山 行 記 録

【平成15年6月14日(土)〜15日(日)/飯豊連峰 梶川尾根〜大石山〜丸森尾根】



丸森尾根の雪渓を下る



【メンバー】5名(伊藤(孝)、伊藤(賢)、清水、東海林、蒲生)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(頼母木小屋)
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】梶川峰1692m、扇ノ地紙1889m、地神山1,849.6m、頼母木山1,720m、大石山1,567m
【天候】(14日)晴れのち曇り、(15日)曇りのち晴れ
【温泉】小国町長者原「梅花皮荘」500円
【行程と参考コースタイム】
(14日)飯豊山荘6:40(410m)〜湯沢峰〜滝見場9:20〜五郎清水〜梶川峰12:00〜扇ノ地紙13:00〜地神山13:45〜
     地神北峰13:55〜頼母木山〜頼母木小屋15:00〜大石山15:35〜頼母木小屋16:00(泊)
(15日)頼母木小屋7:30〜地神北峰8:20〜丸森峰9:10〜飯豊山荘12:00

【概要】
今週は我々山の会の山行である。飯豊山荘から梶川尾根を登って頼母木小屋に泊まり、翌日は丸森尾根を下るコース。体調次第では杁差小屋への宿泊も視野に入れ、頼母木小屋泊の場合でも二日目に杁差岳までを往復する予定である。私は石転ビ沢に続き3週連続の飯豊連峰となった。

昨日から東北地方もとうとう梅雨に入ってしまった。例年のこととはいえ、今日は湿度が高い上に気分も湿りがちである。しかし天候は曇り空だったものの、飯豊連峰の稜線付近に少し雲が多い程度で意外と上空は晴れている。登り始めると涼しい風もあって、いつもより気持ちよく歩けるほどであった。今日は土曜日なのに悪天候が予想されるためかほとんど登山者は見あたらない。怒涛のような急坂を登ると2時間半ほどで滝見場に着いた。つい先日には広い雪原となっていた滝見場も、今日は標柱が半分以上出ているほどで、この時期の融雪の早さに驚いた。たった1週間で1m以上も融けている計算になるのである。連日真夏のような日々が続いているせいだろうが、おかげであてにしていなかった五郎清水では雪渓の末端付近で融雪水を汲むことができた。

気持ちの良い日差しを浴びながらの尾根歩きも、ダケカンバの峰あたりまでだった。梶川峰が近づくに連れて、徐々にガスの中に入ってしまい、まもなく周囲の展望がすっかりなくなってしまった。梶川峰にはちょうど正午に着いた。ここまで登ればようやく急登から開放され、みんなの顔には笑顔が溢れる。展望の楽しみはなかったが、ここまで登ってきたのだという達成感を感じながらの昼食だから楽しい。扇ノ地紙から地神山にかけても雲の中をただ黙々と歩いた。時折霧雨がぱらついたものの雨具を着るほどではなかった。
地神山の北斜面ではミヤマダイコンソウやハクサンイチゲ、イワカガミ、チングルマが盛りで、その可憐な花々は展望がない稜線歩きの寂しさを慰めてくれた。地神北峰付近まで来ると、時々ガスが切れてしばしば展望も利くようになる。ようやく晴れだしたのは頼母木小屋が目前と思われる付近にきてからであった。青空が広がるとそれまで沈みがちだった気分も瞬くうちに晴れてゆき、ガスの中から鉾立峰や杁差岳が現れるとみんなからは歓声があがった。

午後3時。ようやく頼母木小屋に到着した。小屋には誰もいなくひっそりとして静まり返っている。杁差小屋まで足を延ばすには遅いので、今夜は頼母木小屋泊と決めひとまずザックを下ろした。天候が回復したとはいっても翌日はどうなるかわからない。清水氏、伊藤(孝)氏と私は大石山を空身で往復することにした。といっても乗り気なのは清水、伊藤氏だけであり、二人は大石山までを歩けば福島県川入から大石ダムまでの飯豊連峰の縦走路がすべてつながるのだというので張り切っている。私達が1時間ほど大石山を往復している間、小屋に残った二人は雪を集めて水を作りながら待っていてくれた。その夜はほかに小屋までやってくる登山者もなく、我々5人だけの貸し切りであった。

翌日は3時半頃起床した。窓を開けてみると濃いガスに包まれてほとんど視界がない。この様子を見て、予定していた早朝の杁差岳往復はあっさりとあきらめ、再びシュラフに潜って1時間ほど一眠りする。朝食は夕食の残った食材で作り、頼母木小屋は7時半に出た。外に出てみるとまだ5、60m程度しか視界がなく、頼母木山も濃いガスの中を通過した。このままでは丸森尾根を下るのはやばいなあと思っていたのだが、地神北峰への急坂に差し掛かるあたりから雲が大きく流れだし、好天の兆しが見えはじめていた。やがて朝方の悪天候がウソのように晴れ渡ってゆき、地神北峰からは杁差岳や飯豊本山までも見えるまでに快復したのである。青空が広がった地神北峰からは遠くに丸森峰も見えるので、下りの心配は杞憂に終わった。私達は昨日の分まで取り戻すつもりで、しばらく地神北峰からの展望を楽しんだ。

地神北峰から丸森峰までは豊富な残雪が残っており、広い雪渓をトラバース気味に下って行く。アイゼンが必要なほどの急斜面だが2本のストックを束ねて簡易グリセードやシリセードで下る。清々しい青空をバックに尾根道には爽やかな風が流れ、この区間は今回のハイライトともいえそうであった。しかし丸森峰からは樹林帯に入るので展望はほとんどなくなった。棒尾根のような急坂だったが、登山道の傍らにはサンカヨウ、ミツバオウレン、シラネアオイ、ツバメオモトなど様々な高山植物が咲いており、単調な下りでも退屈することはなかった。春山では毎回のように楽しませてくれたムラサキヤシオやタムシバはすでに盛りを過ぎていた。1000m付近の水場はまだ雪の下であり、そこは休憩もせずに通過した。同じ高さに見えていた正面の倉手山がだんだんと見上げるようになる頃、ようやく眼下には天狗平や飯豊山荘の屋根が見えてくる。下るに従って気温がぐんぐん上昇し始めており、私は全身から汗が噴き出していた。




長い丸森尾根を下り終えて


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