山 行 記 録

【平成15年2月23日(日)/吾妻連峰 峠駅〜栂森〜大沢駅】



小栂の直下から仰ぎ見る栂森
この頃になるとようやく青空が広がった



【メンバー】5名(柴田、丹野、安達、武田、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】栂森1,628m
【天候】曇りのち晴れ
【温泉】米沢市「鷹山の湯」500円
【行程と参考コースタイム】
米沢市「鷹山の湯」6:20=(車)=大沢駅7:29発=(JR)=峠駅7:34
峠駅7:45〜886m8:30〜1133m9:20〜小栂10:45〜栂森12:00-13:00〜1201m14:00〜放牧場15:00〜大沢駅15:40

【概要】
今回は数ある吾妻連峰のツアーコースでもめずらしい部類に入るコースだ。奥羽本線の峠駅前でスキー履き、ツアー終点の大沢駅でスキーをはずすという、文字どおり駅前から駅前への縦走は、考えただけでもワクワクしそうなコースである。峠駅の標高は約630m。栂森までの標高差は1000mもあるというから結構体力的にきつそうだが、スキー場がないだけに全て自分の足で標高を稼がなければならない分、いかにも山スキーらしいコースといえそうである。

峠駅では小雪が舞っていた。視界はほとんどなく、曇り後晴れという天気予報もこうなると怪しくなりそうな空模様であった。他に汽車から降りた人もなく、幾分沈みがちになりながら登る準備をしていたら、まもなく到着した福島からの下りの電車から山スキーを担いだ集団が降りてきて、静かだった峠駅前は一転してにぎやかになった。総勢20人以上もいそうなこの団体は聞いてみたところ、吾妻山の会が毎年主催しているという栂森ツアーの人達であった。

一足先にシールを貼り終えた私達は、さっそく目の前の急な法面を登って尾根に取り付いた。樹林帯の中には昨日のものと思われる2人分のトレースが残っている。雪面は固く締まっているので登りやすく快適だった。古く朽ち果てたツアー標識がところどころに残る杉林を抜けると、まもなく吹きさらしの尾根上に出た。幸い今日は風がないので歩きやすく、尾根の形状もはっきりしているので迷う心配はなかったが、尾根の東側に大きく雪庇が張り出しており、そこは常に気を配りながら登った。そのうち徐々に雲が流れて時々太陽も顔を出すようになった。886mのピークはよくわからないままにいつのまにか通り過ぎ、まもなく左手の大滝沢沿いには滑川温泉、大滝沢を挟んで向こう側には東大巓から家形山へと続く稜線が見えてきた。福島側はすでに晴れているらしく、東吾妻方面はまさしくピーカンの快晴のようであった。

1133mピークからはいったん下りとなった。よほど風が強いのか斜面の西側には雪がほとんどなく地肌が露出していた。登り返すと平坦なダケカンバ林に出た。この頃からようやく青空も広がりはじめ、小栂と思われるピークが正面に現れると、まもなく背後の栂峰が望めるまでに天候が回復した。小栂直下での小休止後は、急斜面をジグザグに登った。この辺りは勾配もあってスキーでの折り返しがきついところだ。ピークからはコルをはさんで栂森の大きな斜面が前方にたちはだかっていた。本来のルートは栂森とのコルからいったんくだって右の尾根にトラバースするのだが、私達は雪崩の恐れのあるトラバースルートよりも、少し急斜面でも尾根伝いに登れればという判断もあってそのまま直登した。しかし頂上直下の急斜面では雪が腐っていてどうにも登れなくなってしまい、最後はスキーを担がなければならなかった。急坂をようやくの思いで登り切ると頂上稜線に出た。勾配はなだらかとなり栂森の山頂はまもなくだった。

