山 行 記 録

【平成16年6月26日(土)〜27日(日)/朝日鉱泉〜鳥原山〜大朝日岳〜ナカツル尾根



ヒメサユリと大朝日岳


【メンバー】4名(清水、東海林、川口、蒲生)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊
【山域】朝日連峰
【山名と標高】鳥原山1,430m、小朝日岳1,647m、大朝日岳1,870m
【天候】(26日)雨、(27日)晴れ
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【行程と参考コースタイム】
(26日)朝日鉱泉7:00〜金山沢9:20〜鳥原小屋11:00(泊)
(27日)鳥原小屋5:00〜鳥原山5:20〜小朝日岳6:30-7:00〜銀玉水8:00〜大朝日岳9:00-45〜長命水11:10-30〜
     二俣12:20-13:00〜朝日鉱泉15:00
  
【概要】
昨日から梅雨の鬱陶しい雨模様が続いている。今日は置賜地方一帯に大雨注意報が出ており、雨が静かに小止みなく降りしきる中、長井を出発した。こんな天候からか、朝日鉱泉の駐車場には宿泊者用のものと思われる車が3台あるだけで、一般駐車場には1台も見あたらなかった。雨は小降りになってはいたものの、まだ降り止む気配はなく、最初から雨具を着ての歩き出しである。かなり蒸れるところへ雨具まで着たために、その鬱陶しさには気持ちが滅入った。

朝日鉱泉に登山届を提出。吊橋を渡って登山道を進むとまもなく鳥原山への分岐につく。ナカツル尾根への道を見送って尾根に取り付くと、久しぶりの急坂に汗が流れた。途中で何回かの休憩を経て金山沢へと下ってゆくと途中で単独者と出会う。神奈川からきたというこの男性は、鳥原小屋に一昨日から宿泊していたが、結局天候が快復しそうにないので、朝日鉱泉に下山をするところであった。小朝日岳だけでも行こうとしたものの、視界もはっきりしない中では、途中の雪渓から先に進めなかったらしく、引き返してゆく男性の後ろ姿が心なしか寂しそうであった。金山沢は降り続く雨のために濁流で寸断され、渡渉が困難な状況となっていた。私達は少し上流に遡り、大きな石伝いに対岸に渡った。この金山沢の渡渉が今日の不安箇所だっただけに渡りきるとホッと胸をなで下ろした。

急坂を1時間半ほど登るとやがて木道に飛び出す。左手には雨に煙る鳥原小屋がうっすらと見えた。木道の傍らにはコバイケイソウ、ゴゼンタチバナ、ギンリョウソウ、ウラジロヨウラクなどが咲き、雨に濡れた高山植物は、普段よりもずっと瑞々しく新鮮に写った。ようやく花々に出会えたことで気持ちまでが明るくなるようであった。私達は久しぶりの鳥原湿原をのんびりと歩きながら小屋に向かった。

鳥原小屋は昨年秋に建て替えられたばかりの真新しい山小屋だ。中にはいると木の香りがプンプンと漂っている。ザックをひとまず下ろして濡れた合羽などを乾かしながら一息をつく。雨は相変わらず降り続いており、止む気配はなかった。大降りというほどではないが、一番楽しみにしていた、小朝日岳からの稜線歩きがこの悪天候ではつまらないので、大朝日岳に向かうのはあっさりとあきらめて、今日の行動はここで打ち切りとした。この天候では誰もやってくる気配もなく、山小屋は我々だけの貸し切りになりそうであった。私達は二階に上がって早速缶ビールで乾杯をする。食後はとりたてて何もすることがないのでシュラフを出して昼寝を始めたり、文庫本を読んだりしながら夕食までの時間を4人それぞれ思い思いに過ごした。夕方になると少し雨は小やみになった。予報によると明日は晴れそうだというのでみんな再び元気を取り戻す。予定外の停滞で夕食に用意していたビールはすでになくなったため、虎の子のワイン1本をみんなで分け合いながらの夕食が始まった。酒のつまみを調理したり、片方では焼きソバを炒めたりと、みんなと語らいながらの山の食事は楽しい。こうした時間はたちまち過ぎてゆき、その夜は明日の好天を祈りながらの就寝となった。

翌日は3時半に起床し、朝食を終えると5時には鳥原小屋を出発した。空を見上げると雲は少しあるものの、下界では今日の気温が30度にもなるというから雨の心配は全くなさそうであった。小屋泊まりの翌朝のすがすがしさはなんともいえず、思いっきり息を吸い込むと、体に精気が漲ってくるようである。まぶしいほどの朝日が雲間から差し込み、鳥原湿原はきらきらと煌めいている。整備された石畳の道をひと登りすると鳥原山の展望台に着く。見渡すと大朝日岳の山頂付近がまだ雲に隠れているものの、それもまもなく晴れそうな雰囲気である。鳥原山からはマイズルソウ、ミツバオウレン、イワカガミ、ツマトリソウ、アカモノなどが足下に咲き、さらに進すむとコバイケイソウ、ウラジロヨウラク、ミズバショウ、シラネアオイ、ムラサキヤシオ、ミツガシワなども加わってくる。百花繚乱ともいえそうな初夏の花々を楽しんでいると、雪渓のトラバース箇所にでた。ここは遅くまで雪が残るところで、たしかにガスられればルートはわかりづらいだろうと思われるところだ。ここはストックをたよりに慎重にキックステップを刻みながら通過する。フィックスロープのある岩場を登り切ると小朝日岳まではもうひと登りだ。

