山 行 記 録

【平成11年11月22日〜23日/朝日連峰 古寺鉱泉から大朝日岳】



熊越付近からの大朝日岳[1999.11.23撮影]



【概要】
また、前回とおなじコースで大朝日岳を登る。
約3週間前はまだ初冬の雰囲気で、冠雪したばかりの朝日連峰を目的にしたが、11月下旬の山行となった今回は当然ながら完全な冬山である。ちょうど先週の寒波による積雪がだいぶ残っていて、また明日まで好天が予想されていることから朝日の雪山に登れる最後のチャンスと思い、冬山の道具をザックに詰め込んだ。
今年、単独で飯豊・朝日連峰に登れるのは今週くらいが限界だろう。


【天候】22日(雨のち曇り)、23日(晴れ)

【山行形態】避難小屋泊

【メンバー】単独

【参考コースタイム】
[1999.11.22]
古寺鉱泉9:40〜一服清水10:55-11:00〜三沢清水11:35-11:45〜古寺山12:15-12:30〜小朝日岳13:05〜大朝日岳避難小屋15:15

[1999.11.23]
大朝日岳避難小屋8:45〜小朝日岳10:15-1035〜古寺山10:55-11:00〜古寺鉱泉12:45

 
 朝、大江町から西川町に入ると雨が降りだしてきた。寒河江ダム近くまでくると少し強く降ってくる。今日は高気圧に覆われるはずなのに正面の空を見上げると雨雲が広がっている。古寺鉱泉の駐車場でしばらく雨が小止みになるのを待ってから出発した。
前回、3週間前に来たときは宿の周辺では紅葉が真っ盛りだったが、さすがにこの時期になると木々はすべて葉を落ち尽くしていて、うらさびしい雰囲気だ。
古寺鉱泉から登り始めるとまもなく登山道の周辺に雪が現れる。先週降った雪の名残だろう。以前とは積雪の量もだいぶ違う。

 今日はやけにザックが重く足がなかなか上にあがらない。考えてみるとカメラ2台に、三脚、無線、中途半端にガスの残ったカートリッジが5個!。まあ、ガスは雪を解かして水をつくらなければならないのでよけいに入れてきたのだが、通常より5kg以上もザックが重いのだった。ハナヌキ分岐から急登をあえぎながら登る。三沢清水からもさらに急坂が続く。しかしブナは葉をすっかり落としていて樹幹の間から古寺山の稜線が見えるので、夏山とは違った景色を眺めながらの登りもなかなか楽しい。

古寺山で三脚を立てて写真を撮っている登山者が1人。狭い山頂にザックから取り出した物をいっぱいに広げている。ガスコンロやコッヘルもあってちょうど昼食を終えたところだったようだ。あいにく、大朝日岳はガスに隠れていて見えない。どうやらここで晴れるまでねばってみて下山するらしかった。
古寺山からは雪の上の踏跡は二人分。小朝日岳の巻道へと続いている。トレースがなかったが私は直登コースを登る。この辺で積雪は20〜30cmほどでたいしたことはない。しかし雨上がりのためか雪が湿っていてつぼ足が重かった。

熊越を過ぎて稜線に飛び出すとさすがに風が強い。小朝日までとは比較にならないくらい冷たい風が吹いていた。ここは夏道ならば快適な稜線漫歩を楽しめるところだが、冬は逆に遮るものがない吹きさらしの稜線になるのだ。また、今日は日が差すどころか薄雲が広がっていて夕暮れのように暗い。雪が混じれば風雪にもなるような天候だった。途中で男性1人が下ってきたのにすれ違う。銀玉水まで行ったが膝を痛めて山頂はあきらめたのだという。この時間でこれから戻るより小屋まで行った方がよいのでは?と誘ったのだが今日は日帰りで来たとのことだった。そこからはもう1人の者とおぼしきトレースが先に続いている。しかし、雪道ではこのトレースがあるのとないのとでは、歩きの苦労が大分違う。踏跡があるだけで後ろを歩く者はかなり楽に歩くことが出来るのだ。
やっとたどりついた銀玉水は完全に雪の下に埋まっていた。予定はしていたが水は雪を解かすしかないようだった。
小屋まではもうわずかの距離。最後の力を振りしぼって急登に耐える。3週間前よりはずっと積雪が豊富だったが、不思議にここの急坂は歩きやすかった。強風と氷点下の気温のためか雪質が結構堅く締まっているのだった。
登り詰めると中岳と西朝日岳がもう目の前だった。小屋もまもなくだ。真っ白い雪に覆われた稜線や山肌はさすがに美しく目を見張った。春山の残雪とは違い厳しい冬山の姿だった。

