山 行 記 録

【平成16年9月9日(木)/トムラウシ温泉〜トムラウシ】



トムラウシ公園からトムラウシ山を仰ぐ


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、トムラウシ温泉「東大雪荘」泊(山行は日帰り)
【山域】大雪山(表大雪)
【山名と標高】トムラウシ(とむらうし) 2141m
【天候】晴れ
【温泉】トムラウシ温泉「東大雪荘」350円
【行程と参考コースタイム】
短縮登山口5:25(965m)〜カムイ天上分岐6:15〜コマドリ沢7:40〜前トム平8:20〜トムラウシ公園8:50〜縦走路分岐9:30〜トムラウシ山頂9:50-10:30〜前トム平11:35〜コマドリ沢12:00〜短縮登山口13:50
登山口14:00=14:30東大雪荘15:00=(新得町・清水・R274・日高)=夕張IC(日高道)千歳IC=(R276・大滝・喜茂別・倶知安)=比羅夫登山口駐車場22:00

【概要】
トムラウシは大雪山国立公園のほぼ中央に位置し、表大雪と十勝連峰の中間という遠隔地にあって、複雑な地形と高山植物が織りなす豊穣な自然美から「大雪の奥座敷」とも呼ばれている山である。

朝4時半に起きる。昨日、八合目近くまで登りながら、台風の直撃にあって引き返した後遺症は一晩寝てほとんど消えていた。玄関では早くも団体が登山靴を履いて出発しようとするところであった。私は5時に宿を出発する。途中の林道では、昨日に続いて再びエゾシカに出会った。やはりすぐに逃げ出してしまったが、今日はヘッドライトを点灯しているのでシカの目がライトのように赤く光っていた。車は早くも3台が駐車中で、全部旭川ナンバーのレンタカーだったが、みんな出発した後のようであった。登山者名簿をみると単独行が一人と団体が二グループで、合計15名ほど登っているようであった。

昨日登ったばかりということもあって、トムラウシはもう何回も登ったことのある山のような感じさえした。上空を冷たい風が吹いていたが、昨日の台風と比較すれば全然問題はなく、その風も徐々に弱くなって行くだろうと思われた。台風一過の澄んだ青空を見上げると、うれしさがこみ上げてくる。当たり前のことだったが、荒れた天候の中でみる風景とは全然違って、今日は山の華やかさが漂っているようであった。やはり昨日は引き返して良かったのだとつくづく思った。快調に登っていると、カムイ天上への途上で先に登っていた6人組に追いつき、新道の途中でさらに朝食中の8人グループに追いついた。私はコマドリ沢で朝食の予定だったのだが、みんなの様子をみて私もザックを下ろして朝食にした。切り開いたばかりの新道は見晴らしも良く、風もないので煮炊きをするにはいい場所であった。話をしてみるとみんな昨日の台風のため、「東大雪荘」で停滞していた人達だった。

コマドリ沢では水筒に水を補給し急坂を登って行く。コマドリ沢から見上げると、澄み切った青空と前トム平付近の紅葉のコントラストに感激する。昨日も同じ光景を見ていたのだが、青空の下で見る紅葉は全然輝き具合が違った。稜線付近では雲の流れが速いのが少し気になった。前トム平には8時20分に着いた。昨日は何も見えない中、この直前で引き返したが、今日は見るもの全てが初々しい感じさえする。前トム平からは右手奥にトムラウシの山頂付近がガスに見えかくれしていた。前方のピークを卷きながら登って行くと、少し先に単独者が一人登っているのがみえた。ハイマツ帯から石積みの道をトラバース気味に登ってゆき、平坦な道からさらに右手の尾根に移る。すると眼下になんとも素晴らしい光景が飛び込んできた。どうやらここはトムラウシ公園と呼ばれる場所らしかったが、残雪と深緑と紅葉が同居したような、ちょっと不思議な色彩を帯びた光景が広がっており、この絢爛たる光景にはちょっと言葉を失うほどだ。もしも神々の遊び場というところがあるとすれば、きっとこんな所をいうのではないかとさえ思える場所であった。大きな岩場を慎重に下って行きトムラウシ公園に降り立つと、右手奥にトムラウシ山はひときわ大きく聳えていた。大きな岩場を登り詰めてゆくとまもなく縦走路の分岐に着く。ガスは晴れるどころかますます濃くなっているようであった。強風のために思うように登ることができず、まるで昨日の台風の再現のようであった。単独者には途中で追いつきそこからは先頭をゆく。ペンキ印を目安にしながら大きな石を伝ってゆくと、山頂まではまもなくだった。

