山 行 記 録

【平成15年8月16日(土)/朝日連峰 ナカツル尾根〜大朝日岳】



雲海が広がる大朝日岳山頂
遠方の山並みは飯豊連峰


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】大朝日岳1,870m
【天候】曇り(山頂は晴れ)
【温泉】西村山郡朝日町「いもがわ温泉」150円
【行程と参考コースタイム】
  
朝日鉱泉7:15〜出合8:35〜長命水9:35〜大朝日岳11:30着/12:00発〜長命水13:00〜出合13:45〜朝日鉱泉15:10

【概要】
山形県は今月二日に梅雨明けしたのもつかの間、その後も夏らしい日はほとんどなく、お盆に入っても連日雨が降り止まないでいる。しかし今日はその雨も一休みするとの予報であり、一部には晴れ間も広がるだろうというので、久しぶりに朝日鉱泉に向かった。大朝日岳への直登コース、ナカツル尾根は約3年ぶりである。朝日鉱泉の駐車場は既に満杯で、途中の林道沿いにも数え切れないほどのマイカーがそこかしこに駐車中だった。天候はいまひとつでも夏山の盛りとあって、すでに県内外から多くの登山者が入山しているようであった。

しばらく沢音を聞きながら朝日川の沢沿いの山道を歩く。標柱や木製の橋などはいつのまにか新しく整備されていて、どことなく新鮮さが漂う登山道である。小さなアップダウンを繰り返し、山腹を卷きながらいくつかの橋と吊橋を渡るとまもなく出合の標識だ。すぐ先で四箇所めの吊橋があり、渡りきったところからようやくナカツル尾根が始まる。今日は日帰りなのでザックは軽かったが、ここからはほとんど一本調子の急登が山頂まで続くので、登り始めると背中や額からは一気に汗が噴き出し、汗拭き用のバンダナもすぐにグショ濡れとなった。しかし予報に反して天候は思わしくなく、しばらくすると小雨までが降り始めてしまい、やはり山の天気は予報どおりとは行かないものだと失望する。さらに朝方まで降り続いた雨のために、滑りやすい泥道のようなところもあって気分はますます盛り上がらなかった。長命水の水場では水を汲みながら今日はじめての休憩らしい休憩をとった。周囲にはガスが立ちこめ夕暮れのような薄暗さに包まれていて、生あたたかい空気が蒸している様は梅雨そのものだった。

水場を過ぎても胸を突くような急坂はいささかも緩みをみせることなく続く。何回も歩いているナカツル尾根だが、不思議に覚えがないところばかりなので妙な感覚である。特徴のない山道といえばそれまでだが、あまりにつらい急登にそれほど記憶に残っていないのかもしれなかった。涼しいガスの中で歩きやすかったが、今日は両足が攣ってしまいそうなほどの疲れを感じていた。樹林帯ではほとんど見あたらなかった高山植物は、森林限界を超えるあたりからちらほらと現れ始め、道端に咲くミヤマリンドウ、アキノキリンソウ、ハクサンイチゲ、ミヤマトリカブト、ハクサンフウロなどの可憐な花々を愛でていると、疲れ切っていた気持ちが少し和らいでくるようだった。

視界の悪さは相変わらずだったが、小雨はいつのまにか止み、徐々に気温が上がり始めていた。登山道も乾いた道となり歩きやすくなっている。そして山頂がもう間もなくと思われる頃からガスが薄らぎ始め、上空の青空が透けて見えるまでになり、やがて澄み切った青空とともに大朝日岳が正面に現れた。雲の表と裏の世界の違いにあらためて驚くばかりで、山頂は信じられないほどの快晴に包まれていた。みわたせば新潟県側が一部晴れている意外はほとんど真っ白い雲海に覆われている。雲海から飛び出ているのは飯豊連峰と吾妻連峰の一部、それに鳥海山の頂きだけでそれ以外は全く雲海に隠れているのである。これだから山はやめられないのだなあと思わずにはいられなかった。山頂では10人前後、休憩していたのだが、みんなこの光景にただ言葉もなく眺めているようであった。

山頂の一角の草むらに腰を下ろして早速昼食とする。今日はめずらしくコンビニで仕入れたざるソバのセットを広げての”豪華版”である。アイスボックスで冷やしてきたので、麺もタレも冷たくて初めての「ざるソバセット」はなかなかグッドであった。山頂では秋のような爽やかな風が吹き、うたた寝でもしそうなほどの柔らかい日差しが降り注いでいた。汗でびしょぬれだったバンダナも広げていたら瞬く間に乾いている。見渡す限りの大雲海を眺めながらのこの時間は、まさに至福のひとときで私は時間の経つのを忘れそうだった。しかし今日は皮肉にも所用のために夕方まで戻らなければならないのである。食後は時間を惜しむかのように、ザックを枕にして横になったのもつかの間で、たちまち予定時刻はやってきてすぐに腰を上げなければならなかった。せめて1時間だけ早く登り始めていればなあと反省しつつ、後ろ髪を引かれる思いで大朝日岳山頂を後にした。




大朝日岳山頂が目前
ナカツル尾根から



山頂で憩う登山者
向こうの山並みは袖朝日岳



大朝日岳から平岩山に向かう登山者


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