山 行 記 録

【平成14年6月8日(土)/虎毛山】



頂上の湿原で昼食を楽しむ登山者達
左は虎毛山避難小屋



【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】神室山地
【山名と標高】虎毛山(とらげやま)1433m
【天候】晴れ
【温泉】秋の宮温泉郷 宝寿温泉「ラフォーレ・栗駒」400円
【行程と参考コースタイム】
駐車場740〜赤倉橋750〜渡渉点850〜高松岳分岐1030〜虎毛山避難小屋1140-1300(休憩)〜渡渉点1440-50〜駐車場1550

【概要】
栗駒国定公園の西側に位置する虎毛山は、山頂付近に広大な湿原を持つ山として知られている。湿原には高山植物も豊富で、栗駒山の美しい姿を映す池塘も点在する様はまさに雲上の楽園とも言われていて、私もいつか草紅葉に覆われる秋の紅葉シーズンか花の時期にでも登りたいと考えていた山であった。山名は山腹の幾条かの小沢が縦縞の模様に見え、これを虎の毛に見立てたことからつけられたという。登山口から虎毛山山頂までは7.5km、約4時間を要するコースである。

登山口は秋田県の秋の宮温泉郷からさらに奥に入る。国道108号線沿いにひっそりと立つ虎毛山の案内板から林道に下りてゆくとまもなく駐車場に着いた。駐車場には車が3台だけと意外と少ない。茨城ナンバーの夫婦連れが二人、準備を終えて先に出発するところで、私たちも後を追うように赤倉沢沿いの林道を歩き始めた。10分ほどで最近掛け替えられたばかりの赤倉橋を渡ると途中にも何台か車が路肩に留まっているのが目についた。途中、小沢に架かる橋が壊れていたり、デブリで登山道が寸断されていたりしたが特に問題はなく、約1時間の林道歩きで赤倉沢の渡渉点に着いた。この渡渉点から対岸に渡るのだが架かっている橋は木製のしっかりした橋でここは最後の水場にもなっている。この辺りの標高は630mで稜線上の1234mのピークまでは約600mの標高差を一気に登るようだ。登山道には所々に丸太の階段があり昔からよく整備されているのがわかる。またヒノキ林の中を登っているとところどころに木製のベンチがあって、ちょうどよい休憩ポイントにもなっている。

傾斜がいったん緩くなったケヤキ林で一人の年輩の女性が休んでいた。まだ9時過ぎなので避難小屋に泊まっての下りか、私たちと同様にまだ登りの途中だと思ったのだが、なんとその人は早朝4時前に登りはじめてもう山頂を往復してきたのだという。ご来光を眺めるためにヘッドランプをつけて登り始めたというのだからカミさんも唖然としている。

さらに樹林帯の中を登り続けると付近は見事なブナ林に変わり、木漏れ日に輝くその新緑が美しい。急坂は相変わらずでカミさんは徐々に遅れがちになるので私は時々待たなければならなかった。気温は高く背中は汗でびっしょりとなっている。やがて高松岳への分岐の標識が立つ1234mのピークに着く。まわりはまだ樹林帯で見通しはよくないものの正面には遠く高松岳が望めた。高松岳はやはりカミさんと一緒に昨年の秋に泥湯温泉から登った山で、高松岳山頂からはるか遠くの虎毛山を眺めては溜息をついたことを思いだしていた。

分岐から平坦な尾根道を右に進むと潅木帯の間からはようやく虎毛山が望めるようになった。日差しにも晒されるようになったが、稜線を吹く風は結構さわやかで快適な尾根歩きである。鞍部をいったん下り緩やかな尾根道をさらに登ると潅木帯の急な登りとなった。途中、登山道を横断している流水溝が数メートルおきに現れる。最後の登りだろうとカミさんを励ましながらなおも急登に耐えているとだんだんと道も緩くなり、前方に避難小屋の屋根が見えてくる。木道が現れると頂上はまもなくだった。周辺にはタムシバやムラサキヤシオが少し目立つ程度で、密生するドウダンやシャクナゲ、ヤマザクラなどはまだ青々とした葉ばかりで花々はもう少し先のようだった。

ようやく到着した避難小屋のすぐ近くには山頂を示す標識があり、木道をさらに進むと目の前には美しい湿原が広がっていた。木道に設置されたベンチでは夫婦者の登山者が二組、昼食をしている。たどりついた頂上湿原には穏やかな陽光が降り注いでおり、さわやかなそよ風が吹き渡るこの場所は、まさに雲上の楽園、雲上のオアシスといえるものだった。しかしイワイチョウやワタスゲ、モウセンゴケなどの高山植物は時期的にはまだ少し早く、イワカガミ、ミツバオウレン、ヒナザクラ、チングルマが僅かに咲いているだけであった。

木道をさらに東に進むと池塘が現れ、池塘の正面奥には栗駒山の端麗な姿が見えた。残念ながら少し霞がかかっているものの眺望はここからが一番良いのかも知れなかった。時間はもうまもなく正午になろうとしていて、私達はこの池塘の目の前を今日の休憩場所と決めて昼食の準備を始めた。周りを見ると木道の先に休憩中の登山者が2〜3名いる程度で静かな山頂だった。

食後は木道の上に横になってしばらく昼寝をすることにした。しばらく雑誌を読んでいたカミさんも、いつのまにか大きい帽子で顔を覆って横になり眠っていた。上空には青空が広がり湿原の草がそよ風に静かに揺れている。この山頂で過ごすこの心地よさを何にたとえればよいのだろう。私は陽射しを浴びながらその気持ちよさについ本格的に眠ってしまい、時間の経つのを忘れていた。

木道に1時間も眠っていただろうか。見渡すと近くで休憩していた人達はいつのまにか山頂を去ってしまい、新たに登ってきた人達とすっかり入れ替わっている。こんな日には下山するのがもったいなくてこのまま避難小屋に泊まってしまいたい気持ちに駆られてしまった。後かたづけを終えると私達は後ろ髪を引かれる思いで下山を開始した。




国道108号線沿いにひっそりと立つ虎毛山の案内板



渡渉点にかかる木製の橋を対岸に渡ると急坂の始まりだ



頂上湿原と池塘
奥の山並みは栗駒山


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