登り着いたところからは仙人岱ヒュッテが目前である。すぐ近くには八甲田大岳が大きく聳えており、何人かの登山者が山頂をめざして登っているのが見えた。カミさんは仙人岱ヒュッテが初めてなのでちょっと立ち寄ってみることにした。ちょうど硫黄岳を経由してきたらしいスノーシューの女性2名と共に小屋にはいって一休みとする。木造のいかにも山小屋らしい感じのする小屋で、ストーブもあって快適そうなのだがまだ宿泊したことはない。いつか厳冬期にでも泊まりたくなるような佇まいの山小屋であった。小屋を出ると大岳の中腹まで登り、そこからは大岳避難小屋をめざしてトラバースしてゆく。大岳の山頂まではいくらもかからないのだが、今日はカミさんの体調がいまひとつのため無理はしないことにした。大岳避難小屋までくると大勢の登山者や山スキーの人達で溢れていた。大岳避難小屋はまだ真新しいログハウス造りの山小屋で、中にはトイレも完備された素敵な山小屋である。ここはちょうど八甲田山の交通の要所のような場所になっているところで、今日はツアーガイドを伴った団体も多く、それぞれ一休みしてから大岳や井戸岳、あるいは箒場岱コースをめざして散って行った。私達も小屋に入り大休止をとることにした。
1時間ほどの昼食休憩を終えて大岳避難小屋を出ると、大岳の西側斜面を卷くようにトラバースしてゆく。さすがにこの時期になると雪も大方融け出してしまい、樹林は一見ヤブっぽくなっていたが、なんとか抜けだすと広々とした斜面にでた。この大岳環状コースではここから酸ヶ湯温泉までがハイライトだろうか。疎らな立木と適度な斜面は八甲田山スキーの面目躍如といったところか。いつのまにかカミさんの体調も戻っており、気持ちよさそうに斜面を下って行く。行く先々には長い竹竿によりコース表示されているので迷う心配はない。そんな竹竿を拾いながら下って行くと酸ヶ湯温泉はまもなくである。平坦部が終わり急斜面の肩に立つとマイカーや大型バスで溢れた酸ヶ湯温泉駐車場が眼下に見えた。カミさんは迂回コースを下ってゆき、私は酸ヶ湯温泉をめざして急斜面を一気に滑降して行く。勾配はきついが春のザラメ雪では下手なテレマークでもターンは可能だ。今日はときどき薄雲が覆ったりして天候が悪化するかとも思われたのだが、いつのまにか快晴の空が広がっていて、まるで初夏を思わせるような陽射しが酸ヶ湯温泉に降り注いでいた。