この天候ではさすがにスキーヤーは数えるほどしかいない。リフト終点でシールを貼り終えると、今日も目出帽、ゴーグルなどの完全装備に身を固めて地吹雪の中を登りはじめる。気温は低くスキーストックのストラップも堅く凍っていた。天候の不安はあっても今日は蔵王を知り尽くしている野口さんがいるので不安はない。一時は雪が融け出して寂しくなった樹氷だったが、この2、3日風雪が続いたお陰で再び立派なモンスターに育っているようであった。しかし視界はほとんどなく、広大な雪原歩きや展望の楽しみといったことも今日は無縁である。振り返ってもすぐ後ろの人さえ見えなくなるほどで、総勢16名の団体による、さながら雪中行軍であった。
お田ノ神避難小屋を過ぎるとまもなく廃線リフト小屋に到着する。周りはまさにブリザード状態だ。これでは無理をして山頂に登っても楽しみも何もないだろうということで、ここから刈田岳への往復は潔く中止となった。その後、昼食はお田ノ神避難小屋で取ろうということになり、小屋まで引き返す。お田ノ神避難小屋へは全員窓から入った。中にはいるとさっそくストーブに火を入れてそれぞれ昼食となる。今日は野口ペンション特製の行動食や昼食がはいったパックを朝のうちにもらっており、この特製弁当が今日の唯一の楽しみであった。外は荒れ模様だったが山小屋に入っていれば極楽だ。予定した山越えができずに気持ちは沈みがちだったが、つかの間、憩いの時間を山小屋で過ごすことでみんなの気分も少しは和らいだのだろうか。その後はゲレンデを滑って行き、今日のツアーともいえないほどの短い行程もまもなく終了となる。ライザスキー場からはシャトルバスでかみのやま温泉駅まで戻り、楽しかった「蔵王ダムへのツアーと野口ペンションのひととき」の二日間が終わった。