山 行 記 録

【平成15年1月11日(土)〜13日(月)/吾妻連峰 吾妻スキー場〜吾妻小屋〜高山〜土湯温泉



前大巓を滑る大川氏(手前は蓬莱山、奥に聳えるのは高山)
[2003.1.12]



【メンバー】2名(大川@栃木)、※3日目は小林@郡山夫妻、管理人及びスタッフ計7名で下山する
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、小屋泊
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】一切経山1949m、前大巓1,911m、蓬莱山1,802m、高山1805m、
【天候】(11日)曇り時々雪、(12日)曇り時々晴れ(13日)晴れ
【温泉】土湯温泉「錦滝旅館」500円
【行程と参考コースタイム】
(11日)吾妻スキー場リフト終点9:15〜五色沼11:45〜吾妻小舎14:30
(12日)吾妻小舎8:45〜姥ヶ原〜前大巓〜酸ガ平小屋(昼食)12:40〜蓬莱山〜吾妻小舎15:00
(13日)吾妻小舎9:45〜鳥子平10:20〜高山1130〜フンドシ(1240m付近)12:45〜林道13:35〜土湯温泉14:40着
     土湯温泉(タクシー)吾妻スキー場

【概要】
今回は栃木在住の大川氏と一緒の吾妻連峰である。いつか吾妻小舎をベースにのんびりとテレマークスキーを楽しみたいと考えていたところだったので大川氏からの誘いはありがたかった。土曜日の早朝、吾妻小舎管理人の遠藤さん宅に集合して、小舎の女性スタッフ二人と共に計5人で登ることになった。一週間前は悪天候と単独のラッセルに途中で撤退していたが、今日は5人もいるので心強いばかりだ。上空には青空が広がり天候の心配もなさそうであった。

リフト終点で早速シールを貼り登り始めると正面には一切経山や家形山が望めた。幸いに一人分のトレースがあるのでラッセルの心配はなかった。それでも黙々と先頭を登る大川氏の後をついていると次第に汗が滲んできた。慶応山荘への分岐を過ぎ、大根森への急斜面を登っていると、途中で単独の人に追いついた。中にはテントも入っているような大きなザックを担いだ若いテレマーカーである。彼はリフトの運転前からゲレンデを登り始め、一人でラッセルをしてきたというから驚いた。(帰宅してからわかったことだが、この単独行の人はつい先日私のサイトのBBSを訪問してくれた「たつさん」であった)

大根森からは森林限界となり小雪を伴った強風が吹き荒れている。強烈な寒さは一瞬にして指の先の感覚が無くなるほどだった。強風に吹き飛ばされないように踏ん張りながら家形山と大岩とのコルを通過して五色沼におりてゆく。パラダイスからの急斜面では途中何回もスリップするのでシール登高に苦労した。一切経山と前大巓とのコルまでくれば浄土平も近い。ここでようやくシールをはずすと酸ガ平小屋まではひと滑りだ。酸ガ平小屋付近は激しい風のために雪が少なく、鎌沼へと伸びる木道も一部むき出しになっていた。酸ガ平小屋からは蓬莱山をトラバースし、南東斜面に回り込む。適度な斜面と柔らかそうな雪面が浄土平まで続いており、この斜面ではみんな思い思いに滑降を楽しんだ。しかしモナカ雪ほどではないけれど妙に雪が重く、私は雪質の悪さとザックの重さを嘆きながらこけまくるばかりだった。浄土平からは再びシールを貼り、一路吾妻小舎へ向かった。

約3週間ぶりに訪れた吾妻小舎はすっかり雪に埋もれていた。管理人の遠藤さんは小屋へ着くなり入口を掘り出したり、大鍋を出してきて水作りのための雪を確保したりと忙しい。全く人気の無かった部屋は氷点下の気温だったが、ストーブに火が入ると徐々に部屋の中が暖まった。この日の宿泊は遭難救助訓練のために登ってきた吾妻山岳会の6名と我々2名の計8名であった。1階の食堂では山岳会の人達と遠藤さん達の宴会が早速始まったが、私は大川さんと二人で静かな夕食を楽しんだ。そして夕食後はウィスキーのお湯割りを飲みながら大川氏と夜遅くまで山の話しに耽った。寝る前に外の寒暖計を見てみると氷点下12度まで下がっている。澄み切った夜空には数え切れないほどの星が瞬いていた。


翌日は大川氏と二人で谷地平周辺の散策を兼ね、テレマーク日帰りツアーをすることにした。昨夜の星空を考えると好天に恵まれるかと思われたが、上空には薄雲が多く風が強い日だった。それでも崩れそうな天候ではないので、あわよくばいろんな斜面を滑って来ようという目論見である。一緒に泊まっていた吾妻山岳会の人達は、吾妻小富士の北斜面で遭難救助訓練をするのだといって朝早めに小屋を出て行った。

