山 行 記 録

【平成16年5月5日(水)/飯豊連峰 石転ビノ出合〜門内岳〜門内沢滑降



門内沢を滑降する柴田氏


【メンバー】3名(柴田、山中、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、飯豊山荘駐車場にテント泊、(山行は日帰り)
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】門内岳 1887m
【天候】曇りのち晴れ
【温泉】飯豊温泉 川入荘 500円
【行程と参考コースタイム】
飯豊山荘6:40〜雪渓末端8:15〜石転ビノ出合9:00〜主稜線12:00-40〜門内岳13:00〜石転ビノ出合13:50〜雪渓末端14:00〜飯豊山荘駐車場15:30  

【概要】

いままで私は飯豊連峰、特に石転ビ沢をスキーで滑ったことはなかった。何となく飯豊や朝日については滑る対象には考えていなかったのだが、富士山の代替案として急遽、今回の山行計画が浮上したものである。5月4日の早朝、暴風雨で大荒れの富士宮口の登山口から這々の体で逃げたした私達は、東名高速、首都高速、東北道とひた走りそのまま飯豊山荘へと向かった。昨夜は飯豊山荘の駐車場にテントを設営して二日目の天気祭りとなったのだが、しかし富士宮口と同様に飯豊山荘でも雨が降り続いた。

翌朝になってみると曇り空だが雨は上がっていた。天気予報に反して陽射しがないのはがっかりだったが、雨が降らないだけ増しだろうと思うことにした。飯豊山荘からは当然雪はないので2時間ほどスキーは担いで登らなければならない。久しぶりに訪れた温身平はブナの新緑に満ち溢れていた。いつもならば気持ちの良い足慣らしの区間ともいえそうだが、この歩きさえなかったらどんなに楽だろうと思えるほどスキーはずっしりと重く肩にのしかかった。この時期ならば砂防ダムからでもシールが貼れるかもしれないと淡い期待を抱いていたが梅花皮沢は滔々と雪解け水が流れていて雪渓はどこにも見あたらない。周囲の雪解けの早さに驚くばかりだった。もしかしたら雪はほとんど消えてしまったのではないかと心配になるほど雪が少なかった。

地竹原の台地付近から幸いに雪渓が続いているのをみてやっとシール登高が可能となる。今日はGWも最後というのに全く登山者がいない。稜線から下りてくる人も見あたらなかった。滝川の出会い付近は6月になってもまだ厚い雪渓に覆われているはずだったが、今年は異様に雪解けが早いのか、至る所に大きな口を開けて奔流がのぞいていた。

2時間20分ほどで石転ビノ出合に着く。ここで今日のコースを決めなければならなかったが、石転ビ沢を滑るのは今度の日曜日にということで3人の考えが一致し、今回は門内沢の滑降ということに決定する。門内岳に直接突き上げる門内沢を登るのは全員初めてである。石転ビ沢と似たようなものだが、それでも微妙に風景は違うので、新鮮な驚きに心が弾むようであった。しかし最初はなだらかな雪渓も徐々に傾斜が増してくる。ちょうど雪渓の真ん中に稜線まで突きあげている尾根があり、私達はこの尾根の左手の沢へと入った。柴田氏と山中氏はスキーアイゼンを装着したが私はシールのまま登ってゆく。40度もあるような斜面が続くようになると徐々にシール登高も困難な状況となってゆく。私は途中でシール登高を断念し、足場を確保してからアイゼンを装着する。ピッケルはないのでストックでバランスをとるしかなく、かなり緊張する場面だったが先に進むしかなかった。転倒でもすればどこまで滑落するかわからないような状況であった。

柴田氏と山中氏の二人は尾根に取り付いていったが私は二人からはかなり離れてしまっていた。追いつくためには長い距離をトラバースしなけばならず、私はそのまま稜線へと直登することにした。尾根に登った二人はいつのまにか遠く離れてしまい、豆粒ほどにしかみえなくなっていた。そこからは足がすくみそうな急斜面がずっと続いた。稜線直下はかなりの勾配であった。なんとか稜線まで上がりきってみると左手に北股岳が異様に近いので驚いた。そこはちょうど北股と門内の中間地点のようであった。二人もほとんど同時に稜線に上がりきったようだったが、私が門内岳に向かって戻る分だけ時間がかかった。稜線にのぼってしまえば滑落の心配はない。無事に稜線に登り切ったことでひとり安心感に浸った。

夏道から少し離れた雪渓の上を休憩場所と決めてザックを下ろす。すぐ目の前には門内岳、そして右手には門内小屋が見えている。後方には飯豊本山や北股岳の山並みが続いていたが、どこを見渡しても人影は見あたらず今日の飯豊連峰にいるのは私達3人だけであった。日射しはなかったがいわゆる高曇りの天候で視界は良好だ。素晴らしい展望に満足しながら早速ビールで乾杯をする。

昼食を終えると門内岳までひと登りし、山頂からの風景を写真に撮ったりしてしばし展望を楽しむ。門内沢は山頂のすぐそばまで雪渓が伸びている。もちろん山頂から滑り出そうということで3人は一斉に滑降を開始する。二人ともスキーの達人なのでなんの問題もなさそうだったが私のテレマーク技術では不安が募るところだ。石転ビ沢を凌駕するような50度近い勾配に、思わず足がすくんでしまいそうだったが、しかし一旦下り始めると雪面がよいのか安定したターンが続いた。さすがに急斜面での滑りは足にくるので、途中で小休止を兼ねて何回か立ち止まった。そして二人の写真を撮ったりしながらなおも滑降を再開する。滑っても滑っても斜面は続いた。門内沢の核心部を滑り終え、途中で休憩をとると山中氏のザックからは再び缶ビールがでてきた。

石転ビノ出合を過ぎると滑降もようやく終盤となる。黄色い旗の立つ地竹原まできたところでスキー滑降は終了となった。ここからは約2時間、スキーを再び担がなければならない。重荷に耐えながらだらだらとした荒れた山道の上り下りはつらいものだ。しかし、いつかは滑りたいと思っていた懸案の門内沢を滑ることができて、私は心地よい達成感に浸りながら飯豊山荘に向かった。


石転ビノ出合がもうすぐ
正面は門内沢



石転ビノ出合から石転ビ沢を望む



門内沢の急斜面を登る



門内岳をバックに記念写真



門内岳山頂からの胎内尾根と二王子岳



門内沢の核心部を滑り終えて



砂防ダムの新緑



新緑の温身平を歩く


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