山 行 記 録

【平成15年8月7日(木)〜8日(金)/飯豊連峰 大日杉〜飯豊本山】



モルゲンロートの中、登山者が早立ちをする
(本山テン場から 午前4時30分)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、テント泊(飯豊本山テン場)
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】地蔵岳1538.9m、飯豊本山2105.1m
【天候】7日(曇り時々晴れ)、8日(晴れ時々曇り)
【温泉】西置賜郡飯豊町「白川荘」300円
【行程と参考コースタイム】
(7日)大日杉7:15〜ザンゲ坂7:40〜長ノ助清水8:00〜滝切合940〜地蔵岳10:05〜目洗清水10:56〜御沢分岐11:50〜
    切合小屋12:40/50〜草履塚1315〜本山小屋テン場1415(泊)
(8日)(早朝、本山を往復する)テン場9:00〜草履塚9:45/10:15〜切合小屋10:35〜御沢分岐11:25〜
    目洗清水12:10/20〜地蔵岳13:00/10〜大日杉14:40

【概要】
先週に引き続いての飯豊連峰である。先週末の本山小屋では大混雑にうんざりだったことから無性にテントに泊まりたくなり、今回は同じ本山小屋への幕営を目的にして少々重いザックを担ぐことにした。予定では二泊もできるようにとパッキングしたものの、一方では、大型の台風がこの東北地方を縦断する予報もでていることから、この台風次第では日程の変更も視野に入れての山行になりそうであった。

ウイークディということもあって大日杉小屋前の駐車場にはマイカーが3台しか見あたらない。登山計画書をポストに投函し、薄雲が広がる不穏な空を見上げながら早速山道に入った。二泊分の食糧やアルコールなどを入れたザックは背負うと両肩に食い込むほどである。ゆったりとしたペースを保ちながらもザンゲ坂のクサリ場を登り切るとさすがに汗が噴き出した。時々降り注ぐ日差しは膚に突き刺すほどで、途中で立ち寄った
長ノ助清水の冷たい水には生き返る思いがした。

御田付近ではいつのまにか新しい道ができていて、さらに登るともう1ヶ所で新道が切られていた。残雪期以外で大日杉から登るのは久しぶりなので実に新鮮である。ここはザンゲ坂をのぞけば特に危険な個所もなく、急坂といってもそれほどの勾配があるわけでもないので比較的登りやすいコースだ。今日のような重荷を担いでいるとあらためてこの大日杉コースの登りやすさが実感できるようだった。ダマシ地蔵のピークを卷くとテン場のような
滝切合につく。ここからは鍋越山を経て小国町の伊佐領に下る登山道があったのだが、今では廃道になってしまい、ちょっと覗いたが一歩も足を踏み入れることもできないほどの深いヤブに覆われていた。滝切合からは潅木のトンネルをくぐり、ひと登りすると地蔵岳に到着した。

山頂にはガスが立ちこめているので視界はなく、正面に聳えるはずの飯豊本山もみえなかった。しかし日差しがない分だけ涼しいのが幸いだ。この周辺ではセンジュガンピの白い花がところどころに群落を作っている。地蔵岳を下りはじめてまもなくすると切合小屋泊りという新潟からの3人組を追い越した。目洗清水のテン場では一面ニッコウキスゲのお花畑が広がっていたが、あいにく正面の飯豊山はガスに隠れて見えない。御坪ではやはり切合小屋までだという7人ほどのグループが腰を下ろして休憩をとっているところだった。

御沢別れからは種蒔山に向かい再び急坂を登る。やがて右手から切合小屋が見えてくると稜線も間もなくである。途中の水場では融雪水が豊富に流れており、汗だくの顔を洗い水筒に水を汲んだりしながら小休止をとった。水場からは種蒔山をトラバースするとようやく縦走路に合流する。切合小屋は平日とあって実に静かだった。軒下には10人分程のザックが並べられており、テン場も4張りのテントがあるだけで人の姿は余り見えなかった。草履塚を登っていると高校の団体らしい一団が列をなして下ってくるのが見えた。みんな軽装で本山を往復してきたようであった。

