山 行 記 録

【平成15年5月25日(日)/百宅口から鳥海山】



登山口から鳥海山を仰ぐ
大清水小屋まではここから約5分



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】
鳥海山(七高山2,230m)
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
自宅3:00=大清水登山口(駐車場)6:50(片道180km)
大清水登山口7:00〜大清水避難小屋7:15〜唐獅子平避難小屋9:35-10:00〜山頂11:30-12:30〜大清水避難小屋〜駐車場13:40

【概要】
鳥海山百宅口へは2週間前に一度登ろうとしたが、その時はまだ除雪がされていないので祓川コースに変更している。除雪の状況は現地にいってみないとわからないというので今回も少し不安を抱きながらの計画である。しかし前回林道の入り口付近からあった雪は全くなくなっており、その先も雪などどこにも見あたらなかった。林道は小屋まで約13km。一部悪路も目立つ荒れた道をかなり走ったところでようやく雪が現れたが、除雪は数日前に終わっており心配は取り越し苦労であった。

同じ鳥海山でも登山口が違えば全く別の山の雰囲気がある。今日はどんな風景が展開するのだろうかとか何かワクワクするような気分の盛り上がりがあり、初めてのコースはやはり新鮮でいいものだ。駐車場には車は10台ほど留まっており、八戸からの車が5台もある。ここからはブナの樹林越しに鳥海山が望め、豊富な残雪を抱いた山頂部は朝日に白く輝いている。付近はすっかり新緑に包まれているが、まだまだ豊富な鳥海山の積雪に安堵の胸をなでおろした。

駐車場周辺には雪がないのでスキーはザックとともに担ぐことにした。大清水小屋は駐車場から5分程度である。木造の小屋は新しく、水場やトイレも整備されていて、周辺にはミズバショウなどが咲くキャンプ場になっていた。ブナの新緑に囲まれ、正面に鳥海山が聳えるそこには別世界の趣が漂う。小屋前ではまだ7〜8人が準備していたものの、ほとんどの人達はとっくに小屋を発ったあとであった。大清水小屋の標高は約830m。山頂までは1400mもあるのでみんな早立ちしたようである。

奥の古い山小屋の前を通過して山道に入るとすぐに雪が現れた。ブナ林には木漏れ日が差し込み、見上げる新緑がまぶしい。雪面はブナの落花や落ち葉などで一面の斑点模様となっていた。しばらく少しヤブっぽいところもあってスキーは担いだまま登った。尾根の一部は夏道がでていて、雪は途中で途切れそうな雰囲気なのだが、それでもけっこうつながっており、帰りには小屋まで下って来れそうな状況を確認しながら登った。先をゆくミニスキーを担いだ人達は途中から夏道を進んでいったが、私は少し広めの雪渓に出たのを機にシールを装着する。

しばらく快適なシール登高が続いた。ところどころに潅木帯が現れるものの、それは進行を妨げるほどではなく少し迂回するように回り込むと徐々に雪原は広くなった。地形図では大倉の滝見場付近を通るような感じだが、赤沢川沿いの斜面をトラバース気味に登ったのでそれには気付かずに通過する。やがて前方には唐獅子平避難小屋が現れた。雪渓は小屋を右から卷くようにつながっていたが休憩を兼ねて小屋に寄ってゆくことにした。夏道がちょっとわからずらく、私は正面のヤブを少し漕いで小屋の前に出た。小屋から山頂までは大斜面がひろがっている。小屋では八戸からきたという人が3人休んでいた。団体で来たらしいのだが、別に山頂をめざすつもりはないらしく、3人は山頂に向かった他のメンバーを待ちながらも、早速ビールを飲み飲み休んでいるようであった。

唐獅子平避難小屋をでると最初はなだらかな斜面も徐々に勾配が急になってゆく。時々立ち止まりながら眺めていると、前方の急斜面に張り付いている人達が何人か見えた。それは小さな黒い点にしか見えず、ほとんど動いているようには見えない。山頂は手を伸ばせばすぐにでも届きそうなところなのに、実際は予想以上の距離があるのだろう。山頂直下はほとんど直登不可能と思われるほどの急斜面になっていて、さらに登るとようやく勾配はゆるやかになり、まもなく鳥海山の山頂に到着した。そこは外輪山の一角で、谷を挟んだ向こう側には新山と大物忌神社や避難小屋が目前である。ガレ場の縁をたどりながら右手の高みに登ってみると、七高山には祓川から登ってきたと思われる人達で溢れていた。大清水の小屋を出てから約4時間半。さすがに標高差1400mは登りがいがあり、最後はバテバテの状態であった。

暑い日差しが降り注いでいたが、山頂付近はさすがに風があって、汗をかいた体はたちまち冷えてきそうであった。長袖シャツのうえにウインドブレーカーを着てしばらく大休止とした。つらい登りに耐えてきただけに山頂でのひとときは何にも代えがたい時間である。山頂からの眺めは申し分無く、のんびりと過ごす時間は至福を感じさせた。百宅コースを登ってくる人はそれほど多くはなく、早めに登ったスキーヤーはすでに下ってしまっている。山頂は不思議なほど静かで、カップラーメンを作りビールを飲んでいると、新山を往復する人たちが時々外輪山を行き来していた。

1時間ほどの休憩が終われば待望の滑降だ。登りで苦労した急斜面も、今の時期は何の不安もないから楽しい。少しビールの酔いがまわっているので大きなターン孤を描きながらゆったりと下るのだが、ザラメ雪はそんな酩酊気味のスキーにもよく食いついてくれた。誰もいなくなった広大な斜面をのんびりと下って行くと途中から大勢のスキーヤー達と合流した。数えてみると20人ほどもいる。どうやら唐獅子避難小屋で休憩していた八戸からの人達のようであった。そこからはその団体達と一緒にしばらく下った。山スキーにテレマーク、さらにはミニスキーまでいる多彩なグループで、彼らと一緒に滑っていると退屈することがなかった。

しかし快適な滑降も赤沢川源頭部付近のトラバース箇所を通過するまでである。その先からは潅木が混んでくるので細枝に引っかからないように慎重に下らなければならなかった。このあたりで団体に別れを告げた私は、密林のようなブナの樹林帯をボーゲンや横滑りで制動しながら下った。やがて樹林の間からは大清水のキャンプ場がちらちらと見え始め、登りでは一部夏道だったところも少し遠巻きに滑って行くと大清水避難小屋は目前に迫っていた。




大清水避難小屋



新緑のブナ林を登る



唐獅子平避難小屋



唐獅子平避難小屋から山頂を望む



外輪山からは大物忌神社が見える
右手奥は新山


八戸の山スキーのグループ
赤沢川の源頭部付近


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