山 行 記 録

【平成16年5月30日(日)/百宅口から鳥海山



タッチラ坂付近の木道を歩く


【メンバー】3名(柴田、山中、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、夏山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)
【天候】晴れ
【温泉】秋田県由利郡鳥海町「ホテルフォレスタ鳥海」500円
【行程と参考コースタイム】
自宅3:20=大清水登山口(駐車場)7:00(片道190km)
大清水避難小屋7:20(838m)〜タッチラ坂8:50(1319m)唐獅子平避難小屋付近通過9:45〜七高山山頂11:10-12:45〜タッチラ坂13:15〜大清水避難小屋〜駐車場14:40
  
【概要】
2週続けての百宅コースである。今日も早朝暗いうちに自宅を出たのだが、天気予報がいまひとつのために気持ちが盛り上がらなかった。柴田氏と山中氏とは新庄駅でそれぞれ合流し、金山町から真室川町と一路、秋田県に向かった。新庄市から降り始めた雨は雄勝トンネル付近ではさらに雨足が早くなって、周囲の景色はほとんど見えなくなっていた。しかし秋田県にはいると少しずつ雨が上がり始め、大清水園地の駐車場に着く頃には鳥海山全体も見えるほどに晴れ間が広がりだしたのには驚いてしまった。山はやはりきてみないとわからないものだと今更ながら考えさせられた。

駐車場には東北各地からはもとより、遠く札幌や関東からのナンバーもあって、かなりのマイカーで混みあっている。すでに多くの人達が鳥海山めざして登った後のようであった。準備を終えると私達もさっそくスキーを担いで山道に入って行く。この1週間の間に当然ながら雪は相当少なくなっており、ブナ林から通り抜けてきた柔らかい光が登山道に降り注いでいる光景を見ていると、すでに山スキーという雰囲気ではなくなっていた。両側からは美しいブナ林がトンネルのように覆い被さっており、初めて歩く雪のない登山道はどことなく新鮮であった。しばらく夏道を行くつもりだったが、途中から雪渓が現れると、もしかしたらずっとつながっているかも知れないと期待をしながら雪上を歩いて行く。しかし行く先々で雪渓が途切れていて、結局はヤブ漕ぎを強いられてしまい余計な時間を費やしてしまった。5合目付近の密生したヤブをどうにか抜けだすと、6合目のタッチラ坂までは素直に夏道を歩いた。木道の傍らにはミズバショウが咲き、周囲はすっかり初夏の佇まいであった。

6合目まで来ると急に登山者や山スキーの人達が増え始める。みんな夏道通しできたらしく、ヤブ漕ぎをしてきたのは私達3人だけのようであった。タッチラ坂からはシール登高が可能となりようやく肩の荷が軽くなる。しかし1週間前に歩いた筈のルートはすでに通れなくなっていて、雪渓を大きく迂回しなければならなかった。ほとんどの人達は唐獅子平避難小屋を経由してゆき、私達のような迂回組は数えるだけであった。快晴とは行かなかったが清々しい青空が広がり、先週と同様に汗が流れ続ける。しかし日差しと共に風もあって気持ちの良いシール登高であった。やがて最後の急斜面にとりかかると七高山まではもうひと登りだ。夏を感じさせる白い雲がどんどんと眼下に広がり始め、気がついてみると私たちは雲の上に飛び出していた。いつもとは違って今日は祓川コースに廻り込んでから七高山をめざした。山頂到着は11時10分。ヤブ漕ぎで時間をロスした割合には先週とほとんど同じ所用時間であった。私達は缶ビールが冷えるのも待ちきれず、そそくさと雪に晒しただけで早速乾杯をすると、冷えた自然水が乾ききった喉に沁みていった。眼下には白い雲が雲海となって一面に浮かんでおり、遠くに目をやれば大清水山荘や駐車場も見えた。今となっては朝の雨が信じられないくらい、気持ちのよい山日和になっていた。

のんびりと1時間半も休憩をしていたが、風が出てきたのを機に滑降を開始する。今日が今シーズン最後の滑降だと思うと、どことなくもの悲しい気分になっている。いつになくたっぷりと時間をかけて固形ワックスを塗り、一気に百宅コースに滑り込んで行く。私はたった1本の缶ビールに酔いが回ったのかターンもいささか酩酊気味であった。途中の雪解け水で喉を潤し、6合目からは雪渓がつながっていることを半分祈りながら赤沢川沿いに下ってゆく。しかし案の定というべきか、先週かろうじて通れたトラバース区間はすでにヤブとなってコースは完全に寸断されていた。その先でも深いヤブが行く手を阻んでいて、無理して雪渓を下ったことを後悔しなければならなかった。私達につられてしまったのか、振り返ると10数人ほどが後をついてきていたが、夏道に戻るには強引にヤブに突っこんでゆくしかなかった。たった4、50mほどの距離だったが、ここの密ヤブではだいぶ体力を消耗してしまった。どうにか夏道に飛び出すと、もうヤブは懲り懲りとばかり、あとは夏道をひたすら下ってゆく。しかし、今日は予想外の好天に恵まれたこともあって、心はいつになく満たされている。まるで全力疾走した後のように全身に極度の疲労を感じていたが、2週続けて百宅コースを滑ることができて、私は何も思い残すことはなくなっていた。


ブナ林が続く登山道


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