山 行 記 録

【平成16年9月6日(月)/大雪山 旭岳〜間宮岳〜北鎮岳縦走】



縦走路から仰ぐ旭岳(間宮岳付近)


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、車中泊(山行は日帰り)
【山域】大雪山(表大雪)
【山名と標高】旭岳(あさひだけ)2290m、間宮岳(まみやたけ)2185m、中岳(なかだけ)2113m、北鎮岳(ほくちんだけ)2244m
【天候】晴れ
【温泉】上富良野町 吹上温泉保養センター「白銀荘」600円
【行程と参考コースタイム】
旭岳ロープウェイ下駅発630(ロープウェイ:往復2800円)姿見駅640
姿見駅(1600m)6:45〜旭岳8:10〜間宮岳9:10〜中岳分岐9:50〜中岳10:10〜北鎮岳10:20-30〜中岳分岐11:00-11:20〜裾合平〜姿見駅13:20
姿見駅13:30(ロープウェイ)旭岳温泉13:45=美瑛=白金温泉=吹上温泉保養センター(車中泊)

【概要】
大雪山は北海道の屋根としてあまりにも有名だが、大雪山という名前の山はなく、旭岳をはじめとする2000m級の山が連なる大雪山国立公園内にある山々の総称である。その旭岳は大雪山ばかりではなく北海道の最高峰でもあり、山頂から間宮岳を経て北海道第2の高峰である北鎮岳まで縦走するのが今日の行程である。できれば縦走路をそのまま進み、黒岳から層雲峡へと下りたいのだがマイカー登山であればそうもゆかず、北鎮岳からは裾合平を戻る一周コースを予定した。

昨夜、稚内から国道40号をひた走り、旭岳ロープウェイには午前6時に到着した。ロープウェイ乗り場の手前に広い公営の無料駐車場があり、何人かの登山者が準備中だったが、早朝のためか登山者はまだまばらであった。ロープウェイは15分間隔で運行されており、私は6時30分発のロープウェイに乗り込んだ。始発のロープウェイでは結構登山者が登っていったが、私達の便には全部で5名の乗客しかいなかった。ロープウェイから眺めると森林限界を超えたあたりから紅葉の始まった樹林帯が見渡せた。ロープウェイ姿見駅を出るとまず姿見ノ池をめざした。左へのルートは裾合平経由の登山道である。すがすがしい風が吹いており、朝の空気は新鮮だった。姿見ノ池では一般の観光客もいたが、この先からはいよいよ旭岳への本格的な登山道となる。左手の爆裂火口からはモクモクと白い噴煙が上がっていて、ときどき風に乗って硫黄臭が漂った。大雪山は昨日の利尻岳以上に紅葉が進んでいた。その紅葉に彩られた山並みが美しくときどき立ち止まってはカメラのシャッターを押した。朝一番のロープウェイで上がった人達だろうか。七合目付近から登山者が急に多くなり、追いついては先に行かせてもらった。ロープウェイで上がってきたとはいえ、旭岳山頂までの標高差は姿見駅から650メートルほどもあり、八合目を過ぎると昨日の利尻岳の疲れが残っているだけに足が鉛のように重く感じた。ザレ場の急坂をジグザグに登って行き、山頂目前の九合目は8時ちょうどに通過。旭岳山頂には8時10分に着いた。今日も好天に恵まれて山頂からは360度の大パノラマが広がっていた。地図を拡げて四方に広がる山並みを眺めてみる。旭岳の北方には北鎮岳や黒岳が聳え、後ろを振り返るとギザギザした稜線のトムラウシや右奥には十勝連峰まで見渡すことができた。日頃から飯豊連峰や朝日連峰のその山域の大きさについては人一倍感じているのだが、大雪山はそのいずれとも比べようもないほどの広がりがあり、連綿と続く山並みを眺めていると圧倒されるばかりで見飽きることがなかった。山頂では多くの登山者で賑わっていたが、休んでいる間にも次々と登山者が登ってきた。

