山 行 記 録

【平成15年4月6日(日)/姥沢〜リフト終点〜志津温泉】



姥沢からは快適なブナ林の斜面が石跳沢へと続く
ようやく視界が晴れたところ



【メンバー】8名(西川山岳会メンバー他)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】姥ケ岳1,670m
【天候】風雪
【温泉】西川町中村 大井沢温泉「
湯ったり館」300
【行程と参考コースタイム】
姥沢7:50〜リフト終点9:00-9:45〜姥沢小屋上部10:25〜石跳沢(昼食休憩)11:30-12:15〜ネーチャーセンター12:30〜旧112号線12:40〜志津温泉13:00

【概要】
今回は西川山岳会主催「月山〜北月山スキー場」のツアースキーである。しかし低気圧通過による悪天候は朝になっても納まらず、西川町に向かう国道沿いは雨模様であった。志津温泉付近では霙(みぞれ)が降り続き、姥沢の駐車場まで登るとすでに風雪に近い状態なっていた。これでは月山越えはまず不可能だろうというほどだったが、とりあえず姥ケ岳までは行けるだろうとシールで登り始める。

月山スキー場のオープンは4月10日の予定である。まだリフトは動いていないので今日は下から歩かなければならない。稜線は猛烈な風が予想されるのでしっかりと身を固めて出発した。最初から目出帽を被っている人もいる。リーダーの西川山岳会柴田氏をトップに、姥沢小屋を右手に見ながら姥ケ岳をめざす。無人のリフト乗り場も過ぎ、周囲のブナ林も途切れると全くの無木立となり、そのうちほとんど視界はなくなっていた。

姥ケ岳の山頂までも厳しい状況の中で、ひとまずリフト終点に建つ休憩小屋に向かう。ホワイトアウトの状況では小屋を探すのも容易ではなかった。猛吹雪の中からようやく姿を現した小屋は、夏山での印象とはほど遠く、その荒涼とした姿にただ呆然としてしまう。小屋は避難小屋ではないので、頑丈に雪囲いが施されていて中に入ることはできなかった。トイレならばもしかしたら入れるかも知れないとドアをスコップで掘りだし中に入ろうと試みるものの、これも凍り付いているのか施錠されているのか押しても叩いてもびくとも動かない。しかたがないのでトイレはあきらめ、ツェルトを張りしばらく天候の回復を待つことになった。小屋の陰ならば少しは風を防げるだろうと思ったら、四方から風が舞うような状況ではほとんど変わりがなく、吹雪はますます猛威を振るってきそうな様相である。ツェルトは猛り狂ったような激しい風に、絶え間なく煽られ続けていた。

ツェルトの中で一休みしながら検討した結果、予定していた月山越えは断念することになり、エスケープルートとして石跳川を下ることになった。姥ケ岳の山頂を回り込むというルートもあるのだが、メンバーの中にスキーの初心者がいるので無理はしないことになった。樹林帯に入れば風も弱まり、視界も少しはよくなるだろうという判断である。シールを外したりツェルトを撤収したりと常には何でもない作業も、今日のような猛吹雪の中ではつらい作業だった。風雪に晒されている顔面の感覚はすでになくなっていた。

小屋からは
沢沿いに下り、姥沢小屋の上部をトラバースしながら右手の尾根に登った。このまま南に下れば石跳川に出会うのでルートの心配はなく、またこの辺りからようやくガスが少しずつ晴れるようになった。ここからはブナの美しい疎林が南斜面が広がっており、斜度も適度で快適なツリーランを楽しむことができた。雪崩の心配はなかったものの、20cm前後の新雪の下はザラメ雪のいわゆる弱層となっている。この重い雪に足を取られないようにしながら大きなターン孤を描きながら下る。予想以上に滑りやすいのは雪面がすこし柔らかくなっていたためだろうか。悪天候などで気分は沈みがちになっていたが、ブナ林の中での快適な滑降に少しずつ気持ちが晴れてくるようだった。

このまま下れば30分もかからずにネーチャーセンターへ着いてしまいそうなので、石跳川の途中でザックをおろし、のんびりと大休止をとることになった。一時は晴れ間も広がる気配を見せていたが、雲の流れが速くて陽が陰るとたちまち体が冷え切ってしまう。姥ケ岳の上空には黒々とした雪雲が居座っており、晴れているのは標高が低いところだけのようであった。昼食を終えるとネーチャーセンターまでは快適な滑降だ。石跳沢沿いの緩斜面はほとんど直滑降で滑って行く。雪に埋もれていているネーチャーセンター前を横切り、さらに南下するとまもなく旧112号線と姥沢への三叉路に出てスキー滑走は終了した。そこから志津温泉まではスキーを担いで歩いた。

月山はいつもより雪が少ないとはいえ、今日のような猛吹雪に出会うとまだまだ春は遠いなあと思うばかりである。それでも耳を澄ませば小鳥のさえずりや遠くから沢の流れる音が聞こえており、この月山にも確実に春は近づいていた。一時、晴れ渡った時の青空と白い雲と、芽吹き前のブナの原生林は美しく、これはすでに春山そのものである。私は北月山に行けなかったのは確かに残念だったが、久しぶりに姥ケ岳山麓のブナの原生林を徘徊できただけでも満足であった。


姥沢小屋からはすでに風雪模様だった



猛烈な風が吹き荒れるリフト終点の休憩所




トイレに一時避難しようとしたが
ドアは凍り付いて開かない




一時は青空も広がった石跳沢付近



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