山 行 記 録

【平成15年5月31日(土)/飯豊連峰 石転ビ沢〜梅花皮小屋】



梶川ノ出合付近からの門内沢


【メンバー】単独
【山行形態】春山装備(アイゼン、ピッケル)、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】北股岳2,025m(梅花皮小屋まで)
【天候】雨
【温泉】飯豊山荘 500円
【行程と参考コースタイム】
飯豊山荘6:15〜梶川の出合7:30〜石転ビの出合7:55〜北股沢出合〜10:20梅花皮小屋10:40〜飯豊山荘12:45

【概要】
今の時期の石転ビ沢をみておきたいと思っていたら5月も今日で最後になってしまった。予定では石転ビ沢から梶川尾根を下るつもりでいたところ、時期はずれの台風が近づいていているというので、気分はいまひとつ盛り上がらない。しかし朝起きてみるとまだ雨の降り出す気配はなく、予報では昼前から雨が降り出す模様だというので、とりあえず飯豊山荘に向かうことにした。

飯豊山荘前の駐車場にはマイカーが数台だけで、ほとんど釣り人のもののようであった。登山者カードを見ても誰も登っている様子がなく天狗平はひっそりとしている。湯沢ゲートで登山計画書を提出し、新緑に包まれた温身平をしばらく歩く。ダイグラ尾根との分岐点から石転ビ沢を仰ぐと、天候は薄曇りながらも稜線まではっきりと見えるのを確認し、ひとまず安心する。砂防ダムの階段を上って山道に入る。道沿いにはサンカヨウ、タムシバ、ムシカリ、カタクリなどが咲いている。梅花皮沢沿いの薄暗い夏道を少しずつ登って行くと「うまい水」、「彦衛門の平」と標識が現れ、まもなく
地竹原手前の沢からは雪渓歩きとなった。雪渓はまだまだ多いが、一部に早くも割れているところがあって、そこは雪解け水が奔流となって渦をまいている。また梶川の出合には背丈ほどもある大きな石が不安定な状態でかろうじて斜面に止まっている。あんなものが転がりだしたらと思うとちょっと心配になった。

久しぶりに歩く石転ビ沢は懐かしかった。雪渓はスプーンカットこそまだないものの、結構締まっているのでスリップして歩きにくい。今日は雨が降らない分だけ良しとしなければと思いながら歩いていると、そんな気持ちを見透かしたかのように、梶川の出合付近から雨が降り出してきてしまい、気分は一気にブルーになった。上空を恨めしく見上げるばかりだったが、雨は一時的なものではなさそうなのでザックから雨具を取り出す。上下とも雨具を着てしまうと気持ちも少し落ちついた。雨は止まなかったが、幸い視界はあるのでとりあえず先に進むことにした。

石転ビの出合では早くも大岩の頭が少し出ている。小さなアンパンを2個食べながらここでアイゼンを装着した。ザックに入れてきたのは10本爪のワンタッチアイゼンで、こんな雨の日には装着が簡単で助かる。石転ビ沢は本石転ビ沢を通過するあたりから勾配が急になった。今日はたぶん誰にも会わないかも知れないと考えながら登っていると、意外にも北股沢出合付近でゴールデンレトリバーを1匹連れた単独行が下りてくる。まだ9時を過ぎたばかりなので当然小屋泊りの人だと思ったら、朝5時に登り始めて、早くも小屋を往復してきたのだという。すると3時間30分程度で梅花皮小屋まで登ったことになり、ずいぶん健脚の人もいるものだと驚いた。

北股沢出合を過ぎると更に勾配が増した。雪は柔らかいので、すぐにダンゴになってしまい、アイゼンがうまく効かない。時々ストックでたたいて雪を落とした。こんなザラメ雪ならばテレマークスキーでも十分に滑れたなあ、と思えるほど柔らかい雪質である。良く見ると急斜面には1週間前のものと思われるスキーのトレースが至る所に残っていた。草付きの一部が現れているところがあったが、雪はまだまだ多く、中ノ島はほとんど分厚い雪渓に隠れている。この付近は45度を超す急斜面。最後は喘ぎながらの梅花皮小屋到着だった。小屋の直下まで雪渓はつながっていた。稜線はものすごい風で、台風の影響どころか台風そのもののような荒れ模様に、立っていることさえできない。景色を眺めている余裕など無く、私は急いで小屋に逃げ込んだ。誰もいない小屋には轟音のような風の音が鳴り響き不安が募るばかりだ。この天候では梶川尾根への縦走はとうてい無理と判断しなければならなかった。小屋も揺れるほどの悪天候ではとてものんびりと休み気持ちにはなれず、そそくさと行動食だけを食べて再び石転ビ沢を下ることにした。

登りで使用した2本のストックはザックにしまい、下山ではピッケルを抜いた。10本爪のアイゼンでもグリセードができるくらいだから小屋直下はかなりの急斜面だった。北股沢出合でアイゼンを外し、ここからはほとんどグリセードで下る。勾配はいくらか緩やかになったとはいえ、重登山靴はまるでスキーのように滑って行く。時々小さな石が右岸側を音も立てずに飛んでいった。本石転ビ沢付近では、やはり日帰りで小屋までの往復だという単独行とすれ違った。今日二人目の登山者だった。

突風のような風が時々雪渓を這いあがってきて、斜面を逆に押し戻されそうになる。天候はますます悪化する気配がした。風で落石の音が聞こえにくいのでしばらく緊張しながら下った。そして1時間ほどで雪渓を下り、夏道に上がるとようやく強風から開放された。夏道では再びストックをだし、梅花皮小屋からは2時間ほどで飯豊山荘に戻った。雨が降り続いているので休みなしに歩いたということもあるがやはり下りは早い。しかしゴアテックスのレインコートを着ているというのに、どこからか雨が漏れだしたのか下着までが濡れており、いつにもまして温泉が待ち遠しくなっていた。今日は久しぶりの飯豊連峰だったが、快適さとはほど遠い山になってしまい、小さな達成感だけが残った。入浴を終えて飯豊山荘を出ると、風雨はなおも激しさを増し、天狗平では風のうなり声とともに周囲のブナの木が大きく波打っていた。


犬連れの登山者が一人下っていった
北股沢出合付近



梅花皮小屋が目前


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