山 行 記 録

【平成15年3月1日(土)/吾妻連峰 天元台〜中大巓〜藤十郎〜大平



まだ深い雪に埋もれていた不忘閣ヒュッテ



【メンバー】2名(蒲生、安倍)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】
中大巓1,964m、
【天候】晴れのち曇り
【温泉】白布温泉「かんぽの湯」510円
【行程と参考コースタイム】
天元台リフト終点8:45〜中大巓9:12〜人形石9:25〜藤十郎9:50〜間々川渡渉点11:15-11:30〜1393mピーク11:45-12:15〜不忘閣ヒュッテ12:55〜大平公民館前14:30

【概要】
吾妻連峰の大平コースは古くからあるツアーコースである。スキーリフトを利用すれば短い登りで滑りを楽しむことができるのは大沢下りとよく似ており、天元台から藤十郎までは同じコースをたどるものだ。稜線に登ってしまえば藤十郎から大平の集落までは、約1400mの標高差を滑ることができるというから結構ロングコースだが、大平からは交通機関がないのでこのコースは大沢下りほどには利用されていないようである。

今日の天候は思わしくはなく、午後からは確実に雨が降るだろうという予報がでていた。なるべく早めの出発がいいだろうと始発8時のロープウェイに乗る。北望台から登り始めると、意外にも快晴の空が広がっており、飯豊連峰はひときわ白く輝き、天気予報は当たらないのかも知れないと思ったほどだった。しかし中大巓が近づくにつれて、少し雲が湧き始めると、薄雲はたちまち空一面を覆い尽くしてしまい、まぶしかった日射しはすっかり遮られてしまった。つい今しがたまで樹氷を照らしていた日の光が嘘だったような天候の急変だった。

日射しがなくなったとはいっても、すぐにでも雨が降り出すような気配はなく、いわゆる高曇りといった状態である。中大巓からは朝日連峰や蔵王連峰もはっきりと見えるほど視界はよかった。かといって、のんびりとするわけにもゆかず、私達は休憩は先延ばしにして先を急いだ。

人形石付近はシュカブラが発達しており、標柱にはエビのシッポがびっしりだ。ここでは早速シールをはずして東側のパウダー斜面をひと滑りする。コルからは広い雪原を東に進み、1860mのピークの右を卷くとまもなく藤十郎に着く。このピークに立つのは冬山では初めてで見渡す風景が新鮮だった。ここからは箕輪の左のピークを目標に尾根を滑り出す。すぐに密林のような樹林に入ると深雪のパウダーだった。樹林が混みすぎているので佐原沢を滑りながら様子をみているうちに尾根からだいぶ遠ざかり始めてしまってあわてた。トラバースしながら尾根に戻ろうとしたがなかなか尾根は近づかない。しょうがないので一休みしてからシールで登り返すことにした。スキーを外すと膝上までの雪に体が沈んだ。20分ほどの登り返しでやっと本来の尾根に戻った。

まもなく1491mのピークが右に見える地点まで下ってくると前方の視界がきくようになった。正面には間々川をはさんで1383mピークが見えた。ここからは針葉樹の樹林帯からシラカバ林となり、急に周囲が明るくなる。斜面も緩やかになって林間の深雪を楽しみながら下った。このあたりは実に気持ちの良いところで、同行の安倍氏は快適にかっ飛ばし、私は柔らかいパウダーを惜しみながらテレマークでのんびりと滑った。

心配していた間々川は一部流れが見えるところもあったが、まだ厚い雪に覆われていた。ここから対岸に渡ると約60m登って1393mのピークに登り返しだ。安倍氏のシールの糊が利かないという小さなトラブルがあったりしたが、とりあえず持っていたガムテープで応急処置すると何とかピークまで登れそうだというのでホッとする。この斜面も明るいシラカバ林で、気分良く登りながら約15分でピークに着く。ここまでくれば後は不忘閣ヒュッテまで滑るだけだと思うと一安心してしまい、ここで大休止をとることにした。安倍氏は東光の濁り酒と杯をザックに忍ばせていた。私も一杯いただいきながら、ここまで無事に下ってきたことを二人で祝って乾杯した。ここは狭いピークながら眺めはよく、西には中大巓から天元台スキー場への稜線が意外と近くに見えていた

1393mのピークからはシールをはずして不忘閣ヒュッテに向かう。尾根沿いに下るのだが、ここは尾根の左の小沢を滑ると不忘閣ヒュッテに出るのだと聞いていたにもかかわらず、樹林帯を敬遠しているうちに誤って座々沢側に下ってしまい、よけいなトラバースをしたりした。しかし快適な滑降もこの座々沢までだった。本来の小沢に戻る頃には、雪面はまるで雨が降った直後のような湿雪になっており、スキーはほとんど走らなくなっていた。ようやく沢の末端まで降りてくると右手から不忘閣ヒュッテが現れた。ヒュッテは2階部分は見えるもののまだ深い雪に閉ざされていた。

不忘閣ヒュッテからは林道を下るだけなのだが、まだ深い雪に覆われていてどこが道なのかよくわからない。夏道の記憶を思い出しながら歩くしかないようだ。固形ワックスを塗ってもその効果はほとんどなく、スキーはほとんど滑らなかった。林道は大平の集落まで5km以上はあり、この予定外の林道歩きにはまったくがっかりするばかりだった。うんざりしながら歩いていると、ショートカット出来そうな場所にでた。地形図でつづら折りに下って行く箇所である。しかしすぐに絶壁のような場所にでてしまい、結局登り返して元の林道を探す羽目になっただけであった。ここでだいぶ時間を費やしたが本来の林道に戻って胸をなで下ろした。

そこからは忠実に林道をたどって下った。毎年全層雪崩が起きているという箇所を足早に通り過ぎると、やがて車道に飛び出した。車道は除雪されていたものの、雪があるのでここにきてやっとスキーの機動力が生かされる形だ。雪が一部切れているところは田圃の上の雪原を滑ってゆく。ようやく終点の大平の集落が近づいていた。大平の集会場に着いたとたん、深々と雪が降り始めてきた。振り返ると吾妻の稜線付近は風雪となっているのか全く見えなくなっていた。


藤十郎の北斜面を下る



標高1500m付近から見る1393mのピーク
樹林帯の間からようやく視界が開けた頃



間々川を渡渉する
間々川は藤十郎から流れる松川の源流


1393mピークへの登り
このあたりは美しい白樺林が多い



1393mのピークからの中大巓
右へ続く稜線は天元台スキー場




松林の中の林道
ほとんど平らで滑らない



林道を歩く
この辺りはかなり下った頃で道形がはっきりしている
湿雪は重く滑らないので、林道約5kmはほとんど歩かなければならなかった


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