山 行 記 録

【平成14年8月26日(月)/神坂峠から恵那山】



千両山のピークから望む恵那山



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り(前日、中央道の神坂PAで車中泊)
【山域】中央アルプス
【山名と標高】恵那山(えなさん)2,190m
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
  神坂峠6:20〜千両山6:45〜鳥越峠7:00〜大判山7:30〜旧道合流点(一ノ宮)9:00〜恵那山避難小屋9:20
  〜恵那山9:30着/10:10発〜旧道合流点10:30〜大判山11:20〜鳥越峠11:50〜千両山12:10〜神坂峠12:30

【概要】
岐阜県の東濃地方と長野県伊那谷の境に位置する恵那山は中央アルプス南端にあたり、文豪、島崎藤村の小説「夜明け前」にも登場している山である。その山容はどっしりとした量感に溢れてはいるが、遠くから眺めるとクジラが大きく横たわっているような形状にも見えてどこが山頂なのかちょっとわからない。予定では比較的登りやすい黒井沢口から登るつもりでいたところ、昨日、檜尾避難小屋で同宿した人から黒井沢コースは林道工事で通れないと言うことを聞き、急遽、神坂峠から登ることにしたものである。神坂峠から山頂までは標準で4時間〜4時間30分ほどの所要時間だ。標高差そのものはたいしたことはないものの、アップダウンがかなりあるので体力的にはきついコースであった。

まず恵那山登山口である神坂峠まではアプローチが大変であった。林道の入口がわかりずらく、またいろんな林道が交差しているので登山口に到着するまでは不安を抱きながらの運転が続いた。神坂峠から3キロメートルほど手前で登山者カードを記入するところがあり、立て看板には恵那山登山の注意書きがあった。登山者が他に見あたらないことからもしもの場合を考えてしっかりと登山届を記入した。

神坂峠の標高はすでに1570mもある。気持ちの良い山稜を進むと少しの登りで千両山のピークに着いた。ここからは前方にどっしりとした恵那山が望めたが、間には顕著なピークがいくつか続いていて目的地まではまだまだ遠いことを実感させられた。ピークからは下り坂となり下りきったところが鳥越峠であった。ここは登山口より標高は低いのである。高度計を眺めても少しも増えていないのでがっかりした。朝露で濡れた笹ヤブをかき分けるところもありスパッツをしていてもズボンが濡れた。しばらくトラバース道が続き登り切ると大判山に着いた。ここは見晴らしもよく恵那山の眺めが良いところだ。ようやく腰をおろして休憩する気分になり菓子パンの行動食をとりながら小休止した。昨日の空木岳も天候に恵まれたが今日はそれ以上の好天が広がり、気温はすでに30度を超しているようだった。汗が止めどなく流れ背中はびっしょりと濡れていた。

そこからはいくつかのピークのアップダウンがあり少しずつ高度を増していった。天狗のナギと呼ばれる崩壊地があり、立ち止まると下から吹き上げる風が涼しくてまさに生き返るような心地よさを味わった。やがて木々がだんだんとまばらになり、オオシラビソの原生林の中を登るようになった。苔むした大きな石や倒木が目立つ。昨日の中央アルプスの縦走路とは違って、危険のない極めておだやかな登山道に思わず心が和む。登り切ったところは山頂へ続く稜線の一角で旧道との合流点であった。まっすぐの道は深田久弥が歩いたという恵那神社からのコースだが廃道なので通行不能との看板が立ててあった。合流点からは左折して露岩が多い稜線を歩く。途中、二ノ宮、三ノ宮と小さな祠が奉られてあり、ここは奥ノ宮である頂上への参道となっているのだった。途中、最近建て替えられたばかりの恵那山避難小屋があった。木の香りが薫ってきそうな木造の素敵な小屋で思わず宿泊したくなるような小屋であった。

ようやく到着した恵那山山頂は潅木に囲まれていて残念ながら展望はなかった。山頂には3名の女性グループと男性の単独行者が一人とすでに先客がいたので驚いた。神坂峠の駐車場には他に車もなく登山者がいることなど考えてもいなかったからである。3人の女性達は私と同じく神坂峠から登ってきたらしく朝4時登り始めたという。単独行者は広河原から登ってきたというので、はてそんな登山口はあったかしら?と尋ねてみたら最近出来たばかりの登山道で新しい地図には入っているはずだという。薗原から峰越林道を遡り、その終点が登山口になっているらしかった。

山頂では早速缶ビールを開けた。汗を搾り取られた体に冷えたビールが滲みてゆくのがわかった。これを味噌汁代わりにしておにぎり2個を食べ、食後はいつものコーヒータイムとした。食事をしているうちに四名とも去ってゆきいつのまにか静かな山頂に戻った。展望はないが温かい陽射しが降り注ぐ気持ちの良い山頂だった。

コーヒーを飲み終え、スパッツが乾いたところで下山することにした。登ってくるときには不快だった笹ヤブについた朝露も、気温の上昇とともにすっかり乾いており快適な下山路になっていた。平日でもやはり登山者はいるようで、これから山頂をめざして登ってくる人達もいる。ジリジリと強い陽射しが降り注いでおり、これからでは暑くてたいへんだろうなあ、とちょっと気の毒になる。鳥越峠を過ぎると最後のピークへの登り返しが待っていた。はたしてこんなに長いところを往路では下ったのだろうかというくらいにきつい登りが続き、最後の汗を絞り取られた。千両山のピークにやっとの思いで登り切ると少しの間動けなくなってしまった。ここでは涼しい風が吹いていて、これがなによりのご馳走になった。登ってきたばかりの恵那山を振り返ってみるとさすがに感無量で、長いコースだっただけに久しぶりの充実感に浸った。ここから神坂峠までは笹原の歩きでなだらかで気持ちの良い風景が広がり、こんなところがずっと続けばとおもいながら駐車場に向かった。


恵那山の山頂
一等三角点があるものの展望はあまりない


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