トムラウシの山頂には9時50分に到着した。まだ10時前だったが、登りはじめて4時間20分たっており、かなり手強い山という印象であった。山頂はガスに包まれていたが、しばらく岩陰で待っているとガスが晴れ出し、一気に展望が広がった。そしてまもなく単独者が登ってきたところでお互い、標識をバックに写真を撮り合ったりした。しかし十勝連峰はガスに覆われたままで、容易に姿を現さなかった。まもなく縦走路から若い3人組が上がってきたが、見覚えがある人達だと思ったら一昨日の旭岳縦走路で出会った若い人達であった。とっくに十勝岳方面に向かっていたものだと思っていただけに、この予想しなかった突然の再会はうれしいものだ。やはり昨日の台風で身動きがとれなかったらしく、ヒサゴ沼避難小屋で停滞していたのだという。しばらくお互いの山談義に花が咲いた。その後は再び四方をガスに包まれてしまい、結局十勝連峰方面が晴れることはなかった。しかし、まだ台風の影響が残っている状況で、充分過ぎるほどの展望を満喫できたのだから贅沢はいえないだろう。40分ほどの休憩を終えて下山にとりかかることにした。しかし、先ほどのトムラウシ公園をまた歩けると思うと、今日の下山はいつになく楽しみであった。ただ歩いて通過するのはあまりに惜しいので、トムラウシ公園では腰を下ろしてしばらく眺めてみる。見れば見るほど感嘆するしかないような、自然が作り出す造形の美というものを思わずにはいられない。ここはまさしく「大雪の奥座敷」の名に相応しい、現世の桃源郷のようなところであった。

朝方出会った6人組や8人のグループには縦走路の分岐付近ですれ違った。前トム平まで戻ると、いつのまにか空全体に薄雲が広がっていて、登ってきたときの紅葉の輝きはなくなっていた。コマドリ沢には山頂から1時間30分で戻った。コマドリ沢ちかくではエゾリスが目の前を横切ったりして驚かされたが、この小さな動物にはふっと気持ちが和むようであった。気温が低く風が強かったせいだろうか、めずらしく汗はほとんどかいていなかったが、ここまで下ってくるとさすがに足が重くなっていた。新道に登ると再び日差しが戻って周辺の山々の紅葉が輝きだしていた。正面に聳える秀麗なニペソツ山を眺めながらの稜線歩きは楽しいばかりであった。短縮登山口には13時50分に戻った。駐車場には小春日和のような柔らかい日差しが降り注ぎ、まるで近くの裏山にでもいるような心地よさであった。

下山後はトムラウシ温泉で汗を流してから羊蹄山に向かった。例によってナビによると280kmもの距離がある。高速はほとんどないのでいつ到着するかわからなく、のんびりと山岳道路のドライブを楽しむことにした。夕張ICから千歳ICまで僅かな区間だけ高速を走ったが、千歳市内のコンビニで、車中で食べる弁当とお茶を購入し、羊蹄山の登山口には夜10時になってようやく到着した。駐車場には車が2台とキャンプ場にはテントが二張り設営中であった。



紅葉のトムラウシ公園(1)


紅葉のトムラウシ公園(2)
高みから”庭園”を俯瞰する


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