山 行 記 録

【平成14年4月29日(月)/清水〜(井戸尾根)〜巻機山】



ニセ巻機山への急坂を登る



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、日帰り
【山域】三国山脈
【山名と標高】巻機山 1967m
【天候】晴れ
【温泉】湯之谷温泉保養センター 600円
【行程と参考コースタイム】
米子沢橋745〜五合目展望台850〜8合目1100〜ニセ巻機山〜巻機山1215-1310〜ニセ巻機山〜5合目1300〜米子沢橋1545

【概要】
上越国境の山、巻機山へは2年ぶり。今シーズンは雪が少なくて山スキーはもう遅いのではとは思いながらも、一度はテレマークスキーで巻機山を滑りたくて機会を伺っているうちにこんな時期になってしまった。昨日の鳥海山の疲れと長距離の車の移動で体は疲れ気味だが、この連休は好天に恵まれているので思い立ったときがいい機会と今日も早朝に目覚ましをセットした。国道113号をひた走り、そして新潟からは高速で六日町ICに向かった。

清水の集落を抜けて林道を登るとやがて米子沢橋の駐車場に到着した。10数台の車があったがほとんど登り始めた後である。周りには雪は全くないので不安を募らせながら準備をする。スキーをザックに取り付けて登り始めた。しばらく雪のない登山道で、だんだんと勾配が急になってゆく。このあたりは井戸の壁と呼ばれる急斜面のようだった。長旅の運転で疲れたのか、あるいは昨日の鳥海山の疲れだろうか。今日は出だしから足かせをかけられたように両足が重かった。

4合目を過ぎると周囲のブナ林には雪が現れ始めた。しかし登山道にはまったく雪がなく、五合目の展望台を過ぎたあたりから、ようやく登山道にも雪面が現れるようになった。ここからはシール登高ができるのがたまらなくうれしい。重いスキーを担いで急坂を登るのはかなりつらくなっていた。

6合目付近から若いブナの木が密集した樹林帯となった。ニセ巻機山手前の1564mピークへは急な登りとなり、シールも効かなくなったので、途中からスキーを担いだ。もう少し早い時期ならば雪の下に隠れているはずの細いブナの木も今はほとんど立ち上がり、滑降の際にはかなり難儀しながら下らなければならないような箇所である。樹林の間からはちらちらと割引岳がのぞいていた。

登り切るといったん平坦な雪原が現れ、そこには5〜6人ほどの登山者が休んでいた。みんな山スキーをザックに取り付けてある。日溜まりに包まれながらのひとときは見ている方でもうらやましくなるほどである。正面にはニセ巻機山への急斜面が立ちはだかり再びひたすら登った。振り返れば谷川岳や上越国境の山々が眼下に広がっており、残雪を抱いた山々の美しさにしばし感激した。途中で夏道をトラバース気味に登るとやがて標注が建つ8合目だ。あたり一面は白い雪の大斜面が広がっていて、ここからの展望がまた素晴らしく、時間さえあればのんびりと休憩したい場所であった。

8合目からはひと登りすればニセ巻機山で、ここからは斜度も少し緩くなるのでシールで登った。そして米子沢の源頭の大斜面をへだてて巻機山の大山塊がようやく姿を現した。巻機山からは右奥に牛ガ岳へと稜線が続く。ここは名前のとおり巨大な牛が横たわっているように見えた。この光景を眺めていると、きつい登りに耐えながらスキーを担いできて本当によかったと思った。

ニセ巻機山からはようやくシールをはずすことができた。ここから源頭に向かって大斜面をひと滑りする。この心地よさを何と表現すればよいのだろう。登りの苦労が報われる思いである。沢の源頭からは巻機山への登り返しに汗がひたすら流れた。気温はかなり高く熱射病のおそれもあるので時々雪を掬っては頭に乗せたり顔を拭って火照った体を冷やしながら登った。

ようやく巻機山の稜線に登り詰めると正面には越後三山が現れ、左手奥には白く輝く飯豊連峰が紺碧の空に浮かんでいた。今日は山頂を踏むのは難しいかもしれないと、半ばあきらめながらつらい急登に耐えてきただけに、山頂ではひしひしと喜びがこみ上げた。そして乾ききった喉に冷えたビールは極上の味がした。かなり疲れたせいだろう。私はたちまち酔いがまわってしまい、カップラーメンを食べ終えてザックを枕にするとしばらく眠った。今日は風もなく上空からは暑い陽射しが燦々と降り注いでいる。昨日の鳥海山の気温の低さがウソのようだった。

山頂では1時間近く休憩した。その後、十分に休養をとったつもりで起きあがると、うかつにも足がつってしまいあわてて足を揉んだりした。足がつるのはひさしぶりで、少し痛さの残る足を我慢しながら下る準備を始めた。最初はトラバース気味に下りニセ巻機山との鞍部まで一気に滑降すると、巻機山はたちまち遠く離れてしまった。午後になってから日差しはますます強くなり、振り返れば巻機山の斜面がまぶしかった。

ニセ巻機山への登り返しを終えればあとは滑降を待つのみである。登りでは夏道をトラバースしたところも沢沿いに巻いてゆくと雪がつながっておりスキーを担ぐ必要がなかった。無木立の急斜面を快適にくだればあとは緩斜面で、やがて樹林帯に入っていった。木々が密集しているので、衝突しないように少しずつ下る。積雪はだんだんと少なくなったが、雪がある限りは斜面を滑っていった。シールで登り始めたのは5合目の上部からだったが、緩斜面の雪を拾うようにしながら下ると、4合目の手前でついに雪がとぎれてしまった。ここからはスキーを担がなければならない。スキーを再びザックに取り付け、藪を少しかき分けて夏道に出た。そこから少し下ると4合目の標識があり、徐々に米子沢の駐車場が近づいていた。山頂からスキーで快適に下ってきたとはいえ、両足の筋肉はパンパンに張っている。疲労は極限状態のため、私は一刻も早く温泉に浸りたい心境になっていた。




五合目展望台
この少し先から雪道となる



樹林の間から割引岳がのぞく(7合目付近から)



八合目
ここからの展望が素晴らしく、時間があればのんびりと休憩したい場所だ



ニセ巻機山直前!
米子沢の源頭をはさんで巻機山が横たわっている





巻機山山頂で佇む登山者
無木立の大雪面が美しい


巻機山から望む牛ケ岳



ニセ巻機山の急斜面を滑る



春の陽射しがまぶしい6合目付近


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