栂森の山頂は広い雪原であった。いつのまにか空全体に青空が広がって、強い日差しが降り注ぐほどにもなっている。振り返れば栗子山の白い山並みが鮮やかだった。頂上直下をトラバースした栂森ツアーの人達はここまでは登ってこない様子で山頂は私達5人だけであった。4時間以上かかって登った山頂である。みんなでのんびりと休憩を楽しむことにした。柴田氏がみんなに差し入れてくれたビールで早速乾杯をする。汗をかいた後だけにこのビールはさすがにうまい。春のような陽気の中で酔いもまわって話しもはずんだ。一息入れたところで私と丹野氏は三角点のピークまで足を伸ばしてみることにした。休憩地点から200mほど先にゆくと樹林が切れて見晴らしの良い場所に出たが、三角点はまだ雪の下である。ここからはほとんど水平にしか見えない東大巓からのなだらかな稜線が望むことができた。また右手の1663mのピークからは幾筋ものシュプールが残っており、ここから見るとまるでゲレンデのようであった。

山頂からの滑降コースは当然ながら大沢下りに合流する通常のルートを私は予定していたのだが、急遽、柴田氏の提案で北東尾根を下ってみることになった。山頂から北に向かって1201mのピークに連なる尾根である。といってもこれは一般ルートではなく、いわばバリエーションルートである。今日は視界も良く問題はなさそうだということもあったのだが、山スキーだからこそ行けるルートとも言えそうで、未知の世界を覗けるという好奇心が不安を上回った。

山頂直下のコルでは栂森ツアーの団体が大勢休憩中で、私達はこのコルから北東に向かって滑り出した。下りはじめは針葉樹の密林のようなところをトラバース気味に進む。尾根に出るとここからのコースがよく見える眺めのよい場所に出た。遠くには広い台地のような吾妻山麓の放牧場も見えている。しかし尾根は痩せていて地形図で見るほどには単純なルートではなさそうで、いくつかの小さなピークは何回か登り返しがありそうであった。

それでも滑り出しは割合に広い斜面があって気持ちよく滑ってゆく。しかし樹林が混んでくるとなかなか快適とはゆかず、柴田氏はウエーデルンで快調に飛ばして行くが、私を含めて他の4人はついてゆくのがやっとであった。また狭い尾根は雪庇も張り出しているので私のテレマーク技術では難しく、何回も横滑りで凌がなければならなかった。

それからもいくつかの小ピークを登り返したり、卷いたりしながらどんどんと尾根を下った。1201mのピークからは元小屋川に向かって急斜面の樹林帯を下ってゆく。ここも密林のような樹林帯だったが、そこを抜け出ると疎林の緩斜面となり、みんなの顔色にもようやく安堵の表情が浮かぶようになっていた。幸いに元小屋川は雪で埋まっているので問題なく横断することができ、まもなく対岸のカラマツ林に出た。地形図で確認するとそこは茂皮平の末端付近で、苦労しながら下ってきた栂森ツアーもいよいよ終盤を迎えようとしていた。そして放牧場に通じる林道に合流すると、ハードな私達の栂森ツアーがようやく終わったのを感じた。

放牧場では今日の行程をみんなで振り返りながら最後の休憩をした。放牧場からの林道は雪が固く締まっていてスキーが良く走り、大沢駅までは快適に飛ばした。帰り際、大沢スキー場に立ち寄ってみると、通常のコースを早々と滑り降りてきた栂森ツアーの人達が、汽車時間まで休憩をしているところであった。大沢スキー場からは大沢駅まではもういくらもない。大沢駅からは車で米沢市の日帰り温泉施設「鷹山の湯」に戻って解散した。




1133mピークを下る




栂森山頂
右奥の白い稜線は栗子山付近
背後に見える筈の蔵王連峰は雲の中であった



他にこの山頂まで登ってくる人はいない
静かな山頂だった



栂森の三角点から望む東大巓の稜線
右の1663mのピークからは幾筋ものシュプールが見える



標高1300m付近から仰ぐ小栂(左)と栂森
北東尾根は右のヤセ尾根を下る(13:45)


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