山 行 記 録

【平成16年8月1日(日)/夏油温泉〜牛形山】



稜線から眺める縦走路と雲海(正面は早池峰山方面)


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】焼石連峰
【山名と標高】牛形山(うしがたやま)1339.8m
【天候】晴れ
【温泉】夏油温泉「
元湯夏油」400円
【行程と参考コースタイム】
女神山登山口=R107経由=夏油温泉1100
夏油温泉1120(580m)〜経塚山分岐〜鷲ヶ森山分岐1305〜牛形山1325-45〜鷲ヶ森山分岐〜経塚山分岐1500〜夏油温泉1515
夏油温泉=R107、横手、R13経由=秋田市内コンビニ(仮眠)000=仁別国民の森=旭又キャンプ場130(仮眠)

【概要】
焼石連峰の北端に位置する牛形山は、経塚山、駒ヶ岳とともに「夏油三山」と呼ばれ、東北の秘湯として名高い夏油温泉が登山口となっている。山名は、春先に現れる雪形が牛に見えることと、山頂部主稜が牛の背のように見えることの両説があるという。元湯夏油と書かれた温泉宿の手前には東屋のような建物があって、その裏側が牛形山の登山口であった。すでに時間は昼近くということもあって、元湯夏油の大駐車場はマイカーなどで溢れており、周辺では多くの観光客や湯治客で賑わっていた。

夏油温泉では薄曇が広がり、周囲の山並みは見えなかった。朝方登った女神山の強烈な日差しがウソのようであった。東屋の裏手には登山口を示す標識と登山者名簿の入ったポストがあった。早速ノートに記入し、温泉宿の赤い屋根を左手に見ながら、階段を登ってゆくとすぐに林道に出た。その林道を左手に進み、天狗の岩の手前から右側の崖をのぼってゆくと再び林道に飛び出す。ここには左経塚山、直進牛形山と書かれた分岐があり、牛形山へは林道を横切る形で山道へと入ってゆく。日差しはないとはいえ、この時間帯の暑さは尋常ではなく、たちまち全身から汗がほとばしった。雑木林からいつしかブナの原生林となっていたが、登山道の勾配はなだらかで、徐々に高度が上がるという感じである。やがて完全に雲の中に突っ込んでしまうと、辺りは夏の朝靄のような深い霧に包まれた。展望はなくなってしまったが、日差しに晒されない分だけ今日はありがたかった。体力にまかせてぐいぐいと登っていったが動けなくなり、途中で小休止する。たいした登りではないのに暑さのためにどんどん体力が奪われて行くようであった。この時のためにと自宅から冷やしてきた茄子漬けがおいしい。汗を搾り取られた体は塩分がかなり不足しているのか、漬け物のつゆも全部飲みほした。

ある程度の高度まで上がると牛形山の北面をトラバースするようになった。草丈が伸びて登山道に覆い被さっているところもあって道がわかりづらくなっていた。やがて沢の源頭部を回り込むようになり、ガレ場となると急に樹林が切れて、正面には白子森と鷲ケ森山が現れた。左手の頭上には牛形山の山頂らしきピークが見えており、高度だけを見ると山頂はもうまもなくという感じだったが、なかなか稜線へは上がってはゆかず、この区間はいささかうんざりしてくるところだ。山腹をぐるっと回り込み、もうそろそろ鷲ケ森山への分岐点だろうと思われる頃、意外にも途中で水場があって、ここでは山頂から下ってきた夫婦連れが休んでいるところであった。二人は今日はじめて出会う登山者であった。山襞から湧き出るような水は冷たくて、死んでいた細胞が生き返るようであった。

花はほとんど終わっていたものの、それでもこの付近ではタカネマツムシソウ、シシウド、オオバギボウシ、センジュガンピ、ノアザミなどが咲いていた。鷲ケ森分岐はあまりはっきりしない標識が立っているだけであった。分岐から直進するコースは丸子峠を経由して夏油温泉へと下る周回路で、少しだけ様子を伺ってみたが、草が伸び放題となって半分ヤブっぽくなっていた。牛形山から白子森、鷲ケ森山、丸子峠、夏油温泉の周回コースはいつか歩いてみたいところだが、草が伸びきる前に登る必要があるようであった。小湿原を横切ると、稜線直下はロープのある急斜面となっていて、ロープをつかみながら登り切るとようやく稜線に飛び出した。牛形山はすぐ左手に聳えており、山頂まではあと数分の距離であった。大きな石がゴロゴロする道を伝いながら登っていると若い二人組が下っていった。

ようやく到着した牛形山の山頂は遮るものがない抜群の展望台であった。山頂には標柱や三角点があるだけで、他に登山者は見あたらなかったが、猛暑の中を登り続け、苦労しながらたどりついただけに感激もひとしおである。この光景を眺めることができただけで今日の疲れが吹き飛ぶようであった。東側一帯には雲海が広がっているため大パノラマというわけにはゆかなかったが、雲海から頭だけを出している正面の経塚山と駒ヶ岳がいっそう引き立つ結果となっている。経塚山からは焼石岳への稜線が続き、右手には真昼岳から和賀岳へと連なる真昼山地が横たわっている。山また山と連なる風景を眺めていると見飽きることがなかった。山頂からは鳥海山や日本海も見えるはずだったが、残念ながら靄に隠れていてはっきりとはわからなかった。

十分に汗がひいたところで下山を開始する。すでに2時近い時間では、これから登ってくる人はなく、今日は私が最後の登山者となったようである。陽がいくらか傾いてきたとはいえ、樹林帯に入って風がなくなると、再び蒸し風呂のような暑さが戻った。下山後は次の目的地に向かう前に、夏油温泉に入って行くことにした。元湯夏油では400円の入浴券で5ヶ所の露天風呂が楽しめるというもので、時間があればのんびりと楽しめそうであった。はじめに入った一番奥の大湯は、せせらぎが聞こえる川のすぐそばで風情があったが、手を入れてみると飛び上がるほどの熱いお湯でびっくりした。私は今日の汗を流すだけで十分であったが、体を沈めるまでには時間がかなりかかった。

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