山 行 記 録

【平成15年12月29日(月)/吾妻連峰 天元台〜中大巓



ツェルトをかぶって昼食休憩(カモシカ展望台直下で)


【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】中大巓1,964m、
【天候】雪
【行程と参考コースタイム】
北望台10:30〜カモシカ展望台11:10〜中大巓11:20〜樹林帯11:30-11:50〜北望台〜天元台ロープウェイ山頂駅12:40
  
【概要】
年末というのに気温が異常に高く、平地では雨模様であった。今日の山はあまり期待できる天候ではなかったが、テレマークスキーの足慣らしを目的として西吾妻山に向かった。ところが天元台ではかなりの強風が吹き荒れており、リフトを乗り継ぐに従ってガスも次第に濃くなってゆく。リフト終点の北望台ではほとんど視界がなくなっていた。今日は行けるところまで行くしかないかもしれないな、といささか失望しながらリフト監視所に登山計画書を提出する。監視員に聞いてみたところ、今日の入山者はスノーシューのグループと私だけの二組だけであった。そのスノーシューの6人はリフト終点で準備中だっだが、作業を終えるとまもなく西吾妻をめざして登っていった。6人組の中に用具の詳しい説明をしている人が一人いて、どうやらガイドを伴ったツアーのようであった。

シール登高によるスキー登山は久しぶりである。天候はいまひとつだったが、約7カ月ぶりのテレマークスキーに心は弾む。積雪はゆうに2m近くはあるだろうか。先に登っていったスノーシュー組の踏跡は40〜50cmほどの深い溝になっている。昨日登った人もいるようで、6人組はその踏跡をたどっているようであった。最初は私もこのトレースを利用させてもらったが、まもなくこの6人組に追いつきそうになり、ルートからは逸れて新雪を漕いだ。降雪直後の雪は膝上までもぐるので普段ならば結構つらいラッセルだが、今日はシールによる登りがいつになく新鮮で、このラッセルが少しも苦にならなかった。

しばらくすると樹林帯を抜け出して吹きさらしの稜線に出た。カモシカ展望台はまさしく強風とホワイトアウトの世界で、標柱にはエビのシッポがびっしりと張り付いていた。稜線の風雪の厳しさがひしひしと伝わってくるようだ。ほとんど視界がない状態では西吾妻山はあきらめるしかなく、中大巓を今日の山頂と決めてさらに強風の中を進んだ。しかしなにも見えない中では不安が増すばかりで、少し勾配が緩くなった付近から引き返すことにした。山頂は目前だったが、単独ではこの辺が今日の限界であった。引き返すと風が正面からぶつかってくる。シールを外している余裕もなく、そのまま自分のトレースを確認しながら下るだけだったが、ビシビシと頬を打つ雪はまるで石のつぶてのようでもあり、背丈の低い樹木は風を遮るためには少しも役にたたなかった。

風雪は渦を卷くように荒れ始めていた。カモシカ展望台付近の樹氷の下で昼食をとろうとしたがとても休めるような状況ではなく、深い樹林帯まで一気に下った。すぐにツェルトを出して頭から被るとようやく人心地がついた。そしてテルモスからお湯を注いでカップ麺を作る。今日のような風雪のときはツェルトほどありがたいものはない。風が防げるだけで安心感が全然違うのだ。簡単な昼食だったがツェルトに包まれていると、それだけで山に抱かれているような心境になった。

ツェルトを撤収し、シールをはずしていると先ほどのスノーシュー組が下ってきた。悪天候の中ではいくらも進めずに、カモシカ展望台付近から引き返してきたとのことであった。北望台に戻っても強風と視界の悪さは変わらなかった。ゲレンデには数えるほどのスキーヤーしか見あたらず、第2リフトと第3リフトは強風のため、早くも運休とするアナウンスが流れていた。予定していた湯ノ平コースは滑走禁止なのでロープウェイで下ることにした。第1リフトもすでに停まっており、様子を伺っていたスキー客は、納まる気配をみせない天候にあきらめたのか、次々にロープウェイ乗り場へと引き返す人が目立った。今日は時間的に足慣らし程度だったが、冬山の厳しさをつかの間味わった一日だった。


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