山 行 記 録

【平成15年6月21日(土)/朝日連峰 日暮沢〜竜門山〜大朝日岳】



中岳から仰ぐ大朝日岳
ようやくガスが晴れだした頃



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】清太岩山1465m、ユーフン1565m、竜門山1688m、
西朝日岳1814m、大朝日岳1870m、
       小朝日岳1647m、古寺山1501m、
【天候】曇りのち晴れ
【温泉】大井沢温泉「湯ったり館」300円
【行程と参考コースタイム】
日暮沢小屋6:50〜ゴロビツ清水8:00〜清太岩山9:00〜ユーフン9:30〜竜門山10:00〜竜門小屋10:10-11:40(停滞)〜
西朝日岳12:30〜大朝日小屋13:30〜大朝日岳往復〜小屋発13:50小朝日岳14:50古寺山15:20〜ハナヌキ分岐16:00〜ハナヌキ峰〜日暮沢小屋17:40

【概要】
今日は日帰りの朝日連峰である。少し長い距離を歩きたくて久しぶりに日暮沢からの周回コースにした。曇り空の天候にもかかわらず日暮沢の小屋前にはすでに10数台ものマイカーが駐車中で、早めに準備をしていた14、5人のグループが大きなザックを担ぎながら登ってゆくところであった。昨日まで降り続いた雨はようやく朝方になりあがったが、まだ日差しが降り注ぐほどではない。徐々に晴れ間も広がるのを期待しながら日暮沢小屋を出発した。

尾根に取り付くとしばらくヒメコマツの急坂が続く。周囲がブナ林に変わる頃から登山道にはショウジョウバカマ、ミツバオウレン、ハクサンイチゲ、マイズルソウなどの花々が目立ちはじめた。途中で団体を追い越し、その後もゴロビツ清水で二人組を、さらにその先で夫婦者を追い抜く。樹林帯を抜けると急に風が強まった。潅木帯の道の両側にはイワハゼがびっしりと咲いている。なだらかな坂道を登ると、約2時間ほどで清太岩山に到着したが、山頂のあまりの風の強さに汗も引っ込んでしまい、ここからは長袖のシャツを着た。正面にはユーフンが目の前だが、流れ出したガスのために周りの景色がほとんど見えない。ユーフン通過もホワイトアウトの中で視界はなかった。ときどき強風に煽られて吹き飛ばされそうになり、あわてて近くの潅木にしがみついた。竜門山の山頂直下にはまだかなりの雪渓が残っており、濃霧の中では方角が全くわからなかった。初めての人だと不安に駆られるところである。急坂を慎重に登って標柱の立つ竜門山に着いた。ここから左に進路をとれば約1時間で西朝日岳である。しかし強風と濃霧の悪天候ではとても西朝日岳に向かう気にもなれず、取りあえず竜門小屋で天候の回復を待つことにした。

小屋では日暮沢から昨日登ったという登山者が3人停滞中だったが、私が到着してまもなくすると狐穴に向かうと言い残し、強風の中を外に出ていった。私はタイムリミットを正午と決め、荒れ模様が納まらなければ縦走はあきらめることにした。焼きソバを作りコーヒーを飲みながらしばらく時間をつぶした。窓から眺めていると濃霧と強風はなかなか止みそうもなく、その光景はまるで初冬の寂しさを感じさせた。その後、時々竜門山が見えるくらいまで晴れ間が広がったのを確認し、11時40分に竜門小屋を出た。

竜門山から西朝日岳に向かうと、雲間からは少しづつ青空ものぞきはじめていた。縦走路からは小朝日岳から古寺山に続く山並みや、朝歩いてきた清太岩山からユーフンの稜線も見えるので、今まで塞いでいた気分も晴れてくるようである。しかし大朝日岳や西朝日岳は分厚い雲にすっぽりとおおわれており、まだまだ晴れる気配はなかった。そして台風から変わったという低気圧の影響がまだ続いており、体が煽られるような強風は依然として止まなかった。そんな天候の中、可憐なミヤマウスユキソウが岩場にしがみつくように強風に揺れていたのが印象的であった。

12時30分、誰もいない西朝日岳に到着。急坂の途中から雲の中に突っ込んだため、山頂からは何も見えず、行動食を食べただけで中岳に向かう。この区間は池塘も散在する湿地帯で、イワカガミ、チングルマの群落が続いた。5月の連休時には西朝日岳から中岳にかけて雪渓が遅くまで残り、視界が無いときには不安なのだが、今回はほとんど夏道を歩けるので心配はない。その雪渓は中岳から金玉水にかけてようやく現れた。雪渓は堅く締まりここは慎重に通過した。中岳のピークを回り込むと正面には見事な三角錐の大朝日岳が現れる。大朝日岳はガスに見え隠れしていたが、一瞬の晴れ間をみて写真を撮る。この頃になると強風こそ相変わらずだったが、西朝日岳や大朝日岳が雲に隠れたりするだけで上空にはようやく初夏らしい青空がもどった。

竜門小屋を出てからここまで誰にも出会わなかったが、大朝日小屋まで来るとさすがに多くの登山者が登ってきており、今日の山小屋は満員になりそうな様子である。大朝日小屋からは空身で大朝日岳を往復する。山頂では再びガスに覆われてしまい、まだまだ不安定な天候を感じさせた。小屋を後にして銀玉水への急坂を下る。ここもまだ多くの雪渓が残っているところだ。銀玉水を過ぎると道の両側にはヒメサユリの群落が続いた。ヒメサユリはちょうど今が盛りなのだろう。どこまでも続くその淡いピンクの花を眺めているだけで、疲れた体が癒される思いがした。この付近では大朝日岳をめざす多くの登山者と行き交った。

熊越から小朝日岳へはこのコース最後の大きな登りとなる。この180m程の急坂は疲れた足にはつらい登りだった。喘ぎながら登り切った小朝日岳は、時間がすでに3時近いということもあって山頂には誰もいなかったが、ここまで来ればようやく今日の終点が見えてくる。しかし登山口まではまだまだ距離があるので先を急いだ。古寺山の北斜面には5月頃まで多くの残雪が残るのだが今はすっかり夏道となっていた。途中の三沢清水では学級登山だという子供達を連れた地元の団体に出会った。午後4時、ハナヌキ分岐到着。さすがに両足は疲れており、ザックを下ろして小休止をとる。初夏の日差しはすでに西に大きく傾きはじめていた。ハナヌキ峰へはわずかの登り返しがあるのだが、この頃にはその少しの登りでさえも億劫な気分になっている。最後の行動食にとザックに忍ばせていた果物の缶詰をここで食べることにした。

ハナヌキ峰からは再び樹林帯に入り、しばらく展望の楽しみもない単調な下りが続く。重くなった足を機械的に前に繰り出しながらひたすら日暮沢をめざした。沢音が徐々に大きく聞こえはじめると、まもなく林道も近い証拠だ。やがて680m地点の平坦な一角に降り立ち、ハナヌキ峰から続いた急坂がようやく終わった。ここからは小さなアップダウンがあるものの林道はまもなくである。ふと見上げると根子川の対岸には清太岩山の稜線が黒い屏風のように立っている。日差しはこの稜線にすっかり遮られてしまい、周囲はすでに薄暗くなりはじめていた。


銀玉水付近のヒメサユリ
奥は小朝日岳


inserted by FC2 system