旭岳の山頂からは北斜面を下ってゆく。ここはかなりの傾斜があるガレ場で、ストックを突きながら慎重に下った。急斜面を下っている途中、間宮岳にザックをデポして旭岳のピストンにきたという若い男女の二人連れと一緒になる。連れはもう一人いるらしかったが、昨日層雲峡から入山し、黒岳、白雲岳、トムラウシとつないで、最後は十勝岳までの長大な尾根を縦走する全行程5泊の日程と聞き、心底うらやましくなってしまった。熊ガ岳との鞍部までは一直線に下りてゆくと幕営指定地だ。右手にはまだ雪渓がだいぶ残っており、ここではその融雪水を汲むことができる。この幕営指定地から間宮岳まではしばらくなだらかな稜線歩きとなった。この穏やかともいえるような大雪山の縦走路に気持ちが安らぐ思いがした。歩いていると所々に標識は目に付くのだが、表面が朽ちていて何が書いてあるかわからず、ほとんど役にたたなかった。まもなく白雲岳との分岐点があって、さきほどの二人とはここで別れた。いつかこの分岐から白雲岳を経て、トムラウシ、そして十勝岳へと縦走するときがあるのだろうか。縦走路を眺めているとそんな思いがよぎってくる。間宮岳の山頂は分岐から少し離れたところに、ポツンと一本の標柱がたっているだけであった。ガスられれば右も左もわからなくなる所だが、今日は穏やかな秋晴れに恵まれて、何ともいえない心地良さにしばらく浸った。のんびりと間宮岳を下って行くとまもなく中岳分岐に着く。左手は裾合平から旭岳ロープウェイへと下る道だ。このまま下るのはあまりにもったいないので、どうするか少し迷ったのだが、分岐から北鎮岳までの標準的なコースタイムは往復1時50分とたいした距離ではないので。予定どおりここから北鎮岳まで往復することにした。北鎮岳は北海道第2の高峰で、三角錐のキリッとした容姿の秀麗なピークだった。途中、中岳を通過するとまもなく北鎮岳との分岐に着く。山頂を見上げるとかなりの急坂に思えるのだが、登りはじめてみると見た目ほどにはきつくはなかった。北鎮岳山頂では展望を楽しみながら10分ほど休んだ。上空には青空が広がり陽射しも気持ちよかったのだが、旭岳山頂を振り返るといつのまにかガスに覆われていて、山の形さえわからなくなっていた。大型の台風18号が九州地方で猛威を振るっているらしく、その影響が早くも現れているのか、天候は下り坂のようであった。山頂からは元の道を引き返し、中岳分岐には11時に戻った。分岐にはベンチのようなものがあって、ここでお湯を沸かしてカップラーメンを作った。食事をしている間にも縦走者が何人か通り過ぎていった。

中岳分岐からは裾合平に向かって下って行く。左手からは旭岳の北斜面が迫り、右手を見れば比布岳から北鎮岳の稜線が連なっているところだ。眼下に広がる紅葉の裾合平を眺めながらの下りは快適だった。広々とした裾合平に降り立つと、湿原には木道が設置されていて、辺りは一面の草紅葉に覆われていた。真赤や黄色に色付いた潅木や、紅葉したチングルマも美しい。ここは八甲田山の毛無岱や尾瀬ヶ原などの湿原を髣髴させるところで、湿地にはシラタマノキやミヤマアキノキリンソウ、エゾリンドウなどの秋の花が盛りだった。ロープウェイ姿見駅には13時20分に戻った。いつのまにか辺りはすっかりガスに包まれてしまい、ほとんど視界がなくなっていた。膚寒い濃霧が流れる悪天候でも観光客は次々とロープウェイで上がってくる。ロープウェイ下駅につくと今にも雨が降り出しそうな空模様に変わっていた。

登山口の近くには旭岳温泉という魅力的な温泉もあったのだが、下山後は明日の予定である十勝岳の麓、吹上温泉保養センター「白銀荘」にまっすぐに向かった。旭岳ロープウェイから「白銀荘」までは約65kmとちょっと距離があるが、この温泉では夜の9時まで休憩できるので車中泊の登山者にとってはとってもありがたいものだった。ビールを飲んだりしながら休憩室でのんびりと時間まで過ごし、車に戻る前に温泉に入れば朝までぐっすりと眠ることができるからだ。南富良野を走っている途中からは雨が降りだした。白金温泉から奥に進むと十勝岳登山口の望岳台への分岐点があったが、吹上温泉まではここからさらに8kmも先に進まなければならなかった。吹上温泉保養センター「白銀荘」には薄暗くなった夕方になってやっと到着した。この「白銀荘」は新築されてまだ間もない新しい施設だったが、宿泊者の食事が自炊という、ちょっと山小屋のような感じのする変わった温泉であった。利尻岳と大雪山という二つの山を登り終えて、疲れがたまっていたのだろうか。私は入浴後に飲んだ缶ビールで簡単に酔っぱらってしまい、しばらく起き上がることができなかった。


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