山 行 記 録

【平成16年9月10日(金)/比羅夫から後方羊蹄山



 後方羊蹄山山頂からの爆裂火口
お鉢巡りはこの外輪山を一周する


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、車中泊(山行は日帰り)
【山域】支笏・洞爺
【山名と標高】後方羊蹄山(しりべしやま) 1893m
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】真狩村温泉保養センター「まっかり温泉」500円
【行程と参考コースタイム】
比羅夫登山口5:00(350m)〜二合目5:47〜三合目6:03〜四合目6:11〜五合目6:32〜六合目6:51〜七合目7:10〜八合目7:34〜九合目7:43〜旧小屋跡分岐7:55〜三角点8:17〜羊蹄山山頂8:20〜(お鉢巡り)〜避難小屋分岐8:45〜小屋跡分岐9:00〜登山口11:00
登山口=真狩村温泉=R276=苫小牧東FT(フェリー:10日19:50発)新潟FT(11日15:30着)

【概要】
後方羊蹄山を「しりべしやま」とはなかなか読めない難読山名であるが、現在は羊蹄山(ようていざん)のほうで呼ばれることが多い山である。羊蹄山は別名、蝦夷富士とも呼ばれており、その端正な山容は富士山と非常によく似ているのでも有名である。さて、この羊蹄山で今回の北海道の山旅も最後の山となった。夕方には苫小牧に戻らなければならず、勢い急ぎ足の山歩きとなりそうであった。なにしろ登山口の標高は350mほどしかなく、山頂までの高度差は1550mもあるのだからのんびり登山とはゆかないようである。

登山口を午前5時ちょうどに登り始めると、行く先々で倒木が目について驚かされる。かなり太い倒木が登山道を遮る形で横たわっており、今回の北海道を直撃した台風18号の爪跡が、まだ至るところで生々しく残されていた。天気予報によれば今日は曇り時々雨の予報がでていたものの、まだ雨の降り出すような兆しはなく、すがすがしい朝であった。まだ周りは薄暗かったが、上空には青空がのぞいており、徐々に雲が茜色に染まり始めてくる。2合目の標識が過ぎると勾配が徐々にきつくなった。合目標識はその後もずっと続き、概ね200m間隔で設置されているようであった。4合目で朝食兼小休止をとって一息をいれる。石と木の根っこが多い道だが、意外と歩きやすいく順調に高度を稼ぐことができた。一方では蒸れるのか次第に汗が流れ始めた。五合目をすぎると周りにはダケカンバだけの疎林が多くなった。左手の樹木の間からは山頂への稜線が時々のぞいたが山頂まではまだ遠いという印象である。七合目で腰を下ろしていると、急に下ってくる人の声がして、まもなく小屋泊まりだったという登山者が数人降りてきた。「お鉢回りをしてきたわ」と挨拶をしてすれ違っていったが、みんな元気な女性達であった。

風は次第に強さを増した。Tシャツ一枚だったがここからは長袖シャツを着る。しかし少し歩き始めると、それでも寒さに耐えきれなくなり、さらにウインドブレーカーも羽織った。この頃より次第に日差しが雲に遮られて、山頂付近にはガスが漂い始めていた。ガレ場のような九合目を過ぎると登山道は一転してなだらかになった。すでにこの辺りは山頂の一部らしく、まわりの紅葉を楽しみながら登り切るとようやく外輪山の一角に着いた。正面には鋸の歯のような外輪山が噴火口のまわりを取り囲んでいたが、標識の立つ山頂まではもう少しがんばる必要があった。風はますます強まっていて吹き飛ばされないように注意した。何しろ右側は切り立った崖のような岩場なのだ。慎重に進むとまもなく三角点があり、山頂まではもうひと登りであった。山頂到着は8時20分。4時間はかかるだろうかと思っていたのだが意外と順調であった。心配していた天候はそれほど崩れることもなく、上空には青空も見えるほどだった。悪天候ならばお鉢めぐりはあきらめる予定だったが、この空模様をみて外輪山を一周することにする。といってもすでに外輪山の半分近くまではきているので、引き返すのも先に進むのもそんなに違いはなさそうであった。お鉢めぐりは悪場もあって結構緊張するところだ。次第にガスが覆いはじめて、風もあるだけに慎重に岩場を越えてゆく。途中で真狩口から登ってきたという単独者に行き交ったが、外輪山にいる登山者は他には見あたらなかった。ようやく悪場を乗り切ると一安心で、あとはなだらかな登山道があるだけである。小屋との分岐からは眼下に九合目避難小屋が見えた。避難小屋の分岐に着くと若い女性が真狩口から一人登ってきたので、途中まで一緒に登った。地元、室蘭の大学生だったが今年登山を始めたばかりだという人で、比羅夫口との分岐に登ったところで彼女とは別れた。天候はますます悪くなる一方で、先ほどまで見えていた爆裂火口はガスのために全く見えなかった。元の道には9時に合流し、八合目を9時10分に通過。ここで少し休憩としたが、考えてみれば七合目で一休みしてから一回も休んではいなかったので喉がカラカラであった。振り返ると山頂はすっかりガスに隠れてしまって見えなくなっていた。あとは単調な登山道を下るだけだったが、これから登ってくる人達も多く、途中では20数人もの団体と行き交った。みんな中高年ばかりだったが、下り坂の天候のことなど取るに足らないことだとばかりに、笑い声を立てながら元気に登っていった。三合目付近で小雨が降ってきて一時、雨具を着た。しかし通り雨のような感じでたいした大降りとはならなかった。

登山口には11時ちょうどに戻った。急いだということもあるが、予定よりはだいぶ早く登り終えたため、温泉で汗を流すにも十分すぎるほどの時間があった。北海道での最後の温泉は、昨夜、車中泊の予定だった、真狩村の温泉施設「まっかり温泉」で汗を流してゆくことにした。温泉の露天風呂からは羊蹄山が正面に見えたが、厚い雲が覆っていて山頂はまったく見えなかった。入浴後は温泉の食堂で、インゲンサラダとピリカララーメンを注文した。後は思い残すことはなく、一路、東苫小牧のフェリー乗り場に向かうだけである。6日間の山登りを終えて様々なシーンが頭をよぎっていたが、フェリーに乗り込んでからゆっくりと振り返ることにした。体はすぐにでも横になりたいほど疲れていて、入浴後のビールも飲みたかったのだが、帰りのフェリーに乗ればいくらでもゆっくりと骨休めできるので、それまでしばらくの我慢であった。


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