山 行 記 録

【平成16年2月29日(日)/吾妻連峰 デコ平〜二十日平】



ホワイトアウトの西大巓山頂


【メンバー】3名(小林、柴田、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】西大巓1981m、西吾妻山2035m
【天候】風雪(デコ平は雨)
【温泉】喜多方市 「喜多の郷」500円
【行程と参考コースタイム】
グランデコスキー場リフト終点9:10〜西大巓10:20〜西吾妻小屋10:50-11:30〜西吾妻山11:45〜二十日平〜グランデコスキー場14:00

【概要】
今日の予定では会津駒ヶ岳だったが、雨の予報のため急遽、吾妻連峰へ計画を変更した。グランデコスキー場から西大巓に登り、西吾妻山から二十日平に下るルートである。今日は昨日の柴田氏に加えて、郡山の小林さんとの3人パーティである。喜多方の道の駅に設営したテントを撤収し、柴田氏と裏磐梯に向かうと、その途中から早くも雨が降りだした。裏磐梯で小林さんと合流したが、郡山も朝から雨だったとのこと。昨日の好天の半分でもいいから、今日のために残して置いてもらえたら、と思えるような天候の急変ぶりであった。グランデコスキー場へ向かっている時から、雨は雪に変わってはいたものの、気温は下がる見込みはなく、気分は少しも晴れなかった。

リフト終点では視界も悪くなり始めていた。登り始めるとトレースがそこらじゅうに散乱していたが、ほとんど昨日のものであった。途中でスノーシューを履いた3人組を追い越すと先には誰もいなくなる。樹林帯が切れると吹きさらしの状態となり、視界はほとんどなくなった。計器だけをたよりに西大巓をめざし、山頂には1時間ちょっとで到着した。休憩も取らなかったのでいつにない早い到着だったが、せっかくの西大巓山頂とはいえ、視界もない中では休む気持ちにもなれない。シールははずさずに真っ直ぐ西吾妻小屋に向かった。例年だと発達した見事な樹氷原が広がるところだが、最近の好天の影響からかオオシラビソはむき出しのみすぼらしい姿を晒している。小振りの樹林帯を抜け出ると、ホワイトアウトの中、突然目の前に小屋が現れた。ホワイトアウトではこの小屋もなかなか見つけられなくなるのでひとまず安心感が広がる。二階の冬期入口から入ろうとしたら、入口のドアがまだ壊れたままであった。当然ながら小屋の中はひっそりとし、誰も立ち寄った形跡はなかった。そそくさとした昼食だったが休んでいる間も風雪は止むことはなく、缶ビールを1本飲み終える頃は体がすっかり冷え切ってしまっていた。なかなか体の震えが止まらなくなり、こんな日にはやはり温かい飲み物が欲しかった。

小屋を出ると暴風雪の様相を呈していた。いつか同じ様な天候の中を二十日平に下ったことがあったのを私は思い出していたが、こんな時には一刻も早く山頂から下り樹林帯に逃げ込まなければならない。西吾妻山頂では話し声も聞こえないほど荒れ模様となっていて、シールを外すというちょっとした作業がとてもつらく感じた。展望も何もない山頂からは真南に方角をとり一気に下ってゆく。しかしクラストした斜面ではスキー操作も容易ではなかった。私はすぐに転けてしまい、起きあがるときに足が攣った。昨日の三岩岳でのラッセルによる疲労がまだ残っていたのだろうか。立木もない稜線では風雪が容赦なく襲いかかってくる。突っ立っているだけで体温が奪われ、一気に暗澹たる気持ちに陥った。いったん攣ってしまった筋肉はその後もなかなか収まることがなく、痛みに耐えながら叩いたり揉んだりして快復を待った。柴田氏も小林氏もその間近くで待っていてくれるので、なおさら情けない気持ちになってしまった。全く体力のなさには落胆するばかりだった。

しかし樹林帯の中にはいると雪質は思いのほか快適だった。予想外のパウダーが残っていて、昨日の悪雪を忘れるほどの快適さに3人ともなだれるようにしながら深雪を下っていった。こうしてみると山スキーでは好天よりも少しぐらい天候が悪い方がよっぽど楽しめるということがわかる。しかしそのパウダースノーも二十日平まで下ってくると雪は極端に重くなり、スキーはほとんど滑らなくなった。次第に雨が強く降り始めていて、水分を大量に含んだ雪ではまるでブレーキがかかったようにスキーが止まった。いつのまにかジャケットの内側にも雨水が浸透してきていた。

今日は展望がなかった割合に思わぬパウダーを楽しめた一日だった。また様々な雪質のオンパレードを味わった一日でもあった。昨日の春を思わせるような好天では途中敗退しなければならなかったが、今日は逆に凍傷にもかかりそうなほどの悪天候にもかかわらず予定どおり山頂を踏み、なおかつ快適なパウダーを味わえるのだから、山スキーとは実に難しいものである。重くなった雪を騙しながら二十日平を直滑降で下ってゆき、中ノ沢の渡渉地点を通過したところで大休止をとる。まだ2月だというのにデコ平では季節外れのような鬱陶しい雨が降り続いていた。


inserted by FC2 system