県道月舘・川俣線を進むと障子バス停付近に大きな女神山登山道の案内板がある。そこから町道を少し登ったところが登山口で、傍らには標柱と案内板が立ち、近くには2、3台の駐車スペースがあった。周りは静かな里山という雰囲気が漂い、取り残されたような柿の実が、半分腐れかかったままで枝にまだたくさん残っている。今日は薄曇りながらも雨が降る様子はなく、時々陽射しも降り注ぐまずまずの天候である。女神山を見上げると冬枯れの景色が広がっていた。
棚田や桑畑の緩い傾斜地を登ると、まもなく七ツ森林道という真新しい舗装道路を横切る。ここにも登山口の標識があり、山道は薄暗い杉林の急坂となった。涸れた水場を通過するとすぐに明るい尾根道にでた。そこは堀切と月舘との分岐になっていて、右手には早くも女神山が近くに迫っていた。急坂直下からは直登する近道コースと迂回コースに別れる。近道コースは帰りに通ることにして巻道を回ることにする。といっても距離はいささかもなく拍子抜けするほどだ。回り込んだところは椚平登山口との分岐点で、簡易トイレや丸太のベンチなどもある休憩場所となっていた。
ここから女神山の山頂までは一気の登りとなる。ミズナラが多い樹林帯だったが、今の時期は見通しがきくから眺望を楽しみながら登れる。やがて祠が現れると山頂はまもなくであった。山頂の一角には御神体のような大きな石があり、またガイドブックにある、小手姫をまつったという古い祠もひっそりと残っていた。奥に進むと山頂の広場があり、うっすらと雪化粧した吾妻連峰や安達太良山が正面であった。東側を除けば遮るものがない絶好の展望台のような山頂である。北には霊山や阿武隈山地の山々、そして蔵王連峰などの山並みが連なっていた。周りには一見、望遠鏡のようなちいさなパイプがたくさんあって、その中を覗くと目標の山頂がみえるようになっていた。のんびりとしたい山頂ではあったが、ひととおり山頂からの展望を楽しんだところで次の山に向かうことにした。下り始めると急坂の途中で二人の女性とすれ違った。こんな時期でもやはり登山者はいるものだなあと妙に感心する。案内標識によると山頂付近にカタクリの群生地があるようであったが、今は見るべき花々もなく、降り積もった落ち葉と、裸同然になった樹林が林立しているだけであった。