山 行 記 録

【平成16年3月28日(日)/朝日連峰 大井沢〜赤見堂



障子ガ岳を左手に馬場平を歩く


【メンバー】16名(西川山岳会)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り(前日、大井沢支所に宿泊)
【山域】朝日連峰
【山名と標高】赤見堂岳1,445.5m(※1,327mピークまで)
【天候】快晴
【温泉】大井沢温泉「湯ったり館」300円
【行程と参考コースタイム】
 大井沢8:00〜785m9:50〜1125
11:10〜馬場平11:30〜1,327m峰12:10-12:40〜1125m13:10〜大井沢14:45

【概要】
赤見堂岳は朝日連峰の名峰、障子ガ岳から月山へと続く長い稜線上にあって、標高は障子ガ岳に次ぐ高峰である。いつかこの稜線を縦走したいものだと考えてからずいぶんと年月が経っている。もちろんこの稜線には夏道はないので雪のある今の時期しか登れない。今回は西川山岳会による
赤見堂岳へのスキーツアーで、全部で16名ほどの大集団による山行である。中にはワカンを履いた坪足組も2名参加している。私はもちろん初めてのコースであり、どこを登山口とするのかよくわからなかったが、大桧原川と小桧原川の中間地点、大井沢の県道から直接尾根に取り付くものであった。登山口の標高は約450m。赤見堂岳までは約8kmという長い行程である。

私は昨夜の山岳会の飲み会がたたり、朝から二日酔いによる頭痛を抱えながらの登り始めとなった。その重い気分とは対照的に、天候は昨日の湯殿山の悪天候がウソのような快晴の空が朝から広がっていた。県道沿いからは真っ青な空に月山や姥ケ岳、湯殿山がくっきりと鮮やかだ。尾根の取付には赤い大きな鳥居と共に古くからの神社がひっそりと建っていた。神社前を過ぎるとすぐに急斜面となる。気温の上昇で雪面はすでにザラメ状態となり、崩れ落ちそうな斜面にはシール登高も結構きついものがある。最初の高みに登り切るとそこからはいくつもの小さなピークを連ねながら痩せた尾根が延々と続いていた。ヤセ尾根の両側には若いブナの木が密集していた。

大集団だけに足並みはなかなか揃わなかったが、大きなピークを越える毎に小休止をとるので、気分的にはのんびりとした雰囲気だ。春の陽気を通り越して今日はまるで初夏の陽射しが降り注ぐ。気温はかなり高くて、汗が止めどなく流れ続け、途中からは我慢しきれずに下着一枚になった。まもなくすると樹林の間からは左手に小朝日岳や大朝日岳が姿を見せ始める。そして右手には月山や湯殿山が常に寄り添っているという、ここはなかなか楽しいシール登高が続くところだ。昨日の湯殿山は全山が真っ白い雪に覆われていて、そこには一点のシミも見られなかった

1125mピークからは尾根もほとんど平坦となり、なだらかな稜線の奥にはようやく赤見堂岳が姿を現す。手前のピークを越えて行けば、その昔、競馬も行われたであろうという、広大な馬場平が広がっているのだと会長さんが説明してくれる。この先はまさに稜線漫歩という感じで、ほとんど急登はなさそうであった。左手からは障子ガ岳が大きく迫る。その右奥にはどっしりとした量感をもって以東岳がそびえ立っていた。大きな雪庇をひとつ越えて行くと馬場平の大雪原に飛び出した。馬場平の正面にはもう障子ガ岳からの主稜線が近い。ここまで登るといよいよ朝日連峰の再奥に踏み入れているという思いにとらわれるところだ。馬場平からは見渡せばまだまだ多くの雪を抱いた朝日の有名無名の山並みが広がっているのだった。

はるかに遠いと思われた赤見堂岳まではもうそれほどの距離はなくなっている。すでに先発隊は主稜線に到達したようであった。しかし斜面を登りながら振り返ると、ここまでの登りでさすがに力が尽きたのか、メンバーの何人かが馬場平でツェルトを広げ始めている。もしかしたら途中で登頂をあきらめたのかもしれない。ここにきてメンバーの足並みが揃わなくなっていた。急斜面をひと登りすると私もようやく1327m峰に到着した。ここはすでに障子ガ岳と月山を結ぶ稜線上のピークである。眺める風景が実に新鮮で、見飽きることのない風景にしばし立ち尽くした。

すでに正午を過ぎていたからなのだろう。リーダーの判断により今日はここまでとし、この
1,327m峰からは往路を戻ることに決まった。石見堂山を回る周回コースも案としてはあったようだがそれも次回までのお預けの形となった。赤見堂岳まではもう目前だったがやむを得ないのかもしれなかった。ここが今日の山頂と決まり、みんなは早速ビールをザックから取り出した。私は二日酔いがようやく治まりかけていたところだったのでジュースで乾いた喉を潤す。腰を下ろしていると4時間かけて登り切った充実感が徐々に沸き上がってくるのを感じた。馬場平を見下ろしながら朝日連峰や月山の山並みを眺めながらの大休止は時間の経つのを忘れるほどで、たちまち30分の休憩時間が過ぎていった。

1,327m峰からはシールを剥がしてそれぞれ思い思いに滑降を開始する。雪はすでに春のザラメ雪となっていて、広い雪面には特別の技術もいらないから楽しいばかりだ。急に上級者になったような錯覚を起こしそうであった。私以外はみんな山スキーなのだが、みんな滑り方が一人一人違うので、そんなところを眺めながら下るのもまた楽しい。春の爽やかな風を体一杯に受けながらスキーで下れるこの快適さをなんと表現しようか。そしてこのままずっとこの緩斜面が続いてくれたらといつも思わずにはいられない。ヤセ尾根に入ると樹林も混み合ってくる。気温が低いと先週の会津駒ヶ岳のような難儀しながらの滑降になるのかもしれなかったが、今日はその心配も皆無であった。ヤセ尾根をだましだまし下って行き、途中で沢沿いの斜面に寄り道をしながら高度を下げて行くと下界はもうまもなくだ。下山後は大井沢温泉「湯ったり館」で日に焼けた膚を労りながら汗を流し解散となった。



左から湯殿山、姥ケ岳、月山
(標高630m付近)



広大な雪原、馬場平を歩く
(標高1190m)



ようやく朝日の主稜線(
1,327mピーク)に到着して大休止となった
バックは赤見堂岳


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