大川氏と私は早速シールを貼り、スカイラインを横切り樹林帯に入っていった。兎平からは東吾妻山の裾野をアップトラバース気味に進み、沢を二つ越して蓬莱山の西側の高台に向かった。樹林帯を抜けるとそこは強風が吹き荒れる姥ヶ原だ。樹林帯の中でも相当な風が吹いていたが、この姥ヶ原の風の強さはハンパでなく、クラストした斜面を気合いを入れて進んだ。何回も向かい風に押し戻されそうになりながら高みに登り切ると、ようやく前方に谷地平付近が望めるようになる。しかし谷地平への斜面には思ったほどの積雪がなく、樹林が混んでいるのでとても滑れるような状態ではない。私たちは雪が少ないこととまだブッシュが埋まりきっていないことから谷地平への散策はあきらめ、そこから前大巓に向かった。

登っているときには青空も見えていたのだが、山頂が近づくにつれていつのまにか西側から薄黒い雲が広がりだしていた。前大巓の山頂からはあいにく吾妻連峰の主稜線は見えなかった。山頂付近は強風のためにほとんどアイスバーンであったが、回り込んだ南東側には積雪も多く、斜面はふかふかのパウダーである。私達は無木立の斜面に早速きれいなS字のシュプールを刻んだ。あまりに快適なのでザックをデポして、山頂へ再び坪足で登り返しては3本ほど滑った。そして1時間程滑ってから酸ガ平小屋に下った。昼食後は蓬莱山の山頂直下を滑って浄土平まで下る。午後になるとようやく風も弱まってきていた。青空にくっきりとした蓬莱山や一切経山が美しかった。

吾妻小舎に戻ると部屋には誰もおらず、ストーブだけがチロチロと静かに燃えていた。吾妻山岳会の人達と共に救助訓練に出かけていた管理人の遠藤さんはすでに小舎に戻っていた。今夜の宿泊は我々二人だけかと思ったらこれから二人の登山者が登って来るという。ストーブを囲みながらビールを飲んでいると二人の登山者がさっそく登ってきた。なんとなくその人達に見覚えがあるなあとよく見たら、驚いたことに郡山の小林夫妻であった。この吾妻小舎で小林さんと遭遇するのは3回目である。このあと単独の女性に続き、明月荘から谷地平を越えてきた5人のパーティも加わり、この日は予想外に賑やかな山小屋となった。その夜、私達は小林夫妻とともに遠藤さんから招待され1階の食堂で夕食を共にした。


3日目は朝から快晴の空が広がった。わずかに風があるだけでようやく最終日にして好天に恵まれた形だ。今日は遠藤さん達も高山を下ることになり、小林さん夫妻を含めた7人で一緒に土湯温泉まで下ることになった。昨夜一緒に泊まった女性一人と5人のパーティは、やはり土湯温泉に下るといって8時過ぎには小屋を出ていった。遠藤さん達は小屋の後かたづけや掃除などの仕事があるのですぐには小舎を出られない。みんなで掃除などを手伝ったりしたものの、それでも出発は10時近くになった。

吾妻小舎を出るとまるで春山のような穏やかな日差しが降り注ぎ、快適なスノーハイクのようだった。巨大な反射板の立つ高山の山頂で小休止後、そこからはそれぞれ好き勝手に下って行くだけである。私は昨日の快適なターンも忘れて、またしてもそこらじゅうでこけまくった。転ぶと深雪に体ごと潜ってしまい、ザックが重いこともあってなかなか起きあがることができない。こけるたびに体力ばかりが消耗した。通称「フンドシ」ではいつものように大休止した。「フンドシ」はこのコースのほぼ中間地点にあたり、ここまでくだるとようやくホッとするところだ。4月のような陽光のもとでの休憩は至福の時間だった。「フンドシ」からはしばらく樹林帯を下った。消耗しきった体力は簡単には快復するはずもなく、林道に飛び出す頃にはへろへろになっていた。最後の方はボーゲンさえもできないほど疲れ切っていた。心配していた林道の除雪はまだなされておらず、土湯温泉まで問題なくスキーで下れるのはうれしかった。不動ノ湯のゲートからしばらく林道を滑り途中でスキーを脱いだ。薄暗い登山道をどんどん下るともう土湯温泉が目前に迫っていた。


強風が吹き荒れる家形山(右)と五色沼のコルを通過
[2003.1.11]



小雪が舞う吾妻小舎
[2003.1.11]



前大巓山頂(奥は東吾妻山)
[2003.1.12]



前大巓のパウダーを滑る大川氏
[2003.1.12]



鳥子平から望む東吾妻山
[2003.1.13]



通称「フンドシ」での休憩風景
[2003.1.13]


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