山 行 記 録

【平成14年9月15日(日)/赤倉登山口から真昼岳】



真昼岳山頂
笹原の稜線が続く



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り(前日、田沢湖高原温泉「ゆぽぽ山荘」に宿泊)
【山域】真昼山地
【山名と標高】真昼岳1,059.9m
【天候】曇り後雨
【温泉】秋田県角館町「かくのだて温泉」500円
【行程と参考コースタイム】
赤倉登山口9:30〜やせづる尾根1035〜上川原分岐10:55〜真昼岳11:10着/11:25発〜赤倉登山口12:40

【概要】
真昼岳は岩手・秋田県境に位置する真昼山地の名山として知られており、昨年登った和賀岳とともに、標高の割合には森林限界が驚くほど低い高山的な山容を示している山である。「東北百名山」(山と渓谷社、1990年版)では県境の峰越峠からのコースを紹介してあるが、それだと山頂までは標高差は100mほどしかないのでちょっと物足りなく感じていた。昨夜は田沢湖高原温泉に泊まったこともあって、今回は登山口まで一番近い赤倉口から登ってみることにした。他のガイドブックをみると、岩手県側の沢内村前郷から真昼岳に登り、秋田県側の赤倉口に下山するコースを紹介しているものが多く、赤倉口からの登りの詳しいコースガイドはない反面、むしろ未知の山へ入る時の新鮮さを感じながら登山口に向かった。

赤倉川を遡りながら林道を進むと鳥居の近くに車が3台あり、さらに林道終点まで来ると4台駐車中であった。昨夜泊まった山荘の人からは真昼渓谷にはほとんど人が入らないはずだと聞いていたので、意外に多い車の数に安心感をおぼえた。駐車場の標高は約300mで山頂までは760mの標高差がある。4つある真昼岳へのコースでも一番標高差はあるようで、登山口の意外に低い高度にやはり峰越峠からにすればよかったかなと少し後悔した。

コースは沢を渡渉したり左右に渡り返しを繰り返しながら赤倉沢を遡って行くようだった。やがて沢から離れ始めると杉林の登りとなり、標高600mぐらいからは美しいブナ林と変わった。ブナの木には「真昼ブナ林」と看板がぶら下がっていて、少し先には同じ名前の標注も立っていた。昨日の好天はまだ続いていたが上空には雲が多く、だんだんと薄曇りとなっていた。登山道は左手のピークを卷くようにしながら平坦な道がしばらく続いた。急坂は少ないかわりに距離が長く感じられるコースである。そしてジグザグの道を登りながら急坂に汗を流していると急に視界が開ける地点にでた。「やせづる尾根」の標識があり北側は急峻な崖となって切れ落ちている。右手には大きな真昼岳の山塊が樹林の間から見え隠れしていた。

樹林帯は徐々に潅木帯となって最後の急斜面をひと登りすると稜線に飛び出し、峰越峠からのコースとの上川原分岐に出た。付近はチチマザサが広がるなだらかな傾斜地で、ここから真昼岳まではひと登りのようである。ほとんど休憩無しに登ってきたのでここで腰をおろして少し行動食を食べながら小休止した。涼しい風が吹き渡る気持ちの良い稜線だった。

分岐からは見晴らしのよい稜線歩きが山頂まで続いていた。まもなく銀色の小屋が見えてくると山頂は目前だった。銀色に輝いていたトタン小屋は中に三輪神社を奉っている小屋であり、あるガイドブックにはこの小屋を避難小屋代わりに使えると書かれてあったが施錠されているので利用はできないようであった。山頂では多くの登山者でにぎわっていた。その数はおよそ20人くらいだろうか。眺めていると岩手県側からもまだ登ってくる人が多くいるようであった。私はまだそれほど腹が空いていなかったが、パンを1個食べて早めの昼食とした。

山頂には展望盤が設置されていて、遮るものがない真昼岳からは眺望が思いのままだった。岩手県側には和賀岳を始めとしてうねうねとした山並みが連なっており、秋田県側はそれとは対照的で、眼下には見渡す限りの田園風景が広がっている。しかし遠方の山々は雲に隠れて見えなかった。

汗の引くのを待っていると、雷雲がこちらに向かっているようだと誰かが叫んでいるのが聞こえた。西の空をみれば確かに薄黒く大きな雨雲がいつのまにか西側から近づいている。私は天候が悪化する兆しをみて急いでザックを片づけ、山頂を慌ただしく下り始めた。すると稜線の分岐を左に折れるとまもなく雨が降りだし、急斜面では一気に大降りの雨となった。それは見る間に視界を覆い隠すほどの強い雨降りとなり、ブナ林は白く煙って数メートル先も見えないほどになった。私はあわててもしょうがないなとあきらめ、途中で雨具を着た。身を固めてしまうと気持ちが落ち着き、私は日没後のように暗くなったブナ林の中を下りながらも、雨具の上に立て続けに降り続ける雨音を不思議に心地よく感じていた。



真昼岳山頂
背後に見えるはずの鳥海山や丁岳の山並みは雲に隠れている。
この後、急速に天候が悪化する。


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