山 行 記 録

【平成14年11月11日(月)/御霊櫃峠〜大将旗山〜額取山(安積山)



額取山の山頂
右奥は磐梯山



【メンバー】単独
【山行形態】冬山装備、日帰り
【山域】猪苗代湖周辺
【山名と標高】
大将旗山(たいしょうはたやま)1,056m、額取山(ひたいとりやま)1,008.7m、
【天候】晴れ
【温泉】福島県郡山市 ごれいびつ荘「北ノ湯」500円
【行程と参考コースタイム】
御霊櫃峠9:00〜黒岩山9:30〜大将旗山9:50〜額取山10:40着/11:15発〜大将旗山12:00着/12:10発〜御霊櫃峠12:45

【概要】
額取山は郡山市の西に連なる山脈の一角の山で、地元では安積山(あさかやま)とも呼ばれ親しまれている山である。御霊櫃峠(ごれいびつとうげ)からの道標には安積山の表示しかなく、額取山の名前は山頂にきてようやく目にすることができる。それも安積山との併記なのだから本来は安積山の名前でガイドブックに載せるべきではないかとも思えるほどだった。この山脈は会津と中通り地方をわけていることからこの額取山も冬型の気圧配置の影響を受けやすいという。麓から山並みを見上げると山肌は白く覆われて、はやくも雪が降り積もっている様子が伺えた。

ガイドブックによると、標高が約1000mしかないのに、森林限界を超えているので展望が抜群の山とある。登山口は猪苗代湖側からもあるのだが、大将旗山から額取山までの稜線歩きが楽しみなので、わざわざ遠回りをして今回は御霊櫃峠から登ることにした。御霊櫃峠への道路には一部積雪もあって、冬タイヤでないと安心して通れなくなっていた。登り切った所が登山口の御霊櫃峠である。すぐ近くにはNTTの電波塔が建つ。今日は久しぶりに寒気がゆるみ、郡山市内は朝から気持ちの良い青空が広がっていた。

峠からガレ場の坂道を上ると、ピークの傍らには風の神、雨の神の祠がひっそりと佇み、前方には大きな山塊がそびえ立っていた。一瞬、額取山だろうかと思ったが、まさかそんなに近いはずはなく、地図をみると手前のピークの大将旗山のようである。額取山はこの大将旗山の陰に隠れてまだ見えない。大将旗山までは登山道に降り積もった雪が帯状にはっきりと見えているので、初めての雪山でも迷うこともなさそうだった。ここから雪道が始まるのでスパッツを付けた。雪道にはほかに踏跡もなく今日は一番乗りのようである。また昨日も穏やかな天候だった筈なのに誰も登った形跡がなかった。

いったん下った後で小さなピークを一つ越し、急坂を登り返すと黒岩山に着いた。振り返ると猪苗代湖が広がり、湖畔のすぐそばに聳える山は磐梯山だった。磐梯山の中腹から上は真っ白に冠雪しており、陽光を受けて輝いている。前方には大将旗山が大きく聳えていた。この辺の積雪は15〜20cmぐらいで、気持ちの良いスノーハイキングである。気温はどんどんと上昇しており、いつのまにか背中から汗が流れ始めている。途中で我慢しきれなくなり、ウールのシャツを脱いで冬用下着一枚になった。雪山と入っても今日の天候ではTシャツ一枚でも十分なほどの暖かさだった。

大将旗山もまた展望が広がる山であったが、縦走路中の最高峰にもかかわらず、それほど注目もされないとは不遇な山のようである。山頂から大きく下ると額取山までの稜線歩きだ。途中には大小のピークがいくつかあって結構な距離があるが、尾根道は遮るものがないので展望を楽しみながら歩くことが出来る。まだ誰も歩いていないバージンスノーを歩けるのは今日一番乗りした者へのご褒美だろうか。積雪はだんだんと増してきていたがそれでも30cm程度なので苦になる程ではなかった。いくつかのアップダウンを繰り返しながらたどって行くとやがて山頂直下の急坂となり、雪道のガレ場をひと登りするとケルンのある額取山の山頂に着いた。ここまでほとんど休まずに歩いて1時間40分かかった。

山頂の少し先には三角点があるものの標注は倒れていた。山頂からは西に猪苗代湖と磐梯山、北には安達太良連峰や吾妻連峰が望める。その後ろには飯豊連峰の真っ白な山並みが青空に浮かび、南には那須連峰、その手前には二岐山が聳えていた。福島県のど真ん中からの眺望はまさに圧倒的である。春から秋にかけて多くの登山者で賑わうのも頷ける気がした。昼食には少し早かったが私はケルンに戻るとザックをおろして早速お湯を湧かし、カップラーメンを作ることにした。おだやかな日差しが降り注ぐ山頂での一時は、ただ座っているだけで時間が経つのを忘れてしまいそうだった。

コーヒーを飲みながら後かたづけをしていると、女性の登山者が一人、ひょっこりと登山道から現れた。誰もいない山頂で今日は間違いなく一人切りだろうと考えていた矢先だったので驚いてしまった。それも聞いてみると山形の人で、雪が深ければあきらめて帰るつもりだったのだが、踏跡があったのでついこの山頂まできてしまったという。

山頂を後にすると風は全くなくなっていた。気温はますます上昇してきており、雪道は早くもぬかるみ始めている。こんな天候に恵まれるのも、この時期はめったにないのだと思うと、いつもはうんざりするほどのアップダウンも今日は惜しみながら歩いた。春のような陽気に誘われたのか、大将旗山付近から登山者が一人、二人と歩いてくるのが見えた。登山口に戻るまでに今日は5人の単独登山者に出会った。

冬山ではなるべく汗をかかないようにしているのだが、それでも今日は汗で全身びっしょりと濡れている。私は黒岩山を過ぎると早く汗を流したくていつのまにか急ぎ足になっていた。


縦走路の途上から望む額取山(右奥)
バージンスノーを歩けるのは一番乗りの特権だ


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