大朝日岳避難小屋に到着したときにはもう足がもつれるほどだった。3週間前は古寺鉱泉から4時間もかからず、疲れもさほど感じなかったのだが、今日は6時間近くかかっている。雪道と重荷のせいとはいえ体力のなさにがっかりだった。
予想どおり小屋には先客が1人、食事の準備をしてるところだった。私は2階にザックを下ろした。偶然にも出身地は私と同じだというので食事後に酒を酌み交わすことにした。
窓の外を見るとときどき日が差すものの山頂は見えなかった。大朝日岳山頂へは明日登ることにした。熱いコーヒーを淹れたり、ウィスキーのお湯割りを作るのだが小屋の室温はかなり低く、なかなか体が温まらない。このままでは眠れそうもなく湯たんぽを作ってシュラフにもぐり込んだ。寝る前に外に出てみるとガスがすっかり晴れていて、満天の星と月が煌々と明るかった。たぶん山形市や寒河江市だろうか。街明かりが遠くにきらめいている。風が強く真冬のような寒い夜だった。


熊越付近から小朝日岳を振り返る [1999.11.22撮影]



日の出前の中岳と西朝日岳 [小屋の前から撮影]


中岳、西朝日岳に朝日が差す


小朝日岳(右)への縦走路 [小屋の前から撮影]


中岳


朝日が当たる大朝日岳避難小屋


大朝日岳山頂から小屋と中岳(奥は以東岳)


大朝日岳山頂からの祝瓶山(その上の白い稜線は飯豊連峰)

翌日、6時過ぎに目が覚めて外を見ると夜明け前でまだ薄暗かったが、写真を撮るために外に出る。防寒着にゴアテックスのコートを着て寒さ対策をして出たのだが、強い風に晒されてたちまち体の芯まで冷え切ってしまった。相当の寒さである。しかし、今日は快晴が望めそうだった。ご来光を拝んだ後で山頂まで往復する。雪は堅く凍っているがなんとかキックステップで登れる。山頂からは見渡す限りの展望が広がっている。祝瓶山が縦走路の南端に屹立していた。こんな天候はそうないだろうと思い、手当たり次第にカメラのシャッターを切る。結局、小屋に戻って朝食の準備を始めた頃はすでに8時になっていた。

今日は時間が経つほどに天候が良くなってきていた。小屋をでて熊越までの稜線では途中途中で立ち止まっては三脚を立てた。下山するのがもったいないほどの天候だった。小朝日岳の山頂へはまた直登コースをとる。登山者が二人、やはり三脚を立てて撮影を楽しんでいた。皆、古寺鉱泉から朝登ってきての日帰り登山のようだった。
下りの登山道はまるで春山の雪道の下りのように快適だった。早くも融けだした雪道を滑るように下る。めずらしく太股が少し痛かったが、早くも冬山の厳しさに少しだが触れたこととザックの重荷に耐えたことが不思議にうれしいような、複雑な思いだった。
古寺鉱泉からいつもの西川町水沢の「水沢温泉館」で2日間の汗を流した。快晴の秋晴れの下で駐車場は観光客の自動車で溢れていた。



古寺山から小朝日岳と大朝日岳(右奥)

【300mmの望遠レンズで撮影】


大朝日小屋付近からの袖朝日岳(1685m)
雪崩に磨かれた岩壁は荒川の源流へと切れ落ちている


古寺山山頂から見る雪を抱いた美しい以東岳(1771m)
こうして300mmで見ると迫力があります


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