山 行 記 録

【平成15年4月29日(火)/吹浦口から鳥海山】



七五三掛から仰ぐ鳥海山



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り(前日、鉾立駐車場にて車中泊)
【山域】出羽山地
【山名と標高】
鳥海山 2336m
【天候】晴れ
【温泉】
鳥海温泉保養センター「あぼん西浜」350円
【行程と参考コースタイム】
大平6:20〜御浜小屋8:00〜七五三掛9:00〜山頂10:40-11:10〜御浜小屋12:00〜大平12:40

【概要】
鉾立駐車場で一夜を過ごし、朝食を食べ終えると鳥海ブルーラインを山形側に少し移動する。大平と鉾立の中間地点のいつもの駐車スペースには、まだ朝早いためなのか車が1台も見あたらなかった。しかし鳥海ブルーラインは今年、道路管理上の問題から夜間は完全に施錠されてしまったらしく、朝9時にならないと通過できなくなっているというから、まだこの時間では登ってくることができないのかもしれなかった。昨年までは早朝でもゲートを自ら開けて通ることができたので、今頃の時間はすでに何台も車が止まっていたのである。

今日も昨日と同じく風が強い日であった。昨日、一昨日と、この2日間の山で足は結構疲れていたが、今日は久しぶりに千蛇谷を登り、新山の山頂まで行く予定である。昨日の祓川からのコースと合わせれば鳥海山の西から東への横断というわけである。最初の急斜面をひと登りすると1396mに立つ反射板だ。この先はなだらかな雪原が御浜小屋まで続く。反射板からの大雪原はいつきても気持ちの良い大斜面が広がっており、このままどこまでも歩いて行ける気分になるほどだ。左手下方をみると鉾立を登ってきたらしい登山者の姿が遠くに見えた。

御浜小屋は半分以上雪に埋まっていた。鳥海湖もまだ多くの雪におおわれていて、ただの真っ白い雪原であった。周囲には人影も見あたらず、今日はまだ山頂に向かっている人はいない様子である。鳥海湖の写真だけを撮ってすぐに出発した。小屋からは扇子森のピークまでわずかに登ったあといったん下る。七五三掛からは一部夏道をトラバースしながら千蛇谷におりた。千蛇谷では一時、風が弱まったもののそれもつかの間で、雪渓を吹く風はさらに強まり、途中からはアウターを着なければならなかった。雪面はずぶずぶに腐れはじめており、シールは水分を吸って徐々に重くなっていった。ただでさえ疲れていた足に、重さの増したシールはまるで足枷をはめられているようなものであった。

千蛇谷は見た目よりも広大である。いくら登ってもなかなかピークが近づかず、まるで飯豊の石転ビ沢の雪渓を登っているような気分になった。すでに足は棒のように疲れ切っており、最後の急登はさすがに息が切れた。振り返るとようやく千蛇谷を登り始めた人や、外輪山を歩いている人も遠くに見えて、私はそんな姿を励みにしながら一歩一歩登った。積雪は以前登ったときよりも多く、雪は新山のピークまでつながっていた。

新山の山頂には4時間20分かかってようやく到着した。今日は山頂に一番乗りだと思っていたのだが、早くも登ってきている人がいる。聞いてみると祓川からのスキーヤーであった。その後、一休みしている間にもぞくぞくと七高山から登山者がやってくるのが見えた。まだ昼前だったが山頂で早めの昼食をとることにした。30分ほどの休憩を終えると、山頂からは広い斜面を滑り降り千蛇谷に入った。千蛇谷は最初だけ急斜面だが、少し下れば広々とした緩斜面が延々と続いている。ずっとこのまま千蛇谷を下ることができればといつも思うのだが、七五三掛の横断地点まではあっと言う間に着いてしまう。七五三掛を登り返すとこれから千蛇谷を目指す人達が外輪山から下りてくるところだった。扇子森のピークを登り返し、御浜小屋に向かう。朝方、小屋には一人もいなかったのだが、この時間になると多くのスキーヤーや登山者で小屋の回りはにぎわっていた。早速ビールで乾杯をしている人も多く、ほとんどがこの御浜小屋までの往復だけのようであった。

小屋で小休止後はなだからな斜面を吹浦口に向かって滑り出す。靄がかかって水平線は霞んでいたが、日本海を見下ろしながらの滑降は快適であった。樹林帯を縫って滑るパウダースノーも、春の鳥海山の無木立の大斜面も、快適さにおいてはまさに甲乙つけがたいといったところだろうか。春のザラメ雪は技術の未熟さをカバーしてくれるので楽しいばかりである。反射板を過ぎると急に風がなくなり、にわかに気温が上昇を始めていた。そこからは標高を保ちながらピークを巻き、鳥海ブルーラインが見おろせる高みにザックを下ろして最後の休憩をとった。初夏を思わせるような陽光を浴びながら、私は一昨日の燧ヶ岳とこの2日間の鳥海山を思い返していた。三日間の疲れはピークに達しており、すでに体力の限界だったが、一方では最近になくすがすがしい達成感を味わっていた。



七五三掛付近から千蛇谷を見下ろす
左奥は稲倉岳



山頂に建つ大物忌神社と七高山



七五三掛付近のトラバース箇所


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