小朝日岳到着は6時30分。山頂直下の急坂に汗を搾り取られただけに山頂を渡る涼風が心地よい。急ぐ必要はないので、山頂からは大展望を楽しみながらゆったりと休憩した。30分ほどの休憩を終えて出発しようとすると登山者が一人熊越から登ってきた。なんでもこの人は朝日連峰一帯の山小屋の浄化槽管理を行っている人らしく、昨日は日暮沢から狐穴へと登り、そして大朝日岳までの行程を11時間かけて一日で歩き通したというから驚いた。

小朝日岳の山頂から熊越に向かって下り始めると、ヒメサユリのオンパレードとなった。早朝に見るヒメサユリは朝日に照らされて一段と鮮やかだ。歩けど歩けど道の両側に群落が続く様には感激するばかりであった。朝日連峰の名水、銀玉水ではたっぷりと水筒に補給した。見上げると銀玉水の雪渓を20人近い団体が下ってくるところであった。雪渓を慎重に登り詰めればもう大朝日岳避難小屋はまもなくだ。登るにつれてガスが濃くなっていたが、時々晴れ間が広がると、雲の上に浮かぶ月山や鳥海山が見えた。大朝日岳避難小屋では同じようにナカツル尾根を下るという女性6人グループが管理人と談笑しているところだった。

大朝日岳山頂には9時ちょうどに到着した。しかし雲の中に突っ込んだらしく展望はあまり良くない。視界が快復するまでの間、しばらく大休止をとることにした。みんなザックを枕にして昼寝モードに入ると、雲が流れて時々青空が顔を出したりした。最初は遠くの飯豊連峰から姿を現しはじめ、やがて視界が快復してくると次第に北大玉山や平岩山までも見えるまでになる。輝くような雲海が眼下に広がると山頂のみんなから歓声が上がった。私達は写真をとったりしながら山頂のひとときをのんびりと過ごした。

大休止を終えるとあとは棒尾根のようなナカツル尾根を下るだけである。山頂からは眼下に見える朝日鉱泉をめざして下りはじめる。この頃になると、夏を思わせるような強い日射しが降り注ぐまでになり、振り返ると青空をバックに端正な姿の大朝日岳があった。尾根の途上からは左手に小朝日岳や鳥原山、右手には平岩山や御影森山を眺めながら快適に下ってゆく。縦走路とちがって花は極端にすくなくなったが、それでもハクサンイチゲの群生に出会うとうれしかった。長命水の水場まで下れば付近一帯はブナ林の樹林帯となり、展望の楽しみはなくなってしまったが、反面、直射日光は遮られるので、ずいぶんと歩きやすくなったのも確かだった。強い日射しがブナの深緑を通して、登山道がきらきらと煌めいていた。こんな光景を眺めていると疲れた体がいやされるようであった。水場から二俣まではこのナカツル尾根でも勾配が一番きついところで膝も痛めやすいところだ。メンバーの一人がつま先を痛めたのもこの頃であった。

二俣まで下りきるとようやく急坂も終わりとなる。二俣にかかる吊り橋の手前から川原に降り立ち、ここで最後までザックに残しておいたラーメンをつくることにした。ジリジリと川原に降り注ぐ日射しはすっかり夏を感じさせた。今日は梅雨の中休みのような天候で、川原に並べていた濡れたバンダナなどはたちまち乾いていた。二俣からは沢沿いの道を朝日鉱泉に向かうだけである。とはいっても小さなアップダウンが続くうえに、沢をいくつも横断しなければならないので結構時間を要する区間だ。約2時間近くかかって鳥原山への分岐まで戻ると長かった周回コースもようやく終わりとなる。鳥原小屋を出発してからすでに10時間になろうとしていた。弘法水という水場で乾ききった喉を潤してから朝日鉱泉に向かうと、駐車場まではあと10分の距離であった。



鳥原山避難小屋



小屋の内部



小朝日岳への途上
何カ所かの雪渓のトラバースを乗り越える



小朝日岳直下



小朝日岳山頂
昨日の雨天が信じられないくらいに晴れ渡った



小朝日岳



銀玉水上部の雪渓を登る



大朝日岳避難小屋
次第に霧が晴れて行く



大勢の登山者で憩う大朝日岳山頂



ナカツル尾根を下り始める



ハクサンイチゲとナカツル尾根



ナカツル尾根から大朝日岳山頂を仰ぐ



二俣の川原に下りて昼食
特製ラーメンを煮る



二俣の吊橋を渡る


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