり始めてしまい、楽しみにしていた展望が次第に失われてゆく。それでもまだ多くの登山者で標柱付近は賑わっており、私達もスキーをデポして山頂に向かうことにした。山頂からは磐梯山がかろうじて見えるくらいで飯豊や吾妻、蔵王などはガスに隠れてみえなかった。冬の安達太良山にすれば今日は穏やかな方であったが、風は非常に冷たく、山頂で休憩する気分にはなれなかった。私達はピークの直下にミニ雪洞を掘り、ツェルトをかぶって休憩をとることにした。
昼食を取っている間も登山者が次々と登ってくる。相変わらず人気の山だなあと感心するばかりであったが、休憩が終わればいよいよ滑降を開始する。視界はほとんどなくなっていたが、少し下れば晴れてくるだろうと、小林さんは一気に烏川の源頭部をめざして下っていった。はじめはシュカブラの雪面も少しずつ柔らかくなったが、私はモナカの重い雪に足を取られて何回も転倒した。今日、あんなにいた山スキーの人達は全員ゴンドラ経由で下ったらしく、雪面にはシュプールが一つも見あたらず、烏川コースを下った人は誰もいないようであった。コースはこのまま烏川を下ってゆくわけにはゆかず、高度1350m付近からは右手の五葉松平にでる必要があった。残念ながら軽いヤブ漕ぎは快適とは行かなかったが、良く言えばいかにもツアーらしいコースとも言え、気持ちの良い汗がしばし流れた。トラバース気味に滑ってゆくと平坦な五葉松平に出て、急斜面を下ってゆくとまもなくリフトの最上部に飛びだした。そこからはゲレンデを下って行くと、眼下にレストハウスなどが見えてきて、今日の安達太良山ライトツアーが終わった。