山 行 記 録

【平成14年4月28日(日)/鳥海山 大平〜御浜〜御田ガ原】



扇子森付近からみる鳥海山
例年より雪がかなり少ない



【メンバー】2名(妻)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、日帰り
【山域】出羽山地
【山名と標高】御浜、約1700m(鳥海山 )
【天候】晴れ
【温泉】国民宿舎「大平山荘」420円
【行程と参考コースタイム】
大平810〜御浜小屋1045-1230〜御田ガ原1300-1330〜反射板1415-1445〜大平1500
(※のんびりした行程なので参考外です)

【概要】
今回はカミさんとはじめての鳥海山の山スキーである。カミさんは体力に自信がないのか山頂までの往復に不安感を隠せないでいる。私はとりあえず鳥海山の快適な無木立の大雪原を二人で滑降できればいいので、一応山頂までを計画したものの無理はしないつもりだった。鳥海ブルーラインはやっと26日に開通したばかりである。

その鳥海ブルーラインは夜間通行止めになっているらしくゲートは閉じられていた。しかし鍵はかかっていないので自分でクサリを外して通過した。車は例年どおり、大平山荘と鉾立山荘との中間地点の駐車スペースに留めた。駐車場では先に来ていた3人のグループから「今日は我々の山開きなのでおひとつどうぞ」と温かいコンニャクを差し出され、遠慮無くご馳走になる。3人は地元の山岳会の人たちで、みんなの車のウインドーやタイヤカバーには「テレマーク、好きです!鳥海山」のステッカーが貼ってある。そしてよく見ると各人のテレマークスキーにも同じステッカーがあり、どうも熱烈な鳥海山フリークらしかった。

さっそくシールを貼り、朝の清々しい空気を吸いながら斜面を登り出す。まだ雪面は堅いが気温が高くなれば快適なザラメになるような感じだ。振り返るたびに日本海が眼下に広がるので爽快な気分である。やがて急斜面を登り切ると1400m付近に建つ反射板で、まもなく辺り一面は緩斜面の大雪原となった。前方には新山の一角が見えてきて、好天のなか、快適な雪原歩きが御浜まで続いた。

到着した御浜小屋はほとんど雪が無く、小屋の周りでは大勢の登山者が休憩中だった。天気は良いが気温は意外にも低くて冷たい風が吹いている。汗をかいた体はたちまち冷えてしまった。風を避けるために私達は小屋の南側にまわりザックを下ろした。雪に覆われた鳥海湖が眼下である。雪は例年よりかなり少なくて、湖の淵に沿ってリング状にヒビが入り、底は一段と低く沈んでいる。鳥海湖の奥には月山が青空に浮かんで見えた。

カミさんと二人で鳥海湖を見下ろしながらのんびりと眺めていた。するとテレマークスキーを担いだ人に「蒲生さんですか?」と呼びかけられた。その人はインターネットで知り合っている茨城の佐藤さんで、遠路はるばるテレマークスキーにやってきて、もう御浜小屋を下るところであった。

鳥海湖では大勢の登山者が取り囲む中を、一人、二人とスキーヤーが鳥海湖の斜面を湖底に向かって滑り降りていた。大勢の観客に見られながらの滑降は気持ち良さそうで、たちまち湖底に消えていった。しばらくして、駐車場でコンニャクをごちそうになった3人組と話をしているうちに、その中のテレマーカーの一人と一緒に滑ってみようかということになった。滑ってみると鳥海湖の湖底までの滑降は一瞬だったが、それは実に快適で、急斜面を湖底まで滑り込むと全く御浜小屋は見えなくなった。そこからスキーを担いでの小屋までの登り返しはさすがにきつい。しかしおかげで体が温まりビールがますます美味しくなったのだった。

御浜小屋では2時間近くものんびりと過ごしていた。私はビールを飲んでラーメンを食べ終えると山頂はもうどうでもよくなっている。カミさんは意外と元気で、もう少し登っても良いというので扇子森から御田ガ原に向かう。扇子森まで登ると外輪山や新山がいよいよ近くに迫り、手を伸ばせば届きそうにも見えた。しかしここから山頂までは千蛇谷コース、外輪山コース、いずれも2〜3時間は必要である。後ろ髪を引かれる思いだが、今日は無理をせずにスノーハイキングに徹しようと決めているので、眺めるだけで満足することにした。

千蛇谷を見れば早くも下ってくる人達が見えた。小屋周辺では冷たい風が吹いていたが、扇子森から滑り降りて行くと一段低くなっている御田ガ原は無風で快適な休憩場所だった。大きな岩陰の草原に銀マットを敷いて腰を下ろし、ここでも私達はのんびりと一休みだ。眺めはいいし桃源郷で遊んでいる気分になった。

御田ガ原からは扇子森をいったん登り返せば、あとはシールの必要がなく駐車場まで一気に下って行くことが出来る。坪足で山頂を往復してきた人達も三々五々と下ってきていた。御浜小屋を過ぎれば雄大な景色を眺めながらの快適なテレマークだ。このままこの斜面がずっと続いて欲しいとなかば本気で願いながら滑っていった。

スキーでの下りはあっというまで、このまま下ってしまうのがもったいなくて、反射板まで下ったところで最後の休憩をする。最後の急斜面をひと滑りすれば駐車場もまもなくである。コーヒーをゆっくりと淹れて、私はカステラをほおばり、カミさんは冷たいヨーグルトを食べる。風もなく柔らかい日差しが降り注ぐこの場所は実に快適で、まだまだ雪の多い鳥海山の山並みと青々とした日本海を眺めていると、いつしか至福ともいえる感情に満たされていた。午後の陽はまだまだ高く日本海に沈むまではまだまだ時間がかかりそうだった。



日本海を背にしてひたすら登る
反射板の立つ地点までもう少しである



扇子森付近からの稲倉岳(1554m)
坪足の登山者が早くも山頂から下ってきた


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