山 行 記 録

【平成15年7月12日(土)/丁山地 甑山】



男甑山頂
奥に山名の謂われとなった男甑のシンボル、烏帽子岩が見える



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】丁山地
【山名と標高】甑山(こしきやま)、女甑979m、男甑981m、
【天候】曇りときどき晴れ
【温泉】山形県舟形町「若あゆ温泉」350円
【行程と参考コースタイム】
登山口10:20〜名勝沼10:50〜甑峠11:05〜女甑11:45〜コル12:08〜男甑12:30-12:45〜コル13:00〜名勝沼13:20〜登山口13:50

【概要】
甑山は秋田と山形の県境に位置し、鳥海山の東側に連なる丁山地と呼ばれる一角の山である。男甑(おこしき)と女甑(めこしき)からなる双耳峰で、標高は大したことはないものの急峻な地形を考えると決して
初心者向きの山ではない。コルを基点にして男甑、女甑それぞれに登るコースが一番手軽そうだったが、今回は、江戸時代に秋田各藩の参勤交代の道として使われたという、甑峠を通る縦走コースを登ってみることにした。

登山口は林道の工事中のため重機が入っていたり飯場があったりで、はっきりした標識もなくちょっとわかりづらくなっていた。他に登山者が入山している気配もなく、半信半疑のまま路肩に車を止めた。しかし、山道らしきところを進むと、少し先で名勝沼を示す看板が道の傍らに現れ、取りあえず登山道であることがわかって安心する。昨日からの雨で水量が増している大きな二つの沢を渡るとT字路の分岐に出た。分岐には案内標識が立ち、右は県境尾根を経由して男甑に登る道で、左が名勝沼経由で甑峠に続いている道であった。ここからは女甑が目前に聳えているはずだったがガスに隠れて中腹から上は見えない。名勝沼までの道は雨水のため水路同然になっており、その名勝沼の水面も登山道に溢れ出している。コルへの分岐を右に見送り名勝沼を半周すると、苔むした大きな石が目立つ原生林のような薄暗いブナ林に入った。

甑峠から真っ直ぐに下れば山形県の真室川町で、女甑へは右手の急坂を登って行く。付近は確かに古の峠道を感じさせような雰囲気があって、多くの旅人が往還したであろう往時に思いを馳せてみたりするのは楽しかった。尾根に取り付くと女甑までは息をもつかせぬほどの急登が続く。いくつものフィックスロープや木の根につかまったりしながらのまさに怒涛の登りだ。蒸し暑さも手伝って汗が止めどもなく流れた。半分ほど登ると背丈を超すような草ヤブが現れ、雨上がりのために衣服がずいぶんと濡れてしまった。ヤブ道に閉口しながらようやくたどりついた頂上は、一坪ほどの広さがある見晴らしの良さそうな場所だったが、周囲は濃い霧に覆われて全く視界がなかった。

小休止後、男甑をめざして下り始める。心配していたヤブは最近刈り払いされたのか、この先きれいに整備されていてほっとする。こうしてみると登山道の管理が行き届いているのは秋田側のみのようである。女甑と男甑のコルといってもここには標柱など別になく、枝にビニールテープが卷かれているだけである。このコル付近でカモシカがすぐ目の前を通過してゆくのを目撃したが、写真を取ろうとしたらたちまち白い霧の中に見えなくなってしまった。男甑への登り返しも女甑に劣らず急な登りだった。ひたすら汗を流していると途中で霧が晴れだし下界が見え始めた。といっても晴れたのは山形県側だけで秋田側は相変わらず白い闇に覆われたままである。しかし今まで塞いでいた気持ちがいっぺんに明るくなるのだからやはり展望は一番だなあと思わずにいられなかった。

登り返した男甑の山頂には三角点が設置されていた。ここも女甑と同様に狭い山頂で、南側がすっぱりと切れ落ちているのが少し恐くなるほどだ。女甑ではほとんど無かった展望もここまで来る間にだいぶ視界も戻り、県境に連なる山々や山間部の集落までがはっきりと見えた。山頂からは男甑のシンボルという烏帽子岩がすぐ目前で、天に向かってそそり立つその自然の造形の妙には驚くばかりであった。

男甑からは登ってきた道を引き返すとその途中からは名勝沼が眼下に小さく見えた。沼はほとんど真下に見えるくらいだからコルまではかなりの急勾配なのだろう。山頂から15分でコルへ戻り、そこからは左手に折れて名勝沼へ向かった。急坂は次第に雨で水かさが増した沢状の道となり、スリップしないように注意しながら下らなければならなかった。T字路の分岐点まで戻るといつのまにか上空には青空が広がっている。辺り一帯には梅雨明けを感じさせるような夏の暑い日差しが照りつけていた。




帰路になって、ようやく姿を現した女甑


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