登山口から飯豊本山のテン場まではちょうど7時間かかって到着した。意外にもテントはひとつもなく幕営している人は他にはいなかった。やはり台風が影響しているのだろうか。御前坂を登っているときから雲行きが怪しくなっており、今にも雨が降り出しそうな空模様のため、急いでテントを張ることにした。いつもは2〜3人用のゴアのテントしか持たないのだが、今回は別の一人用テントのフライシートも持ってきている。寸法が少し合わないのはしかたがないものの、これで少々の雨が降っても快適なキャンプが出来そうであった。水場からよけいなくらいの水を汲み、テント内をひととおり整理するとようやく一息をつく。落ちついたところで早速冷やしたビールを飲み乾いた喉を潤した。そして夕方まではラジオを聴いたり文庫本を読んだりしながらのんびりと過ごした。見ていると濃霧が次々と湧いては流れて行く。その夜は時々小雨が降った。久しぶりに聞くテントを叩く雨音が心地よかった。


翌日は4時過ぎに起床。テントから出てみると東の空が赤く染まり始めていた。周囲はまだまだ薄暗かったが、しばらくすると本山小屋から女性が一人下ってきて、今日は川入に下るのだと言って早立ちしていった。荘厳な日の出が終わると空全体に厚い雲が広がった。私は天候が崩れない内にとサブザックを持ち、ひとまず本山を往復してくることにした。本山小屋を通過する頃から青空が見えるほどに晴れてきたために、ところどころで立ち止まっては手当たり次第に写真を撮った。ダイグラ尾根はまぶしいくらいの朝日を浴びて輝き、大日岳は稜線から少しずつ朝日に染まって行く。壮麗で厳かな朝のドラマは見ていて飽きることがなかった。

いったんは晴れると思われた天候も、テン場に戻るとたちまちガスに覆われてしまって視界はなくなった。目前の本山小屋さえも全く見えなくなりやがて小雨まで降りはじめてきた。台風が近づいているのをひしひしと感じるばかりで、翌日は間違いなく台風の直撃を受けそうである。荒れ模様の中を下山するわけにもゆかず、朝食を食べたら下山することにした。今日中に下ることに決めてしまうと少しも急ぐ必要はなくしばらくテント内でのんびりとする。小雨模様の中、時々登山者が目の前を行き交った。昨夜、切合小屋に泊まった人達が本山を往復しているようであった。その後雨が少し小振りになったのを見計らって急いでテントを撤収し9時にテン場を出発した。

ガスで何も見えなかったが、御前坂を下る途中から少しづつ視界が戻ってくる。分厚い雲から抜け出したようで、見下ろせば草履塚へと続く縦走路が美しい。小雨はまだ降り続いていたものの雨具を着るほどではなく、吹く風が涼しいので気持ちの良い山の朝であった。草履塚ではガスが晴れて大日岳が再び姿を現わし、振り返れば磐梯山が雲の上に浮かんでいる。久しぶりに大日岳から御西岳、そして飯豊本山へと続くなだらかな稜線を眺めていると、にわかに下るのが惜しくなってしまい草履塚の山頂では30分ほど休憩した。

切合小屋では大日杉から来たという登山者が一人休憩していた。昨日張られていた4張りのテントはきれいに撤収されて、すでに全員下山した後であった。今日は昨日とは違って展望を楽しみながら下れるのがうれしい。地蔵岳までは飯豊本山を眺めながらの尾根歩きが続くので退屈することはなかった。目洗清水では喉を潤すために久しぶりに水場まで下ってみた。稜線から下り2分、登り3分である。清水は本当に目を洗う程度しか出ていなかったが冷たくて美味しい水だった。地蔵岳ではアンパンを2個食べて小休止。この付近で昨日の登りで出会った7人組と3人組に追いついてしまい、私は先に行かせてもらった。長ノ助清水では4リットルの水を汲み自宅へのおみやげにした。ザックは再びずっしりとした重さになったが、尾根を下れば程なくザンゲ坂で、大日杉の登山口はそこからまもなくだった。




大日岳のモルゲンロート
(午前5時)



本山小屋付近から見る朝の飯豊本山
右奥は飯豊の主稜線



ダイグラ尾根に朝日が差す
(午前5時5分)



ニッコウキスゲと大日岳



飯豊本山から見るダイグラ尾根
(午前5時15分)



本山にテントを設営する
(二日目の朝)



切合付近の雪渓



目洗清水のテン場から飯豊本山を仰ぐ
(12時10分)


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