山 行 記 録

【平成16年5月23日(日)/百宅口から鳥海山



鳥海山を駐車場から望む(7時30分)


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、夏山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】鳥海山(七高山2,230m)
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
自宅3:30=大清水登山口(駐車場)7:20(片道190km)
大清水避難小屋7:30(838m)〜大倉815(1090m)〜タッチラ坂900(1319m)唐獅子平避難小屋付近通過9:45〜七高山山頂11:15-12:15〜大清水避難小屋〜駐車場13:50

【概要】
ちょうど1年振りの百宅コースである。百宅口からの入山は、例年この時期、最後の林道の開通を待ってようやく可能となる。雪解けがいつもよりもかなり早いという情報もあり、翌日の天気予報を確認してから目覚ましを午前3時にセットした。13kmほどの林道にはほとんど雪はなく、登山口ちかくになってようやく両側に雪が現れてくる。駐車場には鳥海町の除雪車とマイカーが7、8台駐車中で、昨夜、車の中で泊まったと思われる人達が、数人駐車場にビニールシートを広げてのんびりと朝食中であった。見上げると目の覚めるような澄んだ青空を背景にして、残雪を抱いた秀麗な鳥海山の姿があった。

朝から強い日差しが降り注いでおり、最初からTシャツ一枚で登り始める。スキーはザックの両サイドに括りつけた。大清水避難小屋前を過ぎるとすぐに雪が現れたが、積雪は昨年よりかなり少ないという印象だ。登り始めると周りは一面の新緑の美しいブナ林となり感激する。ここのブナ林の美しさは特筆もので、眺めているだけで心が洗われて行くようである。ところどころ夏道をつないで高度を上げてゆき、まもなく雪がつながりそうなところからシール登高を開始した。無風快晴の中、気温は高く、汗が額から頬を伝って滴り落ちてくる。日焼け止めをたっぷりと塗っていたが噴き出る汗をぬぐっているうちにほとんど剥がれてしまいそうであった。思わず暑い暑いとぼやきたくもなるような気温の高さである。せめて登っている時ぐらいは曇っていてくれたらと、昨日の祝瓶山の悪天候も忘れて、いつになく贅沢なことを考えている。人間とは全く勝手なものだと思うばかりである。ブナ林からはしきりにカッコウやウグイスのさえずりが聞こえていた。

周辺には坪足の踏跡が散乱していたが、前後には不思議と人が見あたらない。ときどき日が陰ったりしたが、まもなくするとそれもすぐに快復した。汗だくの体には雪渓を渡ってくる涼風が心地よく、全身が生き返るようであった。緩やかな斜面を登っていると雪がなくなりそうになり、北斜面を卷いてゆくとまもなく雪渓が途切れてしまった。しょうがないのでヤブを少しかきわけて夏道に戻る。するとそこがちょうど5合目であった。大倉と書かれた標柱には、大清水からは1.4km、6合目のタッチラ坂までは1.2kmとある。しばらく夏道を進み、雪渓が現れたところから今度は左手に回り込んで赤沢川沿いの雪渓へとつないでゆく。南斜面のトラバースは雪面が締まっているだけに結構緊張するところだ。落ちても死ぬことはなさそうだが怪我ぐらいはしそうな急斜面である。赤沢川の雪渓からは緩斜面なのでのんびりと登って行く。ここからは雪渓が途切れる心配もなく快適なシール登高が続いた。前方に見え隠れしていた鳥海山が徐々に大きくなって行く。まもなく尾根に登るとそこには6合目を示すタッチラ坂の標柱が立っていた。

夏道は屏風岩のピークを経由して行くがスキーでは右手の雪渓を行く。まもなく唐獅子平避難小屋だが手前は潅木で遮られているのでここも尾根の北側を卷いた。潅木の向こう側には避難小屋の屋根だけが見えていた。避難小屋を過ぎれば鳥海山もぐっと近くなる。しかし昨日の祝瓶山の疲れがまだ残っているためか、途中から足がどうにも動かなくなり、少しガスが広がったのを機に少し長めの休憩をとる。喉が乾いているだけに清涼飲料水がとても美味しい。そして行動食を食べているうちに少し元気が戻ってくる。まもなく鳥海山が正面に見えるようになると薄雲もすっかりと取れて快晴の空が広がった。

唐獅子平避難小屋を遠くに見下ろすようになる頃には最後の急斜面となる。左手からは唐獅子平避難小屋を経由してきたツボ足の登山者が大勢列をなして登っているのが見えた。祓川コースのような急勾配ではないものの、それでも外輪山の一角が見えているだけにここは一番きつく感じるところだ。もうひと踏ん張りと両手両足を総動員する。外輪山には登り始めてからおよそ3時間半強で到着した。ここも立派な山頂の一角だが、七高山の山頂までは残り数十メートルの距離だ。スキーを担いでゆくと七高山では大勢の登山者が休憩中であった。見るからに高校の山岳部と思われる、同じジャージーを着た女子高校生達も大勢いる。いつになく若々しい人達が山頂を占領しているというめずらしい光景だ。私は早速ビールを雪で冷やしガスコンロでお湯を沸かす。斜面には祓川から登ってくる人がまだ多数張り付いていた。

1時間ほどの休憩を終えればいよいよ滑降の開始だ。きつい登りに耐えた者だけが味わえるこの瞬間がたまらなくいい。雪渓がつながっているので今日はこの七高山の山頂から滑ることにした。もちろん滑り出しは祓川コースだが、途中で百宅コースと接続しているので問題はない。せっかく自分の足で稼いだ貴重な高度だったが、山頂からは惜しみもなく一気に下った。ザラメ雪は快適の一言で、ターンを繰り返すたびに爽快な風が全身を撫でていった。唐獅子平避難小屋付近からは右手の沢を回り込んでゆく。しかし調子に乗りすぎたのか、正規の尾根からはどんどんと離れていってしまい、結局は途中で登り返す羽目になったりした。赤沢川のトラバースを過ぎると雪が極端に少なくなった。午前中からまだ数時間しか経っていないのにそれでも雪解けはかなり進んでいた。スキーを担ぐのは最後の手段なので、半分ヤブのようなところでもなんとか雪を拾いながら下った。横滑り、キックターン、階段登高と悪雪、悪路での常套手段の連続だ。しかし、ここでも左手の雪渓を下り過ぎてしまい、最後は結局スキーを担いで小屋前に出なければならなかった。


美しいブナの深緑(7時40分)



七高山(11時20分)
山頂では大勢の登山者達で憩う


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