山 行 記 録

【平成16年1月4日(日)/南蔵王連峰 白石スキー場〜不忘山



不忘山山頂と屏風岳(右奥)


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】南蔵王連峰
【山名と標高】不忘山1,705m
【天候】晴れ時々曇り
【行程と参考コースタイム】
白石スキー場8:40〜リフト終点9:40〜不忘山13:40〜白石スキー場駐車場15:30
  
【概要】
日本海側の天候があまり思わしくなく、今日は二井宿峠を越えて宮城県に向かった。七ケ宿町を抜けると新雪に輝く不忘山が快晴の空に聳えていた。白石スキー場から不忘山へは、通常二つのリフトを乗り継げば時間短縮がはかられるのだが、今日は日頃の運動不足解消のため、スキーにシールを貼ってゲレンデを下から歩くことにした。駐車場付近の標高は約840m。下からといっても900mほどの標高差だから3時間程度で登れるはずであった。時間がまだ早いのかゲレンデは比較的空いていた。上空には快晴の空が広がり、眩しいほどの新雪を踏みしめながら、緩やかなゲレンデを登るのは実に気持ちの良いものだった。しかしリフト終点が近づくにつれてかなりの急勾配となり、このゲレンデの登りだけで結局1時間もかかってしまった。のどはカラカラに乾き、背中からは汗が噴き出していた。

リフト終点からは降雪直後だけに深々としたラッセルとなる。トレースを半分期待していたのだがまだ誰も登った形跡がなくがっかりする。ここまででかなり疲れてしまい、これでは行けるところまでしかゆけないかもしれないなと、ゲレンデを登ってきたことを少し後悔していた。ラッセルといってもスキー靴が潜る程度なのだが、一歩一歩が異様に重いのだ。ゲレンデの登りだけで体力の大半を消費してしまったようであった。平坦な雪原も徐々に勾配がきつくなって行くと少しずつ喘ぎ声が洩れてくる。いつもは右側から尾根を回り込んで山頂に向かうのだが、今日は山頂へ真っ直ぐに向かった。振り返ると自分のラッセルした踏跡が一直線に下から伸びている。深雪を一人で漕ぐのはつらかったが、自分のトレースを振り返ってみるのは何となくうれしいものだった。間違いなく晴れると思われた天候は、いつのまにか太陽が雲の陰に隠れてしまい、寒々とした風景に一変していた。

リフト終点から不忘山までは通常であれば2時間程度の行程だが、今日はなかなか山頂までが遠かった。正午近くになるとさすがにシャリバテがでてきたのか、中腹付近でどうにも力が入らなくなり、早めの昼食タイムとする。陰り始めていた空模様はいつしか雪が舞うほどになっており、風も出てきたためにツェルトを被ることにした。山頂はすでに見えなくなっていて、昼食後はこのまま下ってしまいたいほど弱気になっている。しかし、テルモスからカップラーメンにお湯を注いで、その熱い麺を食べているうちに少し元気が出てきた。ツェルトを出てみると再び青空がのぞきはじめていた。もう少しがんばってみるかと、ザックを再び背負った。シール登高を再開すると、まもなくワカンをはいた登山者が左手から現れた。深雪にワカンの一歩一歩が膝近くまで潜ってしまうので、かなり難儀しながら登っている様子だ。どうやら白石女子校山小屋の登山口からほぼ夏道沿いに登ってきたようであった。山頂が近づくに従ってヤブが濃くなってゆき、その通過に結構時間をとられた。雪がもう少し多ければみな隠れてしまうのだろうが、これではスキーで下るのはつらそうであった。

坪足の登山者は沢状の窪地を経由して山頂に向かってゆき、私は途中から進路を右寄りにとる。尾根道と合流すると、今度はスノーシューの踏跡が一人分山頂へと続いていた。その人とは山頂直下ですれ違った。見覚えのある人だと思ったら朝日や飯豊で何度か出会ったことのある宮城の○○○さんであった。少し立ち話をしたあと、スキーをいったん近くにデポする。そして岩と雪がミックスした岩場をひと登りするとまもなく不忘山の山頂だった。歩き出してからちょうど5時間。一時はあきらめかけた山頂だったが、今日は難儀しながら登っただけに喜びもひとしおであった。シュカブラに覆われた山頂は荒涼とし、標識はエビのシッポがびっしりと張り付いていてよくわからない。初めはガスと風が吹き荒れていて展望も何もなかったが、そのガスも少しずつ晴れてくると、屏風岳や水引入道がうっすらとガスの中から浮かび上がった。しかし、すっきりとは晴れることはなく、何枚かの写真を撮り終えたところで早々に山頂を後にした。

デポ地点まで戻って早速シールを取り外す。山頂直下はブッシュがひどくてなかなか快適な滑降とはゆかなかったが、ところどころに開けた斜面を拾いながらターンをして下った。朝方のパウダースノーはすでになく、陽射しに晒されて雪質はかなり重くなっていた。その重い雪に足を取られないようにとバランスを取らなければならないのだが、耐えきれなくて途中で何回かこけたりした。それでも潅木の間を縫いながらの深雪の滑降はやはり楽しいものだった。なだらかな斜面をのんびりと下って行くとリフト終点まではまもなくだった。ヤブ漕ぎほどではないものの、いささか混み入ったブッシュにうんざりしながら林の中を抜け出ると、リフトの降り場が目前に迫っていた。結局、今日不忘山に登ったのは単独行の三人だけであり、山スキーは私だけであった。西に傾きはじめた陽射しは早くも暮れかけており、ゲレンデを滑るスキー客もまばらになっていた。


不忘山直下から山頂を仰ぐ



不忘山の裾野の緩斜面を快適に下る


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