山 行 記 録

【平成14年10月6日(日)〜7日(月)/朝日連峰 日暮沢から清太岩山、竜門山】



竜門山から下る途中で新築されたばかりの竜門小屋を俯瞰する
この先、寒江山、以東岳へと縦走路が続く



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(竜門小屋)
【山域】朝日連峰
【山名と標高】清太岩山1,465m、ユーフン山1,565m、竜門山1,688m、
【天候】6日(晴れ時々曇り)、7日(雨)
【温泉】山形県西川町 水沢温泉館200円
【行程と参考コースタイム】
(6日)日暮沢小屋 8:30(620m)〜清太岩山 10:40(1465m)〜ユーフン 11:15(1565m)〜竜門山 12:00(1688m)〜竜門小屋 12:15(泊)
(7日)竜門小屋 6:30〜日暮沢小屋 9:00

【概要】
昨日の古寺鉱泉から引き続き朝日連峰を登る。今日は先月の9月29日に完成したばかりという竜門小屋が目的である。竜門山までならば日帰りも十分に可能なのだが一応小屋泊りの予定でパッキングをした。昨日の疲れが残っているので、いわば骨休めの朝日連峰という気分である。ただ昨日からの好天も今日限りであり、明日は間違いなく雨が降る予報が出ている。天候は早くも下り坂であった。

日暮沢から登るこのコースは朝日連峰でも最短で主稜線に上がることが出来ることから、ここも多くの登山者が訪れるところだ。日暮沢小屋前の駐車場は多くの車で溢れていて1台の余地もないほどだった。準備を終えると早速小屋に登山届けを提出して歩き出した。最初から急登が続き、木の根がむき出しのヤセ尾根は息をつく暇もないほどの急坂であきれるほどだ。天候は下り坂とはいえ昨日よりもだいぶ青空が広がり、朝から日差しが強かった。たちまち汗がほとばしったが、爽やかな秋風が尾根の上を流れており快適な登りである。

登山道は黄色に色付いたブナの葉が美しく、右手からは見附川を流れる音だけが聞こえた。1330m付近で樹林帯から抜け出すと急に視界が広がり、振り返ると遥かかなたに根子の集落が見えた。ここからは月山が間近に望めるところだが、残念ながら薄雲に隠れて見えなかった。鮮やかな紅葉に包まれた清太岩山が目前で左奥にはひときわ大きいユーフンが聳えていた。清太岩山がもうまもなくという付近で登山者が大勢下ってくるところに出会った。よく見ると昨日の古寺山や小朝日で出会った人達である。相手も私を少し覚えていたらしく、今日あらためて日暮沢から登ってきたことを話すと驚いていた。

清太岩山からは小朝日岳や大朝日岳、そして西朝日岳から竜門山、寒江山、以東岳と続く大パノラマが一望のもとである。前方には竜門小屋も見えるところだ。しかし山頂は意外と冷たい風が吹いていて、のんびりと休憩する気分ではなかった。山頂からユーフンとのコルまでいったん下り、急坂を登り返せば花崗岩の散乱するユーフン山頂である。山頂付近はなだらかな稜線とハイマツに覆われており、ここはいつきても気持ちの良いところだ。もう竜門山は目前なので少しも急ぐ必要はなく、山頂からの展望やまわりの紅葉をのんびりと楽しんだ。ユーフンからは小さなアップダウンを繰り返しながら竜門山山頂に到着。竜門小屋まではもうまもなくだった。

竜門小屋は以前と同じような場所に新しく建て替えられており、古い小屋はもうなくなっていた。以前は外トイレだったものが今度は小屋の中に設けられている。入口を入った右側に前室とトイレ3室とがあり、他の最近の新しい小屋と同様、ここも水洗式トイレになっている。また小屋の内部は階段の位置など今までと変わりがなかったものの、二階に上がってみるとトイレが一階部分に増設された分だけ広々としていた。宿泊の定員は50人である。また小屋前の水場は石組みの水槽風に作り替えられていた。

私はひととおり新しい小屋を確認し終えると、外にでて焼きソバを作り昼食をとった。食べ終えると陽が一気に陰り、あわてて炊事道具を片づけた。西側からは雨雲が近づいていた。それでも雨はまだ降らなかったが、いったん薄雲に遮られた太陽はその後顔を出すことはなかった。小屋の周りで休憩していた登山者も一人去り、二人去りすると誰もいなくなってしまった。

山形県側はいつのまにかガスに覆われてほとんど視界がなくなっていた。その真っ白いガスが何回も稜線を乗り越えようと試みるのだが、新潟県側の強い風に追い返されている。そんな光景を眺めていると他に何もする事がなくなり、夕方までは文庫本を読んで時間をつぶした。

日曜日とは言え、夕方になれば何人かの登山者がやってくるだろうと思って時々窓の外を眺めるのだが、誰もやって来る気配はなかった。明日の雨模様を考えれば当然の様な気がしたが、結局今日の宿泊は私一人だけであった。その夜は、更けてゆくにつれて風が強まり、うなり声のような風音は一晩中絶えなかった。そして夜半から降りだした雨は新しい小屋の窓を激しくたたいた。

一晩中、吹き荒れた雨や風は翌日になっても納まらなかった。ガスはさながら風雪のような状況を呈して、視界は全くなかった。この雨は予定していたのでそれほどがっかりしなかったものの、やはり気分は晴れなかった。ラジオの天気予報によれば、午後からは快復するようであったが、それまで待つわけにも行かない。気温はかなり低いので冬用の手袋をザックの奥から出し、上下の雨具に身なりを整えると、午前六時半に竜門小屋を後にした。外に出てみると激しい風は台風を思わせるほどで、その猛烈な風は清太岩山まで続いた。途中何度も立ち止まっては倒されないように踏んばらなければならなかった。この風でせっかくの紅葉もほとんど落葉してしまい、昨日までの美しさは見る影もなくなっている。樹林帯に入ると風はようやく弱まったが、雨は止むことはなかった。激しい雨では休憩する気持ちにもなれず、ほとんど休みなしに下り続けた。そして午前九時、雨が降りしきる中、日暮沢小屋に着いた。


inserted by FC2 system