山 行 記 録

【平成15年9月5日(金)/不動沢コースから皇海山】



皇海山山頂


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】足尾山塊
【山名と標高】皇海山(すかいさん)2,144m
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
自宅2:00=(R121,120経由)=皇海橋8:40
 皇海橋8:50〜不動沢のコル10:10着/20発〜皇海山10:50着/11:30発〜不動沢のコル12:00〜皇海橋13:00

【概要】
栃木県西部と群馬県の境に位置する皇海山は、「笄(こうがい)さん」と呼ばれていた山が、いつしか皇開山ともかかれ、それが皇海山となり、そしてスカイサンと誤読されて、現在に至っているのだという。難読の山名とはいえ、字面といい、音読したときの響きもいいことから以前から気になっていた山で、予定では一昨年に登ろうとして一度現地まで出かけたのだが、不動沢コースにいたる栗原川林道が土砂崩れ直後のためゲートが閉じられており、その時は入口でやむなく引き返している。この栗原川林道はつい最近まで通行不能となっていたことから延ばし延ばしになっていたものである。

皇海山は栃木県側の銀山平から庚申山荘に一泊して庚申山経由で登るのが一般的だったが、群馬県側の栗原川林道が開通してからは短時間で登れる不動沢コースの方が登山者も圧倒的に多くなったという。たしかに標高差は800mほどしかなく、山頂までの標準コースタイムは3時間弱と、日帰りで十分すぎるほどだが、問題はアプローチの林道にあった。林道は約20kmとかなり長く、深い渓谷をへつるように切られた狭い道には至るところに落石もあり、最後まで緊張の運転を強いられる。車は時速10〜20kmの速度でしか走行できず、うんざりした頃になってようやく皇海橋のたもとの駐車場に着いたときには、まるでひとつの山を登り終えたときのような疲労感が残った。この林道だけできっかりと1時間もかかってしまい、雨の時は絶対に通りたくないほどの悪路であった。

皇海山の駐車場は予想外に広く、林道の悪さとは対照的だった。車が6〜7台ほど駐車中だったが、みんな既に登ってしまった後らしくひっそりとしている。登山口にはりっぱなトイレがあり、皇海橋を渡ると登山口を示す案内板や標識も大きなものが設置されている。、さすがに深田百名山ということで整備が行き届いているようである。林道を歩くとまもなく標識があり、矢印に従って左の山道に入って行く。少し先で沢に下りて行き、そこからは不動沢沿いの道がしばらく続いた。沢を渡渉したりして緩やかに登って行くと、まもなく登山者が3名、早くも下ってきた。早朝5時半に登り始めたらしかったが、早すぎる下山に驚くばかりだ。中間地点を示す標識を通過し、さらに沢沿いの道やガレ場の登りを繰り返しながら高度を稼いで行くと、やがて沢を離れはじめ、コルまでは垂直のような急斜面を登るようになった。ロープなどもあってきつい登りだが、一方では気持ちの良い汗が流れた。薄暗かった樹林帯も少しずつ明るくなり、登り切ったところが不動沢のコルだった。ここは鋸山と皇海山の鞍部になっていて、前方のギザギザした稜線の一角には鋸岳が聳えている。コルは涼しい風が吹き抜ける小広いところで休憩するには最適な場所だ。ちょうど山頂から2名下ってきたところで、行動食などを食べながら3人でしばらく休憩をとった。

コルからは群馬、栃木の県境尾根の最後の急登にしばらく汗が流れた。途中、枯れ木と笹原が広がり展望が開けたものの、山頂が近づくにつれてまた樹林帯となり展望がなくなってしまう。オオシラビソが目立ちはじめ、急登も少し緩やかになるとようやく皇海山の山頂に着いた。コルからはちょうど30分であった。山頂には単独の登山者が2名休んでいるだけの静かな山頂であった。ここには立派な標識や展望盤があるものの、周りを樹林が邪魔をしているので展望はあまりよくない。「国境平」と書かれた標識に沿って北に10mほど下ると、ここでは展望が少し開けており木立の間からは日光白根山の大きな山塊が見えた。その左奥には燧ヶ岳と平ヶ岳がうっすらと空に浮かんでいたが、展望盤にあった至仏山や谷川岳は雲に隠れていて見えない。目障りな樹林さえなければここは抜群の展望が楽しめるところなのにと、ついついぼやきたくもなる、そんな皇海山の山頂であった。

山頂に戻ってみると二人の登山者は下山してしまった後で、すでに誰もいなくなっている。静かな山頂を独り占めにしたような気分になり、銀マットを敷いて横になると穏やかな9月の空が広がっていた。澄み切った青空には箒でさっと掃いたような薄い雲が浮かんでおり、それはいかにも秋の風情を感じさせた。私は柔らかい日差しが心地よくて、この皇海山の山頂からすぐには下山する気持ちにはなれないでいた。


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