山 行 記 録

【平成14年6月10日(月)/南会津 いわなの里から会津朝日岳】



叶ノ高手付近から会津朝日岳を望む



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】南会津
【山名と標高】会津朝日岳1624m
【天候】晴れ
【温泉】福島県只見町深沢温泉 季の郷「湯ら里」500円
【行程と参考コースタイム】
自宅600=登山口(いわなの里)900(155km)※登山口の標高(530m)

登山口発915〜三吉ミチギ(水場)955〜叶ノ高手1105〜熊ノ平避難小屋1130〜会津朝日岳1215-25〜熊ノ平避難小屋1245-1300〜叶ノ高手1325〜三吉ミチギ1400-15〜登山口1440着

【概要】
会津朝日岳は豊かなブナの原生林と豪雪に洗われた峻険な峰を擁する山として知られている。この只見川流域に位置する山々は、まだほとんど人の手が加えられていない原始のままで残されている山が多く、今も秘峰といえる山が少なくないという。南会津を代表するこの会津朝日岳も、この山頂にいたる登山道や避難小屋は近年になってから整備されたばかりで、それまでは他の山々と同様に奥深くて遠い山だったのである。登山コースは福島県只見町黒谷からさらに8km奥に入った「いわなの里」から登り始めるのが会津朝日岳に登れる唯一のコースとなっている。ここから山頂までは約4時間30分のコース。この会津朝日岳の山開きがちょうど昨日の日曜日に行われたばかりだった。

東北百名山めぐりも今日で3日目である。そろそろ疲れもピークに近い感じだ。とくに今日は朝からほとんど風がない快晴の空が広がり、平地での気温もぐんぐんと上昇している。この暑さでは途中で参ってしまうかも知れないな、という漠然とした不安がつきまとっている。朝の涼しいうちに登り始めたいとは思いながらも、相変わらず自宅を出発するのが遅くて登山口に着いた時には9時を過ぎていた。

「いわなの里」というイワナの養殖場(釣り堀)からさらに数百メートル奥に進んだ所が実際の登山口で、数台は駐車可能なスペースもある。登山者カードを記入しながら今日の登山者を調べてみると、東京からの60歳代の夫婦がすでに朝4時半過ぎに登り始めていた。駐車場にはすでに4台あったが人気はなく当然ながらみんなとっくに登った後だった。しかし平日なのに何人か登っている人もいる様子に何となく安心感をおぼえた。

丸太の橋を渡って赤倉沢沿いの道を歩き始める。二つ目の丸太の橋を渡り荒禿沢(あらかむろざわ)の標識が立つ分岐から左に進むと林道は徐々に山道らしくなってゆく。さらにその奥で再び赤倉沢を渡渉するとやっと本格的な登山道になった。登山口の標高は約530メートルで叶ノ高手と呼ばれるピークまではちょうど900mの登りだ。道は急な斜面をジグザグに登って行き、20分ほどで三吉ミチギの水場に着く。ここはこの会津朝日岳では最後の水場だというので、水筒を満タンにした。

水場からはさらに急登が続いた。陽射しはジリジリと照りつけており日射病になりそうなほどの暑さだ。樹林帯の登りなのだが所々で樹林が切れるので陽射しが当たるとそれだけで体力が消耗してゆくようだった。ジグザグの登りにうんざりする頃、ようやく尾根に出た。ここは叶ノ高手の直下にあたり、見晴らしも利くようになった。風も少しでてきた反面、陽射しも容赦なく照りつける。叶ノ高手のピーク手前では登山者が一人下ってくるところに出会った。

叶ノ高手からはいったん会津朝日岳との鞍部までは100mほど下らなければならなかった。もったいないほどの下りにはがっかりするばかりだが、しかしこの下りの途中からはようやく会津朝日岳の姿が望めるようになった。会津朝日岳は切り立った岩壁が峻険として上に突き上げており、それは一種の城壁のようでもある。岩壁にはどこにも登山道らしきものも見えず、いったいあの岩壁のどこを登るのだろうかと不思議だった。

ブナ林のなだからな道を下ると前方には雪渓が現れ、夫婦連れの登山者が向こうから雪渓を下ってくるところだった。雪渓は結構広くて初めての人はちょっと迷いそうな箇所である。しかし昨日の山開きで多くの人が登った跡が残っているのでルートははっきりとしており、また所々には赤いテープがあるので今日は心配がなかった。雪渓を横切りブナ林に入ると熊ノ平避難小屋が建っている。小屋からさらに急坂を登り、バイウチの高手というピークに到着。いよいよ会津朝日岳が近づいてきていた。見上げれば山頂直下はまだ分厚い雪渓に覆われている。雪渓は堅く締まっているので朝方などはアイゼンやピッケルも必要な斜面だったが、ここもやはり昨日の山開きで階段状にステップが切ってあるので全く問題無く登ることが出来た。

山頂直下から今度は年輩の夫婦連れの登山者が下ってくるところだった。どうやら登山者カードに記載されていた、早朝4時過ぎに登り始めたという二人のようである。二人とも登り始めてから8時間以上も経っているわけで、かなり疲れているように見えた。どちらも雪渓を下る動作が恐ろしく緩慢なのが気になり、私はしばらく上の方から様子をみていた。

雪渓を登り草付きの斜面をはいあがるようにして稜線に出ると、ひと登りで痩せた岩場の頂稜に着いたが、ここには三角点はなく、本当の会津朝日岳の山頂は西側に少し下がったところにあった。疲れた体には少し離れたその頂上がやけに遠く感じたものの時間的には2〜3分程度の距離である。ようやく到着した山頂の中央には三角点と方位盤も兼ねたモニュメントが設置されていた。これを見れば山頂から見ることが出来る山々が全てわかるのでこれは随分とありがたい。那須連峰の山々や至仏山、越後駒ヶ岳、未丈ガ岳、守門岳、浅草岳などなど。あげればきりがないほどである。御神楽岳の奥にはひときわ白い飯豊連峰が青空に浮かんで見えた。南方には南会津の盟主といわれる丸山岳が稜線の先に大きく聳えている。ここは本当に遮るものがない一大展望台であった。天候に恵まれたこともあるのだろうがこれほどの展望を楽しめるのは久しぶりのような気がした。

山頂で大休止する予定をしていたが、風がかなり強いので先ほどの小屋に戻ってから昼食をとることにした。小屋では先ほどすれ違った夫婦連れがまだ休んでいる。声をかけてみると二人ともしっかりとしており表情は明るいので安心した。

私はガスコンロで湯を沸かし、インスタントの焼きソバを作る。ここからは叶ノ高手に登り返せばあとは一気に900mを駆け下りるばかりだった。登っているときは炎天下のような暑さの中で先へ先へと急いだが、午後になって風も少し出てきたので今は大分歩きやすくなっている。ここからは少しのんびりと下ってみようと思っていた。


登山口




山頂直下の雪渓
写真で見るよりも実際はかなりの急斜面だ



山頂からの展望(1)
越後三山(中央)と未丈ガ岳(右端)



山頂からの展望(2)
守門岳と浅草岳(右)田子倉ダム



熊ノ平避難小屋で昼食休憩をする


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