【概要】
五葉山は岩手県東部の北上山地の南に位置し、またニホンジカの北限生息地として知られている。ヤマツツジやハクサンシャクナゲの群生でも有名で、常に県内外からも多くの登山者が訪れている山である。
昨日の夕方にはようやく雨も上がり、明日は晴れそうだと思いながら車の中で眠りについたのだが、夜半から再び大きな音を立てて雨が降り出してしまい、その雨は朝方まで降り続いていた。天気予報では早朝から晴れるはずであったが、まだまだ不安定な空模様を感じさせた。道の駅を午前4時に出て、途中のコンビニで食料を仕入れる。国道を走っているうちに雨が上がり始め、県道から赤坂峠へ向かうとようやく晴れ間が広がりだした。
陸前高田市からは1時間弱で赤坂峠に着いた。トイレも完備された大きな駐車場には、車が4台ほど駐車中で、傍らにはテントも1張り設営中であった。久しぶりに晴れそうな天候に今日は気分も晴れ晴れとしている。山頂付近はまだ雲が多いものの、これから晴れるのを期待して登り始める。風がかなり強く、樹木が大きく揺れていた。広い登山道は歩きやすく、だいぶ多くの人に登られているコースのようであった。賽ノ河原は石がゴロゴロしている広々とした場所で、台風一過を思わせるような清々しい風がすごく気持ちよい。さらに登ると畳石に着く。ここにはベンチやテーブルが置いてあって、休憩にもちょうど良いところであった。鳥居をくぐって薄暗い山道を進み、木立の中を登ってゆくとまもなく五合目の標識があらわれる。この頃から雲の中に突っ込んだらしく、周囲にはガスが広がりはじめた。2ヶ所ほど祠の前を通過し、ひたすら登っているとようやくしゃくなげ山荘に着く。突然濃霧の中から現れたという感じであった。霧雨はいつのまにかはっきりとした雨へと変わり、風も加わって大荒れの空模様となっていた。賽ノ河原付近までの好天がまるでウソのようである。ここからは吹きさらしの稜線となるので雨具を着た。小屋からはひと登りで小さな鳥居と小さな神社が建つ日枝神社に着く。神社からは北東の方角に誘導ロープが伸びていた。平坦な山頂部は道があるようではっきりせず、標識はあっても山頂にたどりつけるかさえおぼつかないので、この誘導ロープは今日のような視界が悪いときにはありがたかった。山頂には立派すぎるような、あるいは少し場違いのような大きな石造りの標柱が立っているのには驚いた。
展望の山も今日の濃霧と雨ではどうにもならず、証拠写真だけを撮ってからしゃくなげ山荘に戻った。山小屋には誰もいないと思っていたら、秋田から来たという男性が一人休んでいる。この人は楢の木コースから登ってきたらしく、こんな時間に登ってくる人がいるとは思わなかったと私の顔を見て驚いていた。今日はこの小屋で晴れるまで待っているつもりだといいながら、早くも缶ビールを一本空にしていた。私は朝食を食べながら小休止をとり、15分ほど休んでから小屋を出た。畳石から下り始めるとガスからようやく抜けだして再び視界が戻った。駐車場に停まっていたと思われる人達が登ってきたのか、徐々に行き交う人も多くなっていた。賽ノ河原では10人ほどの登山者が休憩中であった。下るに従って登山者はなおも増え始め、ツアーの団体と思われる人達が駐車場から列をなして登ってくる。しかし上空は青空が広がり始めたとはいえ、山頂付近にはあいかわらずぶ厚い雲が居座っており、快復するまではまだ時間がかかりそうであった。この青空に誘われたのか駐車場は大勢の登山者で騒然としている。マイクロバスやマイカーなども多く、数えてみると40台以上はありそうであった。