山 行 記 録

【平成14年12月21日(土)〜22日(日)/吾妻連峰 吾妻スキー場〜吾妻小舎】



スカイラインから眺める快晴の一切経山



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、吾妻小舎泊
【山域】吾妻連峰
【天候】21日(曇り)、22日(快晴)
【温泉】高湯温泉「安達屋」500円
【行程と参考コースタイム】
(1日目)吾妻スキー場10:00〜不動沢橋11:10〜浄土平13:55〜吾妻小舎14:20
(2日目)吾妻小舎8:20〜吾妻スキー場10:40

【概要】
予定では吾妻スキー場のリフト終点から五色沼経由で吾妻小舎へ行くつもりだったのだが、昨日オープンのはずのスキー場には雪はわずかしか見あたらなく、リフトはまだ動いていなかった。あたりには人の姿はなくスキー場もゲレンデも森閑としている。10月末から降り始めた今年の異常なほど早い積雪が今はウソのようであった。しょうがないので除雪終了地点に車を留めて、スカイラインをスキーで歩くことにした。車は1台だけ駐車中で、2人分のスキーのトレースが続いていた。今日は雲が広がり日差しもなく膚寒い空模様である。しかし視界ははっきりとしておりまた風もないので吾妻小舎までは問題なく行けそうであった。

歩き出した地点の標高は約1000m。浄土平までは600m程の登りでたいしたことはない。しかしスカイラインを歩く距離は10kmほどあるので結構きついスノーハイキングともいえそうである。道路上の積雪はそれほどでもないので快適なのだが、勾配が緩やかなだけに単調な登りが延々と続く。途中、ショートカットできる箇所が2カ所あったものの、ほとんど道なりに歩かなければならず、額や背中からは汗が流れた。2時間ほど歩き続け、標高1340mと書かれた「天狗の庭」の標注のあるところで道ばたにザックを下ろし休憩をとった。左手奥には端正な吾妻小富士が見えている。地図を見ると今日の行程のちょうど半分にあたる地点である。吾妻小富士の左手には高山と箕輪山が見えていた。高山はほとんど雪がないのか山肌は黒く、箕輪山は高山とは対照的にまっ白い雪に覆われていた。

天狗の庭から浄土平までは2ヶ所ほど雪が途切れている箇所があり、そこはスキーを担いだ。さらに歩いてゆくと硫黄の匂いが漂い始め、一切経山の裾野付近まで来たところで、先行していた二人組にようやく追いついた。当然ながら二人は一般の登山者だろうと思っていたのだが、声をかけてみると一人は吾妻小屋の管理人の遠藤さんである。今日は駐車場を9時に出発し、連休に備えてスタッフの人と一緒に登ってきたのだという。今日の宿泊をお願いしたところ、他に予約は入っていないので今夜は一人だけだろうということだった。連休の混雑を覚悟してきたのに誰もいないとは意外だった。見上げると浄土平のレストハウスの一角が見えた。私は先に行かせてもらい、一切経山の直下からは雪原に下りて、浄土平への急斜面をまっすぐに登った。

久しぶりに訪れた浄土平は冬の荒涼とした風景が広がっていた。正面にはなだらかな東吾妻山が望めた。明日はこの東吾妻山の新雪を滑るつもりできたのだが、どうもスキーが出来るほどの雪はなさそうである。右手に続く蓬莱山は東吾妻よりも雪は多そうだが、それでもスキーで滑るには樹林が障害になりそうだった。浄土平のベンチに腰を下ろしていると、遠藤さん達は一休みもせず、小屋に向かっていった。

吾妻小舎の周辺も雪は驚くほど少なかった。冬場には使えなくなる2階への階段もまだ雪に埋もれてはいない。しばらく誰も住んでいなかったためだろう、小屋の中は冷え冷えとしており、遠藤さんは早速ストーブに火を入れてくれた。一人なのにもったいないなあとも思ったが、温度計を見るとなんと氷点下であり、部屋はしばらく暖まらなかった。終日、曇り空だったせいか、小屋の中は既に日没後のような薄暗さだった。ビールを飲みながら夕食までの時間をつぶしていると遠藤さんはランプを早めに灯してくれた。

おでんを一人分作りながら夕食の準備を始めていると、階下から一緒に夕食をどうぞと招かれた。管理人室に入るとテーブルには手作りの料理が並べられ、まるで食事付きの豪華な山小屋に宿泊しているような錯覚に陥った。食べきれないほどの料理に私のおでんと夕食用の赤飯は結局食べずに残ってしまった。その夜は時間の経つのも忘れ、9時近くまで3人で一緒に食べて飲んで楽しいひとときを過ごした。

天気予報では夜半から雨か雪が降るというので降雪を期待しながら床についたものの、窓の外は煌々とした月明かりで一晩中明るかった。朝方、カーテンを開けると青空が広がっており、まぶしい日差しが部屋の中に差し込んだ。雪は全く降った様子はなく、今日の東吾妻山でのパウダースノーは諦めるしかなさそうだった。私はおでんの残りをストーブにかけ、昨夜残したアルファー米の赤飯を温めながらのんびりと朝食の準備をした。

小舎を出るとき、遠藤さん達が見送ってくれた。今日は宿泊の予約が入っているそうなので、またにぎやかな小舎の一日が始まることだろう。今度はもう少し雪が降ったときに訪れることを約束して吾妻小舎を後にした。小舎からは東吾妻山の裾野を巡りながら浄土平に出た。昨日直登してきた浄土平からスカイラインに出るまでの斜面がテレマークらしい滑りを楽しめたぐらいで、スカイラインに出るとそこからは道路を下ってゆくだけである。緩やかな登りがあったりスキーを担いだりしたものの、後は滑って行くだけなので登ってきたときとは比較にならないほど楽だったが、この単調な滑りは歓喜を伴うテレマークスキーにはほど遠いものだった。雲一つない快晴の空を見上げながら、私は雪が待ち遠しくてならなかった。


浄土平への急坂を登る吾妻小舎の管理人



吾妻小舎
雪はまだかなり少ない



朝の浄土平(2日目)



東吾妻山(左)と蓬莱山(浄土平より)



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