山 行 記 録

【平成14年9月14日(土)/鶴ノ湯から大白森】



草紅葉の大白森山頂
正面は曲崎山、右手奥は八幡平である



【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】八幡平
【山名と標高】小白森山1,144m、大白森1,215.6m
【天候】晴れ
【温泉】乳頭温泉郷「鶴ノ湯」400円
【行程と参考コースタイム】
鶴ノ湯温泉9:25〜田代平分岐10:50〜小白森山11:15〜大白森12:00着/13:30発〜田代平分岐14:25〜鶴ノ湯温泉15:30

【概要】
山頂部に広大な高層湿原を持つ大白森は秋田駒ヶ岳と八幡平の間に位置しており、乳頭山から八幡平への縦走路の途中にあるピークのひとつである。私は以前から登ろうとしながらもなかなか実現できなくて久しく温め続けてきた山でもあった。登山口である鶴ノ湯温泉は乳頭温泉郷の中では最も古くから栄えた温泉で、茅葺きの建物が軒を連ねる景観は、乳頭温泉郷でも特に秘湯の趣があり風情を感じさせる温泉場だ。私達の今日の下山後の楽しみはもちろん鶴ノ湯である。

この連休は朝日連峰を予定していたものの、あいにくの雨模様が予想されていることから直前になって確実に晴れそうな秋田の山に変更した。予報どおり好天が広がった鶴ノ湯の駐車場には朝早い時間にもかかわらず大勢の観光客で賑わっていた。鶴ノ湯温泉の駐車場には大白森の案内板が立っていて、登山道は目の前の鳥居をくぐってゆくようだった。登山者は他に3人ほど登る準備をしているだけで他には見あたらなかった。

早速、喧噪の駐車場を後にすると鶴ノ湯神社からはいったん下って林道にでて再び登山道に入った。複雑だが標識があるので迷うことはなかった。道はしっかりとしていて大分歩かれている様子である。金取り沢とよばれる雑木林の急坂を登り1時間もするとだんだんと見晴らしがよくなった。振り返れば秋田駒ヶ岳が背後に聳えており、気持ちの良い登りが続いた。アップダウンを繰り返しながらだんだんと標高を稼いでゆくとしっとりとしたブナ林を登ってゆくようになった。道ばたにはオニアザミとエゾリンドウ、リュウキンカなどが咲いている。今の時期はどこも似たような植物しか咲いていないので少し寂しい感じだ。ブナなどの広葉樹は色づき始めており秋が少しずつ深まっているようであった。

途中の蟹場温泉や田代平方面への分岐から左に進み、ネマガリタケの切り株が目立つ広い登山道をしばらく登ると木道が現れた。潅木に囲まれた平坦な小白森山の山頂であった。左手に小さな湿原と池塘があるとはいえ、展望もないので特に感激もなく休憩はせずに通過した。

いったん小白森山からは下りになった。そして鞍部から少し勾配がきつい急坂を登ると再び木道が現れ、視界が一気に開けた。そこは広大な湿原が広がっている大白森の一角で、徐々に湿原の全体像がはっきりとするにつれ、始めの驚きはやがて大きな感動へと変わった。草紅葉の始まった湿原の先には秋田駒ヶ岳から乳頭山への縦走路が伸びており、そして右手には雲が絡んだ岩手山が大きく聳え、その先には八幡平や大深山、曲崎山の山々が続いている。その予想をはるかに超える湿原の広さと周囲の眺望には息を呑むばかりで、ちょっと言葉がでてこなかったのである。草原のちょうど中間地点と思われるところに大白森の山頂を示す標注が立っていた。ここはピークらしいピークもない、平らな台地状の山頂なのだが、この大白森に立ってこの光景を目にすれば、ピークとか標高がいくつなどということは取るに足らない些末なことに思えた。私は先ほどの小白森山では落胆させられていただけにこの光景にはまさに圧倒されるばかりであった。

私達は山頂の標識から少し先の木道の一角にザックを下ろすとさっそく弁当を広げることにした。柔らかい日差し、清涼な空気、爽やかな風が吹き渡る大白森は山上の楽園と呼ぶにふさわしい場所で、周囲の山々を眺めながらの食事は至福の時間となった。松川温泉まで縦走する予定だという大きなザックを背負った単独の人が私達の前を通り過ぎてゆく。今日は連休にもかかわらず登山口で出会った3人組の他には数えるほどしか出会わなかった。

食後、ザックを枕にして横になるとあまりの気持ちの良さについうとうととしてしまい眠ってしまった。雑誌を読んでいたカミさんもいつのまにか横になっていた。こんなにのんびりとしたのは久しぶりのような気がした。私は心底この山頂から下るのが嫌になり、カミさんから声をかけられても容易に起きあがることができなかった。


秋田駒ヶ岳を背後に小白森山への道を登る




乳頭温泉郷「鶴ノ湯温泉」


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