山 行 記 録

【平成14年3月31日(日)/湯殿山スキー場から品倉山 テレマークスキー】



山麓から仰ぐ品倉山



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】出羽三山
【山名と標高】品倉山 1211m
【天候】曇り
【温泉】西川町 水沢温泉館 200円
【行程と参考コースタイム】
湯殿山スキー場第1リフト終点930〜山頂1200(昼食)1230発〜湯殿山スキー場1315

【概要】
月山から西に派生している長い尾根は品倉尾根と呼ばれている。品倉山とはあまり聞き慣れない山だが、その品倉尾根の端に位置する山が品倉山である。湯殿山スキー場から品倉山へ往復するコースは、ガイドブック「東北山スキー100コース」で三ツ星の評価がされており、意外と山スキーが楽しめるコースとして紹介されている。

3月も最後の日となった今日は、スキー場のリフトが1基しか動いておらず、第2リフトのゲレンデを黙々と歩かなければならなかった。人気のないゲレンデを登るのは好きなのだが、誰もいないスキー場には騒々しい音楽だけがスピーカーから鳴り響いていて、静かな方がよほど雰囲気があるのにと、無粋な音楽には興醒めするばかりだった。

今日の午後からは低気圧の通過が予想されていてちょっと心配なところだ。しかし陽射しはないものの朝から薄曇りのまずまずといった天候で気温はかなり高い。帽子もアウターも手袋もいらないほどだった。

スキー場の上部はなだらかで広い台地状の雪原となっていた。付近にはかなり古いトレースが少し残っている。毎日の好天続きで雪は腐り、黄砂の影響で白いはずの雪が一面茶色に変色している。若い雑木林やブナ林越しには雪を抱いた品倉山が正面に望めた。ここからのコースははっきりとはせず、右のなだらかな尾根から登るのか、あるいは左の幾分急な尾根を攻めたほうが良いのか、判然としないまま先へと進む。やがて品倉山の山麓が近づくに連れて様子がだんだんとつかめるようになり、結局正面の急斜面を登ることにした。

初めは斜面を直登する。そしてまもなく斜度が急になると、途中からジグザグに登らなければならなかった。見上げると圧倒されるほどの急斜面である。厳冬期にはアイスバーンとなり登るのは困難を極めそうなところで、また降雪直後は雪崩も心配されるところだ。今日は幸いにザラメの雪質でそれほど危険な感じはしなかったものの、胸突き八丁ともいえる急斜面には喘ぎ声が洩れてきそうだった。山頂まではそれほどの行程ではないはずだったが、それでもきつい登りに心臓が高鳴った。しかし登る毎に高度が上がり、樹木が減って視界が広がるのはうれしかった。

ようやく急登が終わって斜度が緩やかになり、ひと登りすると品倉山の山頂だった。仙人沢をはさんで湯殿山が正面に聳えていた。雪と岩の美しい山肌を見せるその光景は、一見冬の日本アルプスを眺めているようでもある。そしてのっぺりと白い月山が左手に横たわっていた。見慣れた山々も眺める角度が違うとこうも景観が異なって見えるものなのかと、しばらく佇んでいた。ここには思わず息を呑むほどの眺望が広がっていた。しかし北に聳えているはずの鳥海山は残念ながら薄い靄に隠れて全く見えなかった。

品倉山の山頂はさすがに風が冷たいので少し下ってから昼食をすることにした。シールをはずして登ってきた急斜面を一気に下る。ザラメ雪なので快適なテレマークターンだ。その急斜面が少し緩くなった所でスキーをはずして休憩場所とした。のんびりと過ごす昼のひとときは何にも替えがたい時間である。私は食後にコーヒーを飲みながら眼下に広がる山々を眺めていた。忘れたころに遠くを走る車の音が聞こえるだけで、他には誰も登ってくる気配はなかった。

昼食を終えるといよいよダウンヒルである。しかし昼を過ぎて気温は上昇するばかりで、スキーはますます走らなくなっていた。黄砂に覆われた雪面は異様なほどにブレーキがかかり、思わぬ所でコケたりした。そして平坦な雪原まで下ってくると推進滑降というより歩かなければならないほどだった。圧雪されたゲレンデに出るとようやくスキーが走りだし、一気に駐車場まで下っていった。




山頂直前から見る湯殿山



山頂直下の斜面で昼食
奥に見えるのは弥陀ヶ原の一角


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