山 行 記 録

【平成15年1月18日(土)/蔵王連峰 澄川スキー場から刈田岳】



パラダイスコースから仰ぐ刈田岳
清渓小屋(右)付近はバージンスノーだ



【メンバー】2名(妻)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】蔵王連峰
【山名と標高】刈田岳 1,758m
【天候】晴れ
【温泉】山形市スーパー銭湯「テルメ」
【行程と参考コースタイム】
自宅7:45=すみかわスノーパーク10:00着
すみかわスノーパークリフト終点10:50〜(中央コース)〜刈田岳12:50-13:30〜(パラダイスコース)〜清渓小屋14:25〜井戸沢15:00〜すみかわスノーパーク駐車場16:00

【概要】

久しぶりに訪れた「すみかわスノーパーク」は好天にも恵まれ、ゲレンデでは多くのスノーボーダー達で賑わっていた。近くでは大きなザックを背負った山スキーのグループもいる。朝から快晴の空が広がっており、今日は非の打ちどころのないツアー日和であった。

ゲレンデハウスで3回分のリフト券がセットになっている登山券(800円)を購入し、あわせて入山届けを提出する。ここでは雪上車による樹氷鑑賞ツアーも行っており、一般の観光客もけっこう多かった。もちろんスノーボーダーやゲレンデスキーの人達も刈田岳山頂まで運んでもらえるので、リフトに乗る頃には多くのスキーヤー達を乗せた雪上車が山頂を目指して出発していった。

リフト終点からは早速シールを貼って歩き出す。樹林を抜けると刈田岳の広大な裾野が広がり、見上げれば雲一つ無い紺碧の空があった。遠方には真っ白い刈田岳や熊野岳の稜線も見える。こんな天候の時に登れる幸せに、ついつい表情がゆるんでしまいそうであった。しばらく烏帽子岳を左手に眺めながら快適なシール登高が続いた。登りはじめる時間が遅かったので周りには誰も見あたらない。カミさんは無風快晴の中、まぶしいほどの真っ白な雪景色と抜けるような青空に感激している。まもなく暑さに我慢しきれなくなって、途中で二人ともアウターや帽子を脱いだ。

刈田岳は常に正面に聳えているのだが、歩いても歩いてもなかなか山頂が近づかないのでカミさんはしきりにぼやいた。広大で一面に白い雪原のために目が錯覚を起こしているのだろう。1時間ほどすると冷たい風が吹きはじめるようになった。勾配が増すにつれて風の冷たさに耐えきれなくなり、再びアウターを着て、カミさんは目出帽もかぶった。ゲレンデではいくら無風とはいってもやはり冬の蔵王である。稜線を吹く風はまさしく厳冬期を感じさせた。

登るに従って徐々に氷結したお釜と火口壁が右手から姿を現し、宮城側から蔵王に登るのが初めてのカミさんは、見慣れたお釜とは様子が違うので、これがお釜だと説明しても信じられないのかしきりに不思議がった。やがて雪上車を利用したスノーボーダー達が、刈田岳山頂から次々と下ってくるのが見えた。いよいよ山頂が目前に迫り、雪面はガリガリのアイスバーンとなり、山頂直下の急斜面ではカミさんのスキーを担いだ。

刈田岳の山頂では山スキーの人が4〜5人休憩中だった。犬を連れたスノーシューの登山者もいる。鳥居のある山頂神社まで登ってみると晴れているのは蔵王連峰周辺だけで、山形県側はほとんど雲海に隠れており、飯豊連峰や吾妻連峰は稜線がわずかにみえるだけだった。氷詰めにされたようなレストハウスの上には、白銀に輝く大朝日岳の山巓が雲海に浮かんでおり、それは冬の蔵王で見る珍しい光景だった。

昼はとっくに過ぎているので風の弱い場所に腰を下ろして早速昼食の準備をする。冷めてしまったテルモスのお湯を沸かそうとガスコンロにかけたものの、風が強くてなかなか沸かない。疲れた体に熱い味噌汁やカップラーメンは確かに美味しかったのだが、じっとしているとたちまち体が冷えてきてしまい、そそくさと昼食を切り上げて早めに山頂を後にした。

シールをはずし、山頂からは刈田岳の南斜面をトラバースする。エコーラインを横断して樹林帯に入ると、パラダイスコースはまだ誰も下った様子がなくトレースは全然見あたらなかった。樹林を適当に縫って行くとツアーコースの標識が現れ、この標識を拾いながらしばらく滑ると、途中、雪に埋もれていた清渓小屋に出た。下ってきたばかりの刈田岳はすでに遠くなっていた。このまま下ってしまうのはもったいないので、日当たりの良い雪原に腰を下ろして大休止する。春のような日差しを浴びながら、この静寂な雪の世界で過ごせる楽しさをなんと表現したらよいのだろうか。

小屋を過ぎると突然2人分のトレースが右側から現れた。二人は本来のコースのだいぶ右寄りに下ってきたものらしかった。ここからはこのトレースをたどりながら下るものの、この快適な斜面もまもなく平坦な雪原となってしまい、後半は何回も両手で漕がなければならなかった。そして井戸沢の急斜面まで下ればこのパラダイスコースのハイライトは終わる。私達は登り切ったところでしばらく小休止した。太陽は井戸沢の雪壁に見えなくなりつつあった。この先も先人のトレースを追いながらシラビソの間を縫うように下ってゆくと、廃線となったリフト乗り場の下に出た。対岸に登り返したところには古ぼけた昔のリフト乗り場の看板がまだ残っていた。時間のたつのも忘れ、のんびりと休憩を取り過ぎたせいで、ゲレンデに飛び出したときには付近には一人も見当たらず静まり返っていた。リフトはすでに終了していたのである。すでに日は傾きかけており、誰もいなくなった薄暗いゲレンデを二人でのんびりと下った。


無風快晴の中、烏帽子岳を左手に眺めながら快適なシール登高が続く



この付近では暑くてヤッケも帽子もいらなかった
奥は南蔵王連峰の稜線



雲海に浮かぶ大朝日岳
刈田岳山頂から



パラダイスコースはまだ誰も足を踏み入れていなかった
振り返れば刈田岳が遠くなっている



雪に埋もれていた清渓小屋


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